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いつも読んでくださりありがとうございます。更新がゆっくりになりますが、これからもよろしくお願いします。
アイヒは王妃の館から出ると草木が生い茂る小さな森のようなところに向かった。私はきょろきょろしながらついていく。
「ここはお兄様がよく剣の稽古をしてらっしゃる所よ」
「ここで?」
木々を抜けると原っぱのような開けた場所に出た。さすが後宮、本当に広いな。
「でも、今は騎士団や、軍の訓練場にいらっしゃることが多いみたいですけど。始めたばかりのころはここでやっていましたのよ」
「頑張りますね」
え、今八歳だよな。八歳で軍の訓練場に行くの? 八歳の基準がわからない。
「ルーシェには負けられないのかも」
「なんでですか」
意味わかんないし。
「お兄様を言葉で打ち負かしたのでしょう? 男として剣まで負けれないのですわ、きっと。お兄様が妙に剣に力を入れ出した時期も一致しますもの」
「いや、私の家は武門の家ですよ。むしろ私が負けられないのだけど・・・・・・」
するとアイヒは私の顔を見てため息をついた。
「男の子ってそういうものですわ」
ええ、なんでそんなにため息をつかれなきゃならないのさ。
「かっこつけたがるわけね・・・・・・?」
「まあ、間違っていませんけど・・・・・・。お兄様完全に眼中外ですわねえ」
最後の言葉が小さすぎて聞き取れなかった。
「なんて?」
「男の方はかっこつけと言うことですわ」
一通りいろいろな建物を見て回った。さすが後宮広すぎる。そういえばふと思い当った。
「そういえばほかのご兄弟は?」
弟妹たちは結構多かったよね。
「あの子たち? いまはお昼寝の時間ですわね」
「遊んだりするの?」
「遊びますわ。仲はいいですもの。夕食も一緒にとりますし・・・・・・。でも、わたくしやお兄様たちは勉強などで相手にできないし、住んでいるところが離れているとどうしても接する時間は短いですわねえ」
王族ってそんなものなのか。私とグレンとはまた違うのね。
「今度はグレン君も来られるとよろしいですわ」
そうだね。あの子がこの子たちの盾と剣になるのだから。
「さて、そろそろヨシュアも帰ってくると思いますし、最後に面白いところに連れて行ってあげますわ」
「面白いところ?」
アイヒはにやっと笑う。
「秘密の抜け道ですわ」
「秘密の抜け道?」
おいおい、それって都市伝説とかでも言われる地下通路のことか。まあ、日本はどうか知らないけど、実際この世界ではあるんだろうな。王族しか知らない地下通路。無いと逆に危なそうだし。
「偶然見つけたのです。ヨシュアも知りませんわ」
「それ、私に教えても大丈夫なの? と言うかやめておきましょう」
誰が聞いているのかわからないし。
「大丈夫ですわ。ルーシェは言わないでしょう」
言わないけどね。だってこれ国家機密事項だもん。言ったら暗殺されそうだし。
しかしふと思う、アイヒのような子供に見つけられるような秘密の通路って私の思う通路なのだろうか。だってそれ、怖くね? 誰でも見つけられそうだし。
「そりゃ、言いませんけど・・・・・・、怒られませんか?」
「ばれなければいいのよ。行きますわよ」
「はーい」
まあ、面白そうだ。見るだけ見てみよう。でも、アイヒって本当に見た目と性格が違うよね。
「・・・・・・」
ココですか。
これは本物かも・・・・・・? しれない。
どうも皆様。わたくし今王家の秘密の地下通路(仮)前にいます。そしてなんですけどね、これもしかして本物じゃね? 疑惑が出ています。だってだ。塀のところまで来たと思ったら、突然塀に沿って埋められている茂みの中にアイヒが入っていったのだ。私も後に続いた。そしてアイヒは石が積み上げられた塀のある一つの石垣を押した。
ガコッ。
石垣がへこんだ。
カチン。
何かがはまる音がする。ギギッと何かがきしむ音も聞こえてきた。え、からくり塀?
ギギギィ。
音を立てて、塀の石垣が大人一人通れるくらいまでがこっと開いた。
これ本物じゃね? 大丈夫なの。え、いいわけ?
「アイヒ」
「なんですの?」
「これ、どこにつながっているの?」
これ後宮出るよね、確実に。いいわけ? 後ろの人たち。
「秘密ですわ~」
なんでそんなに楽しそうなのかな。護衛の方々よいの? 超えるよ? 後宮の壁越えちゃうよ。私は後ろを向くわけにもいかないけれど、念を送ってみた。反応はない。と言うかもうあきらめている感がある・・・・・・。なんとなく気持ちはわかる。ご苦労様です。私は心の中で彼らに頭を下げた。
「はあ」
私は地面にはって後宮の壁を脱した。こういうことは嫌いじゃないのだけど・・・・・・、いいのかな、これ。
壁を越えてしまった。アイヒはまた石垣の石の1つを押した。
ギギギィ
穴が塞がっていく。
そして二人で茂みを超えるとなんだか庭のようなところに出た。
「ここは?」
体についた土や葉っぱを落としていく。
「皆様が働いている場所ですわ」
「皆様って・・・・・・」
つまりいろんな役職持ちさん方が働いている場所・・・・・・、おいっ!! 私は声にならなかった。そういえばよく考えたら後宮出たらそりゃ、仕事場になるわな。これで外に出るのもまずいけどさ。
「行きますわよ」
アイヒは手をつかんで駆け足だ。貴族の格好とはいえ、ちょっと薄汚れているしね、私達。これが王女ってばれたときの恐ろしさが半端じゃない。
しばらくすると豪華な建物が見えてきた。アイヒは壁まで来ると立ち止まり、座りこむ。何かを見ている?
「?」
すると、私の方を振り向いた。
「ここですわ。のぞいてみてください」
ちょいちょいっと指をさす。そこに穴のようなものがあった。
何が見れるのだろうか。
目についたのは二人の男性だ。あれ、お父様と陛下じゃん!! バッとアイヒを見るとにこっとされた。
「すごいでしょう。この穴から、お父様たちの執務室が見えますの」
「すごいけど・・・・・・」
「せっかくだから驚かせましょ」
とんでもないことを言いだした。
「それはまずいですよ。後宮を抜け出したし、こんな恰好ですよ? 怒られますから。それに、陛下たちは仕事をしているのですよ」
「大丈夫よ。お父様はルーシェがお気に入りだもの」
そういうことじゃないよ。しかしアイヒはどんどん建物沿いに歩いていく。
「もうっ」
建物の壁に二人して引っ付いた。これ誰かに見られたら絶対にヤバいな。
お父様たちは何か話しているのが聞こえる。
「いなくなったのは何人だ」
それは普段の陛下からは考えられないような真剣な声だ。私たちはどきっとした。
「二十三人だ。生徒たちも不安がっている。保護者にもそろそろ言っておかないと」
あれだ。黒髪の子供たちのことだろう。
「あの学園に入れるやつは限られている。なんで見つからない。侵入経路、誘拐経路も不明だ」
「警備強化しても無駄だ。これはもう内部の人間としか考えられない・・・」
それは教師の中にいるということか。
「でも、人一人を運ぶにはそれ相応の準備がいるぞ。しかもそれからの生活場所もな。国境は越えてないはずだ」
「正規ルートならな・・・・・・。だが占術師たちの話ではまだ王都にいるんだろう」
「いるにはいるらしいが。詳しく探ろうとしても全く分からないらしい」
「うちの占術師たちをしのぐ魔法使いがいるってことか・・・・・・。厄介だねえ。これ、アイツらの仕業だと思うか?」
「わからない」
その話を聞いて二人して顔を合わせる。今更ニコリとお父様なんて呼び掛けられない。
どうしようか。
「かえりましょ」こそっと言った。するとアイヒもこくっとうなずいてくれた。
その時だ。
バンッ、と何かが開く音が響いた。
ビクッと二人して体を震わせ、音のした方向におそるおそる顔を向けた。
上の窓が開いていた。
そして手がにょきっとのびてきた。
「きゃっ」
「うわ」
2人して抱えあげられた。
「いたずらっ子は誰かな~」
「お、お父様!」
二人してお父様に抱えられた。お父様の後ろにいた国王陛下と目が合う。目があった国王陛下はそれはそれは楽しそうな顔をしていた。




