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35.

いつも読んでくださりありがとうございます。

「びっくりしたでしょう」

王妃様のお部屋から出た後、アイヒがいたずらっ子のように笑った。その笑顔が憎い、かわいいけど。

「お面かぶっているとは思っていなかったわよ・・・・・・」

しかも能面だし。あれ、誰が作ったんだろう。製作者に会って、心の内を聞きたいかもしれない。

そして、顔の傷も気になる・・・・・・。

「お面を外せばいいと思うのだけれどね・・・・・・。わたくしは気にしませんのに。ルーシェがおっしゃっていたように、お母様は素晴らしいお母様ですもの。・・・・・・どうせ何したって陰口は言われますしね」

やっぱりそういうことを言われるんだな。貴族ってそういうこと大好きだから。

「ま、一番はおじい様のせいだけど」

「・・・・・・」

まあ、あの人いろいろやってそうだよね。しかしなんだってお父様も陛下もほうっているのだろうか。たぶんあの分じゃ証拠をつかめないとかそういうわけではないと思うのだけれど。それとも他に理由が・・・・・・?

「でも、王妃様は優しげなかたね」

「ええ。とっても優しいですわ。ほんとびっくりするくらい、おじい様とは違います」

本当におじい様が嫌いなんだなあ・・・・・・。でも、親を見て子供は育つらしいが、親に似なくてよかったじゃん。

「でも、泣き虫ですけどね」

「そうなの?」

「そうなのですわ。わたくしなんかより泣き虫ですわ。ビービー泣いてます」

六歳児に泣きむしって言われるって母親としても、大人としてもどうなんだろうか。

「そうですか」

私は無言を貫いた。口は災いのもとである。

「とりあえず、ご挨拶も済みましたから、予定をお伝えしますわ。ルーシェは3日間いてくださいますわよね」

「うん」

「とりあえず肝試しは最終日の夜ですわね。後は自由ですわ。何かしたいことありますか?」

「そうね・・・・・・。今は思いつかない」

これが普通の子供なら、鬼ごっこなりなんなりするのだが、何せ王女様だ。何して遊べばいいのか。

「ヨシュアがいたら、ルカさんと一緒に鬼ごっこでもするのですけど」

なんですと。

「鬼ごっこですか・・・・・・?」

「ご存じありませんの?」

いえ、知っていますよ。でもあなたが知っているとは思いませんでした。

「いえ。・・・・・・ご兄弟でやられるのですか?」

「ええ、時々。お兄様二人と、弟と妹も」

おい。まじか。鬼ごっこは王室でもやられるものなのか。子供だもんね、するよね。

「お父様もときどき一緒にやりますわ。すぐに元帥が連れ戻しに来ますけど」

陛下もやるんだ・・・・・・。そして、やっぱりさぼっていたんだね。その姿が目に浮かぶ。

「騎士団の方々も巻き込みますわ」

おいおい。仕事中だろうに・・・。甲冑姿で追いかけているんだろうか・・・・・・。苦労しているな・・・・・・。

「じゃあ、ヨシュア様が帰ってこられたらやりましょうか。ルカもいいわよね」

これはこれでいい暇つぶしになりそうだ。私は後ろで気配を消していたルカに呼びかけた。

「かしこまりました」

ルカはいつものように頭を下げた。

「せっかくですので、非番の騎士団も呼びますわ」

「いや、非番ならそっとしておきましょうよ」

私は彼らの名誉のためにも鬼ごっこ参加を阻止することにした。

「ならどうしましょうか」

「後宮の中は自由に歩き回れますの?」

私はこのあたりのことを何も知らない。せっかくならいろいろ見たいものだ。

「ええ。探検しましょうか」

「そうですわね。お願いします」

そう言ったら、アイヒ様がにやっと笑う。私は嫌な予感がした。これは何かたくらんでいる。

「ルーシェ様、ドレス、歩きにくくありませんか?」

「え。ああ・・・・・・え?」

まさか。

アイヒは不敵に笑った。


***


「きゃー、素敵ですわ」

つ、疲れた。私の頭には今、それしかない。なんで女の子は服に時間をかけるんだろうね。不思議。

「お嬢様、よくお似合いですよ」

ルカ。やめてちょうだい。

ごきげんよう、皆様。今、人生で初めて男装していますわ。しかもカツラ付きで。

確かに、あのくっそ重いドレスと歩きにくい靴で後宮を歩き回るのはつらいよ。隠れられないしね。でも、これはこれで・・・・・・、なんか恥ずかしい。まあ、家出の役に立ちそうだけど。

「これ、大丈夫なのですか?」

一応貴族の令嬢なのだけれど。ばれたらいろいろ一部の連中に言われそうだ。

「後宮の者たちはわたくしたちのことを知っているし、王宮内でも、貴族の子息なら結構歩き回っていますもの。問題ありませんわ」

いつの間にか王宮全体に探索フィールドが広がっている。

まあ、何事も経験だけれど。

「何か言われたら、第一王子の遊び相手に呼ばれたとでもいえばいいのですわ」

いいのかそれで。ちょろいぞ、王宮。

「そうそう、ルカ。ここからは女子の会もしたいのですわ。殿方はご遠慮くださいな」

「・・・・・・御意。わたくしは部屋でお待ちしています」

ルカは頭を下げた。まあ、後宮内だし護衛はいらないな。王女にもついている(・・・・・・・)みたいだし。

そこの屋根の上とかね。


***


「しかし、後宮は広いですね」

後宮はそれぞれ一つ一つ家が建っている感じだ。家といったってもちろん豪華だけれど。

王が住む王の間。その隣に王妃の間。そして側室たちの館がある。側室の数は時代によって違うが、今は一人もいない。王子たちはそれぞれ王妃の部屋に近い場所に部屋があるらしい。

「そうね。おじい様の時は五人のお妃がいたらしいわ。一番多かったのは・・・・・・。百人以上ですって」

「へえ」

それはすごい。陰謀とか王の寵愛の取り合いとかすごそうなんだけど。

「あちら側にはおばあ様が住んでらっしゃるわ」

アイヒが差した先には、木々に隠れているが少々大きめの館があった。

「え、それって」

「先代陛下、おじい様の王妃様よ。わたくしたちのお父様のお母様。血のつながったおばあ様ね」

ああ、考えてみればそれもそうか。先代陛下がなくなって十年は立っているが、それでも王家に嫁いだ人間、特に王妃様が、生家に戻ることはありえないのだ。

「今度会ってみましょう」

いや、もう別にいいわ。疲れるもの。

「迷惑じゃないならね」


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