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23.

「ルーシェ、また来てね」

「今日はアイヒ様が失礼し」

「なんですって!?」

この二人間最後まで・・・・・・。やれやれ。

「もちろん。ではまた、お二方」

何も考えず、バイバーイと優雅に手を振って、私は後宮を後にした。

なんか言ったら倍に跳ね返ってきそうだ。

「は―――――――」

深いため息をつく。今馬車にはわたししかいないのでため息はつき放題だ。

なんか疲れた。濃すぎる。濃すぎるよ王女様。


***


「あら、ルカ帰っていたのね」

屋敷の玄関に馬車が止まると、ルカが頭を下げて出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。今日はお嬢様のおそばを離れて、申し訳ありません」

「謝らないで、お仕事だったのでしょう? ちょっと疲れたわ。ルカ、お茶を入れて。あなたのケーキも食べたいわ」

疲れたときは甘いものに限るんですよ。

「かしこまりました」

「今日は第一王女アイヒ様とは仲良くできましたか?」

そう言ってケーキとともにミルクティーをおいてくれた。

「ええ。まあ」

私は目を泳がせた。あれは仲良くできた・・・・・・、と思う。うん。

「どうされたのですか? まさかいじめられたとか・・・・・・?」

ルカの声が低くなった気がした。

「ち、違うわ! とっても素晴らしい方だったのよ!」

ただ、まあ変わり者でもあった。私はルカにアイヒと出会った時のことを話した。

「それはまた、風変わりな方ですね・・・・・・」

「ええ、でも話していて楽しい方ですわ。今度は一緒に行きましょうね」

「はい」

「ああ、そうだ。ルカ、あなた黒い髪の人を見たことがある?」

私は今日の一番の疑問を晴らすことにした。

ルカの手がわずかに動いた。あ、知っているな。

「突然どうされたのですか?」

「アイヒの従者にルカと同い年ぐらいの子がいたんだけどね、黒い髪だったのよ」

私は何も知らないといった感じでニコニコした。

「それは・・・・・・珍しいですね」

思わず、と言った口ぶりだ。

「珍しい?」

するとルカが焦った顔をした。なんなのだいったい。

これは確実に何かあるな。夢のことも気になるし。

「ルカ、珍しいって何? お父様にね、前聞いたら話をそらされたのよ。どうして? 私は聞いてはいけないことなの?」

可愛らしく首をかしげてみた。ルカよ、これが今の私の精一杯だ。届けこの思い。

だめだった。何故か、口を手で押えて顔をそむけている。どうやらくしゃみが出るようだ。

「本人に聞くのも悪いと思ったのだけど・・・・・・」

「・・・・・・旦那様もいつか話してくださると思いますが・・・・・・。お嬢さまなら大丈夫でしょう」

ルカはどこか諦めたように目を細めた。

「お嬢さま、黒い髪を持つ種族として真っ先に思い浮かぶものは何ですか」

「そうね・・・・・・。魔族とか?」

「そうですね。魔道をつかさどる魔族です」

魔族とは私たちと同じようにヒト型を取っている種族だ。黒い髪、黒い瞳が特徴的で耳がわずかにとがっている。そして決定的に違うのが魔力量とその寿命である。人間はどれだけ長く生きたとしても百年位、しかし彼らは三百年の寿命を余裕で超える。魔王や上級魔族ともなるとなんと千年を軽く超えるという。ほんとこの世界はファンタジーだ。

「この国は魔族とは不可侵の条約を結んでおります。が、やはり魔族は怖いものと言う意識を持つ者はいます。まあ、前置きはここまでにして、・・・・・・黒髪の人間とは魔力が強い人間のことを言います」

「魔力が強い・・・・・・?」

「はい。魔族に匹敵する魔力を持ちます。例外なく」

「例外がない・・・・・・?」

「もちろん、黒髪ではないからと言って弱いわけであはりません。現国王なども素晴らしい魔法使いです。その魔力は魔族の上位に匹敵すると言われていますし」

「・・・・・・それで、どうして教えてくれないの? お父様は」

「黒髪は魔族を連想させます」

はっとした。

「・・・・・・迫害?」

「さすがでございますお嬢様。昔は殺すこともあったそうです。それはそれはひどい目に合わされたそうです」

迫害。自分のいた世界にも存在はした。要するにいじめと同じだ。

「旦那様はお嬢様にそのことを聞かせることがまだ早いと判断されたのですよ」

「そう。今は?」

「私たちの国は早期より黒髪の人間の研究をして、彼らが高い魔力を持つことを突き止めました。彼らは魔力以外は人と変わりません。寿命も人間と同じか・・・・・・、むしろ短い。彼らは無害だと発表し、他国よりも早く保護を開始しました。黒髪の子供を産んだ場合は家族や、その村に補助金をだしたり、学校も無償としたりしました。なので今は殺されたり、迫害はありません。むしろ幸運を呼ぶ吉兆です」

「そっか・・・・・・。それはよかったわ。でも、誘拐とかされそうよね」

自分は高い魔力を持っていますよと言いながら生活しているのだ。

「さすがですね。事実誘拐や、奴隷としてさらわれる子供もいます。なので、国としては、特に平民の黒髪の子は全寮制魔術学校に早期から入れるようにしています」

「そうなのね」

これは国力に直結する問題だ。おそらく奴隷商や誘拐組織の裏に、他国の思惑もあるに違いない。そんなことを子供が言うことはないのでよかった、とニコニコしていた。

「アイヒ王女についておられる黒髪の方は貴族の家の方なのでしょうね」

「そうね~」

つまり・・・・・・、自分の夢は、子供たちが誘拐されたということなのかしら。しかし、子供たちは皆全寮制学校に入れられているというのだから、いなくなればそれこそ大騒ぎになって絶対に父たちに連絡が行くはずなのだ。貴族ならますます大騒ぎになるはずだ。

「・・・・・・あれは夢なのかしら」

「どうされました?」

「あ、なんでもないわ。でも学校ね~、行ってみたいわ」

やばい。無意識に呟いていた。

この国の学校入学年齢は十二歳からだ。私はその時この国に存在しない。つまり行くことはないのだ。

「ならっていることはお嬢様が今家庭教師の先生に習っていることと同じですよ」

「そうなの?」

「ええ、貴族の方はほとんど習っていますよ」

「え、学校に行く意味は?」

「そうですね。一番の目的は貴族間の顔合わせや協調性を養うことです。やはり連帯感は大事にすべきと言うことです」

ああ、なるほどね。協調性は大事だ。

「もちろん魔法科など専門科目もあります」

大學と言ったところか。

「医科学などもあるの?」

「ええもちろん」

それは魅力的だ・・・・・・。どうにかしていってみたいものだが・・・・・・。夢で見た限りでは私は手をかざすとケガを治せるのだが、どうせならきちっと薬についても学びたい。家出にも使えるだろうしね。

「お嬢様は医学に興味がおありですか?」

「ええまあ。その・・・・・・お父様が怪我しても治してあげられるでしょう?」

「旦那様が喜ばれますね」

うわー、罪悪感すごい。


***


「今日は楽しかったかい?」

お父様が帰宅すると私にそう尋ねてきた。。

「ええ、とても楽しかったですわ」

「アイヒ様は良い子だったろう?」

「ええ。少なくとも、ラスミア殿下のように失礼な方ではありませんでしたわ。






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