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19.

読んでくださりありがとうございます。

「誠に申し訳ありませんでした」

私は今後宮にあるラスミア殿下の部屋で土下座している。土下座が通じるかわからないがとにかく謝った。私は、王族に剣を向けたのだ。やばい、死刑になる。私の素敵な家出計画が台無しになる・・・・・・。弟よ、君が処刑されないようお姉ちゃんが最善を尽くすから。

「このたびは私の無知により起こったことです。一族には何の関係もございません。どうか・・・・・・」

「おい、落ち着け」

「私を死刑とするだけで」

「ルーシェ! なに言っているんだい!!」

お父様静かにして!!

「お許しいただきますように」

「落ち着けと言っている!!」

 ゴンッ 

「いたっ!! 叩かないでください!!」

頭に手刀が落ちてきた。かなり手加減されているに違いないが、痛いものは痛い。私は頭を押さえた。

「うるさい。お前がバカなことを言うからだ!」

そしてラスミア殿下に腕をつかまれ立たされた。

「ラスミア殿下。わた」

「うるさい。話は聞いた。この件に関しては別に問題じゃない」

「・・・・・・ですが」

「うるさい、口を閉じろ」

「いいえ、閉じません。だって」

「だから、お前の一族を罰しようなんてこと誰も考えていない。なんなら父上呼んで、一筆書いてもらうぞ」

「やめてください! ですが・・・・・・」

なおも言いつのろうとした私を遮ったのはアイヒ王女だった。

「ルーシェ様、わたくしが悪いのです。だから謝らないでください」

ラスミア殿下のふりをして私と会っていたのは、第一王女アイヒ様だったのだ。今は服をラスミア殿下の服からドレスに変えていた。こう見ると男女の違いが出てくるが、顔は本当に同じだ。双子じゃないことが驚きだ。

お父様曰く。アイヒ様は本当にラスミア殿下に双子のようにそっくりで、よく服を盗んでは化けて、家庭教師や侍女たちをからかっていたらしい。お父様も気が付いていたけれどいつものことと気にしなかったらしい。

言ってくださいよ!

「いいえ、今回のこと本当に申し訳ありません・・・・・・。・・・・・・その・・・・・・騎士の方にも暴言を・・・・・・」

今思い起こせばかなり失礼なことを言ったと思う。私絶対にくそガキ認定された。

「ああ、それに関しては問題ないよ」

それにはお父様が答えた。

「ルーシェの言うとおりだからね。護衛が影武者と本物間違えるなんて、騎士失格だし・・・・・・」

「あの騎士をやめさせたりは・・・・・・」

「大丈夫。実際、見分けられる人って多くないからね、そんなこと言っていたら、城の騎士の半分はやめさせることになるし」

だから、気にしないで。

それはほっとした。

「ルーシェ様。自己紹介がまだでしたわ。わたくし、第一王女アイヒ・サラ・アステリアです。どうぞよしなに」

かわいらしくお辞儀された。

「初めまして、わたくしはリスティル家長子ルーシェ・リナ・リスティルです。本日は大変申し訳ありませんでした」

同じように自己紹介を返す。

「いいえ、むしろお兄様を間違えないだなんて、さすが王の剣の一族、わたくし感服いたしました」

アイヒ様は落ち着いたようで、きらきらと私を見ていた。

「わたくしたちを間違えないのはリスティルの方たちと、両親だけですの。お兄様、よかったですわね」

ラスミアは顔を赤くして、そっぽを向いた。

「当然だ。俺を違えるなんぞ、言語道断だ」

なんでそんなに偉そうなんですか。殿下。

「まあ、お兄様、ルーシェ様大好きなのですね」

アイヒ様の顔はきらきらしている。

「なぜそうなる!!」

どうやら、かなり仲はよいらしい。よいことだ。

「じゃあ、俺はそろそろ戻る。アイヒ、ルーシェを困らせるなよ」

「まあ、わかっていますわ! 失礼しちゃう」

アイヒはかわいらしい顔を膨らませていた。

「仲良くしてやってくれ」

部屋から出ていくとき、こっそり言われた。

いつもの不遜さはなく、妹を心配している兄そのものの目だ。どんだけかわいいんだよ。気持ちはわかるけど。

「それでアイヒ殿下」

「アイヒですわ。わたくしたち同い年でしょう」「・・・・・・アイヒさ」

「アイヒですわ」

「・・・・・・アイヒ」

そう、正解ですわ。とにこっとされた。わわ、さすが殿下似の美少女だ。顔が整いすぎていて思わずどきりとしちゃった。

「わたくし、お友達が本当に少ない、いえ、いませんの。わたくしの趣味のこともあってあまり・・・・・・」

と、言い難そうに言葉を紡ぐ。

その姿を見て、さみしいんだな、と思った。

でも、お友達がいないというのは・・・・・・、まあ、それも仕方ない気はする。王族だし、気を使うからね。親の思惑なんかも絡んでくる。別に貴族の令嬢たちが悪いわけでもないだろう。子供にとっては親が絶対なのだから。私はお友達ゼロですけど? だってお茶会とかいったことないし、お父様にそんなこと言われたことないもの。正直貴族の集まりは面倒くさそうなのでラッキーと思ったくらいだし。この時代は幼稚園などはないから全く子供と会わないんだよね。それが普通と思っていたけど違うのだろうか。さっぱりだ。

それに、趣味? ああ、あの変装のことか。いや、あれはあれですごいと思うけどな。私も初めはラスミア殿下と思っていたし。現代っ子にとってはコスプレは普通だ。私はしたことないけど。

ああ話がそれた。

やっぱりさみしいわけだ。まあ、それもわからなくはない。女の子は基本一緒にうだうだするものだしね。

「それは確かにさみしいですわね。実を言うならわたくしはアイヒよりも悪いですわ。わたくし、そもそも同年代の方には殿下しかあったことがなかったのですから」

するとかなりびっくりされた。え、やっぱり子供のネットワークあるのか? 別に興味はないけど、グレンのことも考えると知っといたほうがいいのかもしれない。後で詳しく聞いてみよう。

「さみしくありませんの?」

「いえ? 屋敷の者たちみな優しいですもの」

ルカはそばにいるし、メイド達も執事も私をいつも気にかけてくれる。父も母も祖父も祖母もみな優しく、さみしいと思ったことはない。

「・・・・・・ルーシェはお強いのね」

そうなのだろうか?私は精神年齢はこの子たちの2倍以上あるから少し大人びているだけなのかもしれないと思った。

「わたくしにとってはそれが普通と思っていたので、そんなことはありませんよ。それにもうアイヒは一人じゃなくなりましたよ」

「え?」

「もう私がいるじゃないですか」

ずっとは一緒にいれないけど、きっと彼女が王女という地位を理解して、友と呼ばれる人たちができるまで、傍にくらいいてあげようと思った。

少し違うかもしれないけれど、この世界で初めて自分を認識したときの疎外感は少々こたえたから。

「それにアイヒの趣味? 私はすごいと思いますわ。本当にびっくりしましたもの。わたくしも今度化けてみたいものですわ」

それに、その変装術もし私もできるなら、もしかしたら家出に役に立つかもしれないし。

「本当?」

「ええ」

だって今のドレスだって私からするとただのコスプレでしかないのだ。今更服装がどうなっても特にどうとも思わない。あー、ジャージが懐かしいわ。

「まあ・・・・・・うれしいわ」

アイヒ王女は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、わたくしの部屋に行きましょう」

「はい」

本物のお姫様の部屋は初めてで、どれくらいメルヘンなのかすごく気になるところだ。天蓋付きベッドとかあるのだろうか。ちなみに私の部屋は普通のベッドです。でかいけど。

「ここがわたくしの部屋ですわ!」

ニコニコと笑って案内された部屋を見た瞬間、私の笑顔は固まった。

声を出さなかった私をほめて。

みなさんお姫様の部屋を想像してみて。

普通ないよね。お姫様の部屋に、首から上のマネキンとか。しかもカツラなのか、微妙にずれている。それが妙に怖い。

「あら、ごめんなさい。お兄様のカツラそのままにしていましたわ」

げ、アレ、ラスミア殿下のカツラなのですか。確かに色はあんな感じか。

「そ、そうですか」

「衣裳部屋に戻してきますわね」

と、隣の部屋の扉を開けた。その時ちら見したものを私は忘れることにした。メイド服はまあいい。まだわかる。でも、なんで甲冑とかあるの? 

何に使うのか。お化け屋敷にでもするつもりなのか。

いろいろと思うところはあったが、その他は、簡単に言うとお姫様の部屋だ。童話に出てきそうな鏡のついた化粧台や。大きな天蓋付のベッド。優雅でかわいらしい机と椅子。

先ほどマネキンが置いてあった机の前の椅子に座る。するとすぐに扉が開いてミルクティーとケーキが出された。

「どうぞ」

お礼を言おうとして私は固まることになった。

黒い髪!!!!! お茶を持ってきた少年の髪は黒かったのだ。

「ああ、ルーシェ様。紹介しますわ。わたくしの従者のヨシュアです」

ヨシュアと呼ばれた少年は私に向かって深く礼をした。



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