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告白?

 太陽が昇り窓から陽が指してくることで次第に意識を覚醒させる。

 

「…知らない、天井だ。」


 一生に一度でいいから言ってみたい台詞TOP10の一つである台詞をつい呟いてしまった自分に苦笑しながらも、体を起こす。ちなみに、一位は「前の車を追ってください!」だ。これは言われたい言葉でも1位だったりする。

 

 そんなどうでもいいことを考えながら周りを見渡す。…やっぱり夢じゃなかったんだな。背中に感じる翼の感覚、視界をしたにすれば見慣れぬ胸の膨らみがあり、その更に下にあったはずの象徴の感覚も…消えたままだ…ううっ…

 まぁ、もうこれはいつまでも憂いていても仕方のないことなので、サッと思考を切り替えて、煎餅のような薄くて堅い布団から抜け出す。すると、そんな音に目が覚めたのか寝ていた一人が起き出す

 

「んぅ…ふぁぁ…おはよう、イーリスちゃん」

「え、えぇ…おはようございます」


 イーダに、寝起き特有のトロンとした表情をしながら寝惚けなまこで見つめられて思わずトキマギしてしまった俺は、どもりながらもなんとか返事をする。

 

「…さてとっ!ほら、アイナも起きて!」

「んぁ…ん~…あともう少し…」

「私はいいけれど、イーリスちゃんが今日は居るのよ?」

「…はっ!お、おはようございます!イーリスさん!」

「くすっ…はい、おはようございます。」


 どうやら、アイナはクールそうな見た目によらず朝に弱いタイプらしく、まだかなり眠そうな顔をしながらも、飛び起きて挨拶をして慌てて取り繕うのだが、すでに時遅くしっかりと可愛いらしい寝顔を心の中のフォルダに保存したところだ。

 

「うぅ…お恥ずかしいところをお見せしました」

「いえいえ、とっても可愛らしかったですよ。」

「や、やめてください…」

「アイナはホント朝弱いから、毎朝結構大変なのよ?」

「ちょ、ちょっと!イーダ!」

「何よ?事実じゃない。」

「ち、ちが…くないけれど今はやめてよ…」

「私はいいと思いますよ?なんだか親近感沸いちゃいますね」

「イ、イーリスさんまで…」


 アイナの事をいじりながら朝食を摂った後、情報収集の為に資料室のようなものがないかどうか、二人に聞くことにする。

 

「お二人にお聞きしたいことがあるんですが、この辺りに図書館というか情報収集に適したような場所はありますか?」

「この辺だとギルドの資料館があります。ただ保険料として金貨1枚(10万ユノ)、利用料に銅貨3枚(3000ユノ)かかります。保険料は本になにもなければ返されるそうですが、それでも金貨1枚と非常に高額なのがネックですね…」

「き、金貨1枚…10万ユノですか。」


 俺の全財産が3万ユノなので全く足りない。一般家庭の成人男性一人当たりの収入が月10万ユノらしいので、確かにかなりの高額だ。というか現代で考えても10万は高過ぎるし、見るだけで3000円も高過ぎる、ここも異世界テンプレで本や紙が貴重という奴なんだろう。活版印刷だったか?ガリ版?それが出るまでは全部手書きなら当たり前か。

 

「それじゃ今は諦めるしかないですね…」

「安心してください!私が出しますよ!保険として金貨1枚持ってかれるだけなので終わったら返していただいてもいいですし、そのまま私物にしても平気ですよ!まだ助けて貰ったお礼を返せてませんから!」

「いいんですか?…それじゃ、お言葉に甘えてお借りしますね。ありがとうございます。」


ここで断っても失礼だしな。人の親切は素直に受け取るべきだし、なにより正直今は助かるからな。


 さっそく、情報収集しに行く事をハンス達に伝えた後に場所と、一緒に教えてもらったギルドが管理するという資料館に向かう。

 

 そのまま歩く事数分。資料館についた俺は、様々な分類の本を取り出し、次々と読み漁っていく。この体のスペックが高いおかげか、読んだ内容がそのまま自然と頭の中に入っていくので、勉強するのがとても楽しい。頭がよくて要領がいい人というのはこういう感覚なのだろうか?


 そうすること更に数時間…いったん得た情報を整理するために、雑貨屋で購入した紙とペンを使って書き出していく。アウトプットは大切な作業であり、俺は必ずする事なのだが、一番安い紙と羽ペンにしたせいでボールペンに慣れた現代人の俺にとっては、ものすごく書きにくかった…金に余裕ができたら万年筆とかないのか探してみよう。


 さて、まず最初に予想通り俺が今居る世界は新作の世界であることに確定した。

 アディシリーズは、全て舞台の大陸名と同じ名前をタイトルに付ける事で差別化をしている。例えば、俺のやっていた前作は【ズワールト・オブ・アディガマー:エレマ】になるわけだ。

そして他にも、リリースされているタイトル、現在判明している限りの大陸名、エレマ大陸の主要国家や上空に見える衛星の名前も同じなことからこれは確定だ。

 

 問題は年代だ…古代とは言っていたが、まさか前作から500年も経過しているとは流石に思わなかった。

ただ、500年も経過しているだけに様々な面で発達しているらしい。ただし、発達しているのは科学技術ではなく、魔法技術が発達しているようだ。科学が魔法にとって代わってるせいだろう。

 何でも大国には、飛行船や転移魔法陣、魔法人形ゴーレムまであるみたいだ。こんな辺鄙な資料室にすら、そういった情報がある辺り、恐らく大国としてのアピール面もあってかなり有名な話なのだろう。

 それにしても500年経過してるのなら、前作から新要素として出すためにもっと進歩していてもおかしくないのに、精々飛行船や転移魔法陣、ゴーレムくらいしかないのが不思議だ。それだけ魔法というのは発展させるのが難しいんだろうか?


 なんにせよ、フォレストベアーのような、上位魔獣と呼ばれるCランク以上の危険な魔獣の知識や国家名といった必要最低限の常識だけであれば、地方の都市でも集めることできた。

 もう少しこの大陸について知りたいのであれば、この足と翼、そして目で実際に探索したり、大きな国の図書館などで情報を集める必要がありそうだ。 

 そうだな…このシュース大陸を知る為にも、せっかくアディの世界にきたんだ!もうここは割り切って精一杯楽しんでやるとしよう!ひとまず俺が今いる国【クレイ帝国】の首都【マヤミル】を最初の目標に決めよう!本には載ってなかったのでギルドの職員さんに聞いたところ、治安もいい国として有名らしく、多少は安心できそうだ。

  

 よし!目標が決まったらなんだか楽しくなってきたぞ!この先どうなるのか不安だったが、少なくともこの世界では天人族はいい印象を持たれているようだし、渾身のキャラメイクのおかげで世渡りも少しは楽なんじゃなかろうか?現代でも何かと美男、美人というのはそれだけで得しているからな。

 

 だがここで一番の問題点が出てきた。それは…資金面だ。ディノ硬貨が使えない現状では手持ちに3000万あってもこれではただの鉄くずだ。

 勿論硬貨に使用されている金属自体に価値があるらしく、鋳潰してのべ棒にすればユノ硬貨に変えることも可能だが、前にアイナから希少性が高いからマニアに高値で売れるかもしれないと言っていたので上手くいけば当面の資金面は確保できるかもしれない。

 

 勿論、そんな希少性の高い品を持ち歩いているとバレたら強盗に目をつけられるかもしれないので、安全な路線として冒険者になって稼ぐという点も考えた。

 しかし、この場合【Hランク】と呼ばれる最下級ランクになる。Hランクの依頼は雑用しかないうえに、報酬も子供の使い程度しかもらえないので、これでは旅の資金調達に使えそうもなかったのだ。

 

 ハンス達のPTに入れてもらう線もあるが、その場合一時加入になってしまうので、PTメンバーに迷惑をかけてしまう。

 ネトゲですら、固定PTの中に突然野良が入るなんて事をされたら大迷惑だった事からこれは間違いないだろう。

 消去法で考えてやはりこれしかない。今日はずっと読んでいたせいで遅くなってしまったが、明日さっそく市場に売りにいくとしよう。

 

 しかし、そうなると早くもハンス達と別れることになってしまう。初めて知り合ったシュース大陸の住人なので名残惜しいが、俺のゲーマー魂と奥深くに眠っていたはずの厨二魂が再燃してしまったのだ!アディファンとして、漢として冒険しないで何になるというのだ!!

 

 その後さっそくハンスを誘い、酒場へと向かう。そしてその談笑中に話そうとしていた話題を先に切り出される


「ところでイーリスさん、この街にしばらく滞在するのならその…よかったら僕達のパーティに入り…ませんか?」

「…私もその辺りの事も含めて今日はお話することがあります。」


 少し考える素振りをしていると、何故か緊張した面持ちでハンスが身構えている。…と思ったが他の3人はニヤニヤしていた…なんだ??


「…まず最初にすいませんが、パーティーの件はお断りします。…というのもせっかくこの新大陸に来たので旅をしてみたいからです。自分の翼を使って、自分の足を使って様々な場所を回ってみることにしました。それで本当にいきなりなんですが2日後には発とうと思っています。せっかく仲良くなれたのにごめんなさい…」

「あ…そ、そうですか……自分達の実力的にも付いて行った所でイーリスさんの足手まといになっちゃうもんな…それじゃその日は一緒に門の前まで送るよ。」

「その時はお願いしますね!」

「「「はぁ~…」」」


 と、ハンスさん話を進めていると残りの3人は綺麗に揃って何故だかため息を吐いて先ほどのニヤニヤ顔から一転、やれやれといった表情をしていた。


「…?どうしたんだよ?皆?」

「どうした?じゃねーよ、ハンス…お前意外とヘタれてんなァ?」

「全くです。ハンス、あなたイーリスさんに惚れてるんでしょう?なんで引き止めないの?」

「言っとくけど隠しても無駄よ?イーリスちゃんは鈍くて気が付いてないみたいだけど、あんたいっつもイーリスちゃんに目がいってるから私達にはバレバレよ?というか多分この酒場の店主にもバレてるんじゃない?それくらいわかりやすいわよ?」

「な、な、な…」

「えっ?」

「イーリスちゃんその辺には抜けてそうだもんなぁ…」

「まぁ、出会ってまだ2日だから一目惚れに近いでしょうし、そういう面でも悩んでたんじゃないかしら?」

「全く…うちのリーダーは頼りになるけどこっちの方面ではダメダメなんですねぇ…」

「ホントね、折角の初恋相手だったっていうのに…」

「お、おい!ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺は…「あら?それじゃあイーリスちゃんは魅力のないか弱い女性なのかしら?」

「そんなわけないだろ!イーリスさんは女性なのに自分よりも強くてそれでいて美しく…はっ!」

「か~ッ、全くベタ惚れだったいうのに止めもせずに送りだすなんてなぁ~」

「え、えっと…?これは?」

「それでそれで!イーリスちゃん的にはどうなのよ?うちのリーダーは?一応イケメンだし、結構優良物件だと思うんだけど?お金の面も結構余裕あるし、実はゴナイ支部長からもそれなりに期待されているのよ?」

「ちょ、ちょっと何言ってるんだよイーダ!」


 お、おぉう…まさかハンスに惚れられてたなんてな…うちの娘は可愛いから惚れるのは仕方ないが中身が俺だからいくらハンスがイケメンでもなぁ…申し訳ないがお断りさせていただこう。


「えーっと、その、ごめんなさい。」

「グハッ…」

「バッサリですね…」

「バッサリだったな…」

「鮮やかな切り口ね…私達のせいではあるけどまだ本人の口から告白すらしていないのに…イーリスちゃん容赦ないわね。」

「あ、あれですよ!ハンスさんはイケメンで!物腰も柔らかですし!実力もお金もあるんですよね?そ、それなら、()()()()()()()ならモテると思いますよ!頑張ってください!()()してますよ!」

「お、応援…ほ、他の…あ、えっと…は、はい…ありがとう…ございます…」

「全くフォローになってないうえに追撃が容赦ないわ…これは酷い…」

「まぁ、相手が悪かったな。イーリスちゃんはハードルが高過ぎじゃないか?初恋の相手に数秒でフラれるなんて正直トラウマ物だがな。」

「タイミングも悪かったですね」

「誰のせいだと思ってるんだ!この口か?この口が言うのか?」

「まぁまぁ落ち着けハンス、お前がまさかこんな初心だとは思わなかったからつい面白くてな!」

「よし、じゃあ今回はハンスの慰め会ということで乾杯するか!」

「げ、元気だしてください!ハンスさん!」

「えっ…あ…は、はい…」

「フられた本人に慰められてる…しかも初恋…これはキツいわね…」

「うちのリーダーがまさかここまで恋愛に疎いなんて…」

「というよりイーリスちゃんそれ素でやってるのか?かなりエグい事やってるの自覚してないのか?」


 なにやら唐突にはじまったハンスの慰め会が開始され、そのまま昨日と同じく飲み明かしていくのだった。

ちなみにアディはモデルがあります。何かはゲーマーの方ならすぐに分かると思います。

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