母Ⅴ
-十二年前にこの石板が初めて光輝いた……その日はもしかしたら、私の生まれた日かもしれない……確証は何もないけど、この石板に触れてみたらわかるかもしれない―
コトは石板に歩み寄った、危険だと止めようとしたナターシャに笑顔を向けてから。 コトが石板に近づくにつれてポケットの中に入れている銀時計が反応を強めていく……コトは違和感を感じていた、自分の中でも何かが脈打っている様に感じられたのだ。
コトは石板の目の前に立つと刻まれている文字を見つめて……どの時代のどんな言語なのかわからない、けれどコトにはハッキリと読めたのだ。
「親愛なる娘コトへ-すべてを知りたいのならば私があげた銀時計を手にしてこの石板に触れなさい。」
短い文章だった……だがコトは迷うことはなく銀時計を左手に持ち右手で石板に触れたのだ。 コトの意識はそこで途絶えた……
××××××
コトが目を覚ますとそこは様々な本がいくつもの巨大な本棚に収められている図書館の様な場所だった。
「おはようコト……」
コトが声のした方へと振り向くとそこにはコトと同じ銀髪に赤眼をした女性が立っていた。 女性は「立ち話をするのもあれだからこちらへいらっしゃい」とコトを手招きすると近くにあった椅子に腰かけた。 コトも同じように椅子に腰かけると女性が会話を始めた。
「貴女とこうして話すのは初めてねコト。 って言っても私が誰かわからないよね……」
「母さん……貴女は私の母なのですか?」
コトの発言はその女性にとっては意外だったらしい……
「どうしてそう思ったの? もしかしたら違う誰かかもしれないわよ……」
「魔力が同じなんです……石板に刻まれていた文字に、銀時計に微かに残っていたものと……」
「流石ね、その年でもう魔力感知ができるなんて……さすが私の娘だわ。」
女性の「私の娘」という言葉を聞いた瞬間コトの瞳から涙が零れ落ちた……捨てられたのかもしれない、もしかしたらもうこの世にはいないのかもしれない、もう二度と会えないのかもしれないと思っていた母が目の前にいるのだ……
「やっぱり辛い思いをさせてしまっていたよね……ごめんねコト。」
女性は謝りながら泣いているコトを抱きしめた。 そのときコトが感じたものは紛れもない母の温もりだった。
「コト! これからすべてを話すわ! 過去のこと現在のこと……そして私たちが何をするべきなのかを!!」




