母Ⅱ
コトとシャルルがキャンデラを目指し航海に出てから一日が経つころ……ここ北の強国キャンデラ王国の首都にあるキャンデラ王城の地下では現在も発見された石板の調査が多くの考古学者、研究者によって行われていた。
「ハァ、今日もなんの成果も無しか……」
石板の前に立っていた一人の男性研究者が愚痴をこぼすように呟いた。そこに後ろから他の男性研究者が一人近づいてきた。
「仕方ないですよ先輩。この文字、どの時代の文字にも当てはまらないんですから……」
どうやらこの二人は先輩後輩の関係らしい。二人が見上げているのは目の前にそびえ立つ石板に刻まれた文字だ。石板に刻まれている文字はどの時代の文献にも記録されておらずここにいるすべての研究者、考古学者が解読できず文字通りお手上げ状態なのだ。
「アリシア時代の魔導言語に形状は似ているが根本的に何かかが違う! ブリタニアの天才魔導士マーリン様は何か気づいておられたようだが……あの方にも解読はできなかったようだしな……」
「先輩……あれ!」
先輩研究者がうつむきながら考えていると後輩研究者があり得ないものでも見たかのような驚きの口調で言葉を発しながら石板を指さした。
その方向を先輩研究者が見上げると……石板に刻まれた文字が淡く光っていたのだ……何かに反応するように。
「すっ……すぐに女王陛下に連絡を!!」
先輩研究者の慌てた声に反応した後輩研究者が即座に【魔導式エレベーター】へと走ったのだ。
「いったいこれから、何が始まるんだ!?」
女王であるミレーヌとその側近であるレリアが下に降りてくるまでこの場のざわめきは鎮まることはなかった。
××××××
翌日、コトとシャルルの乗った船がキャンデラ王国の南に位置する港町【ヴァーグ】に到着したのだ。【ヴァーグ】はキャンデラ王国最大の港町で様々な漁業、貿易で栄えてきた町だ。
ここヴァーグから首都キャンデラまでは徒歩なら二日、馬車なら一日、馬を走らせれば半日で着く距離に位置している。コトたちはそれほど急ぐことはないが二匹の馬を借りて馬で行くことにしたのだ。
「コト、たしかお前はミルフィーユ王国から出るのは初めてだったな?」
「そうだけど……どうかしたの師匠?」
「ならここで見るすべてのものを目に焼き付けておけ……それだけだ。」
シャルルはただそれだけをコトに言って馬を走らせたのだ。コトも不思議に思いながらもシャルルのあとに続いて北にある首都を目指して馬を走らせた。




