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コトの年代記  作者: 綿雪 ミル
一幕
2/36

天才Ⅰ

 あの日から十年後、コトは十二歳になっていた。

 世界地図の中央に位置する大陸ユグド、その大陸最大の王国『ミルフィーユ王国』王都ミルの中央区北部に位置する石造りの円柱型の建物『王立図書館』。

 その、十一階いわゆる研究最終階層にある椅子に一人の人影があった。

 基本魔法の炎魔法と水魔法の魔方陣が施陣された魔導器【魔導式ランプ】の仄かなオレンジ色の明かりに少女と思われる人影の照らされた銀髪が輝いていた。

 少女の瞳はルビーのような澄んだ赤をしており腰まである髪は水色のリボンで束ねられていた。

 造り物あるかのようにも思える顔立ち。どもパーツをみても非の打ちどころがない完璧な造りだ。


「…十二歳の女の子が、またそんな難しい研究書を読んで」


 そんなことを呟きながら一人の女性が一階層上にある司書室の階段から降りてきた。


「エステルさん…ここの本は勉強になるからね…」


「それは、そうだけど…普通の子は専門階層にさえ上がってこないわよ…」


 呆れながら呟いた女性はエステル・ヘルソン、彼女はミルフィーユ人特有の茶髪茶眼をしており、現在は『王立図書館』の司書をしているが以前は魔術師団に所属する程の実力を有していたのだ。

 この十六階まである『王立図書館』には階層ごとに呼び名があり、一階~四階は一般階層と呼ばれ基本的な魔法や歴史についての書物が置いてあり、普通の国民はこの階層で事足りる。

 五階~七階は専門階層と呼ばれその名のとうり専門的な分野についての書物が置いてある。

 八階~十一階は研究階層と呼ばれ専門階層よりも高度な分野についての書物が置いてある。

 十二階は司書室がありいつもエステルが事務作業や本の管理を行っている場所だ。

 十三階、十四階は禁忌階層と呼ばれ禁忌魔法、国家級魔法、天災級魔法等の書物が保管してあり一般人は国王か貴族の許可証がないと上がることができない。

 十五階、十六階は禁書階級と呼ばれ王国の許可がないと立ち入れない階層である。


 そして、今二人が居るのは先も述べたとうり子供が立ち入ることなどあり得ない十一階の研究階層である。


「もうちょっとでこの階の本も全部読み終わっちゃうから…」


コトのその言葉に対し少々呆れた顔でエステルは呟いた。


「コトならいつかやると思っていたけど…まさかこんなに早いなんてね…」


 エステルが何故十二歳の少女にこんな期待…を抱いていたのかというと…コトは五歳の時よりこの『王立図書館』に通い二年間で一般階層約二万冊を読破したのだ。そしてコトはあれから五年間で専門階層、研究階層約二十万冊をあと僅かで読破しようとしているのだ。


「コトがこの図書館に通いだしてから七年が経ったのね…」


 エステルは呟きながらコトを見て改めて―大きくなったわね―と思っていた。エステルのこの気持ちは両親のいないコトに対しての哀れみからくる感情などではなく母の愛情のようなものだった。


 「どうしたのエステルさん?私の顔に何かついてる?」


 コトが首を傾げながら尋ねてくる姿はまず間違えなく男性なら鼻血を吹いて倒れていただろう。コトの容姿にはそれだけの美しさがあるのだ。


「いいえ何も…そういえば…」


 エステルは何かを思いついたようにコトに学校の事を尋ねた。


「私は初等部三年生で全座学を就学しちゃったから午後からの特別授業なんだ…でも今年から実技のために編入するんだ」


「そうだったのね…」


 エステルはこのあり得ない話に納得した…何故ならこの『王立図書館』の前例があるからである。


「あら、今日はもう帰るの?」


「うん、明日から授業だから色々と準備をしないといけないしね。」


 コトは読んでいた本を本棚に戻し魔導器【魔導式エレベーター】の前に立ちパネルに魔力を流し込むと下層からエレベーターが上がってきた。


「がんばるのよ…コト」


 エステルの言葉にコトは元気よく「はい」と答えて王立図書館を後にした。


 一人残ったエステルはこれからのコトの事を考えながら仕事に励むのだった。

   -これからコトの物語が始まるのだ…

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