誘拐事件Ⅲ
カレイドが城壁を超え地面に降り立つとそこには茶髪の少年が立っていた。少年は右手に剣を持ち構えていた、そしてこう言ったのだ。
「まってたぜカレイド・ウォーナ！その袋に入っている子を返してもらおうか？」
「チッ！面倒だな…小僧が調子にのるなよ。」
カレイドは袋をその場に置き魔法の鞄から剣を取り出しそれを鞘から抜きウェルナーに襲いかかった。
－速い‼－
カレイドの動きは流石一級犯罪者と言うべき程に速かった、ウェルナーはカレイドの剣を受けきるのが精いっぱいで反撃することができなかった。
ウェルナーが気づくとカレイドは詠唱をして左手に魔方陣を形成していた。淡い緑色の魔方陣…それは風魔法を意味していた。魔方陣が発動するとウェルナーは軽い風に足を取られその場にこけてしまった。
－しまった！－
カレイドはすぐさま剣をウェルナーへと振り下ろした…瞬間ウェルナーの前に人影が現れたのだ、長い銀の髪をなびかせるその人影は素手でカレイドの剣を止めていた。
「すみませんウェルナー先輩。城壁を超えるのに思ったより時間がかかってしまって。」
その人影はコトだった。カレイドはコトの手を振り払うとすぐさま後ろに飛びのき距離をとったのだ。
「先輩、まだ行けますか？」
「あぁ、もちろん！」
ウェルナーは立ち上がり剣を構えなおし踏み出した。その速度はカレイドには遠く及ばずとも速かった、ウェルナーが振りかざした剣はカレイドを捉えたがカレイドはいとも簡単にウェルナーの剣を受け止めたのだ。
だが、コトはその瞬間わずかにできた隙を見逃さなかった。まだまだ未熟な魔闘術を使いカレイドの左わき腹に一撃を与えた。
「グッ！」
カレイドは数メートル吹っ飛んだもののすぐさま立ち上がり斬りかかってきた。
「あいつの剣は僕が受け止める。コトは隙をついてあいつにダメージを与えてくれ。」
「はい！」
「行くぞ‼」
自身の掛け声と同時にウェルナーはカレイドに向かって走り出した。ウェルナーはカレイドの剣を受け止めるとそれを跳ね返しカレイドを蹴り飛ばした。つかさずコトは踏み出しカレイドに追撃を与えたのだ。
「ガキが‼調子に乗りやがって！」
カレイドは怒りに震えていた…そして魔力を開放したのだ。先に狙われたのはコトだった。コトは魔力を完全開放したカレイドの動きについていけずお腹に一撃を食らってしまったのだ。ウェルナーが助けに入ろうとしたが軽く吹き飛ばされてしまった。
カレイドがコトに止めを刺そうとした瞬間、カレイドの持っていた剣は粉々に砕かれてしまったのだ。
－重力魔法・粉砕…―
コトが気を失う直前に見たのは懐かし金色の髪だった…
