誘拐事件Ⅱ
「ウェルナー先輩!コトを連れてきました!」
「コト、あの男で間違いないか?」
ウェルナーが指さした方向を見るとそこには佳穂など簡単に入ってしまいそうな袋を担いだ黒髪の男がいたのだ。
「はい、間違いありません。あいつが佳穂の両親を殺した一級犯罪者カレイド・ウォーナです。」
「どうする?このまま後をつけてみるか、それともソニアが呼びに行っている騎士団を待つか?」
「私が行きます!そうすれば犯人は城壁の外に魔法で逃げるでしょうから、きついかもしれませんが私が倒します。」
そのコトの言葉にウェルナーとソフィアは驚愕した。
「無理だ!たとえ銀龍を召喚した君でも!相手は一級犯罪者だぞ、簡単に人の命を奪うような奴だ!」
「それでも、私は妹を…佳穂を助けます!いざとなればソフィーナもいますし。」
ウェルナーはそれでも止めようとした。そのときソフィアが口を開いたのだ。
「ウェルナー先輩…コトに行かせてあげてください。」
「なっ!君まで本気で言っているのか!?」
「「本気です!」」
コトとソフィアは同時にそう言ったのだ。その瞳には一点の迷いも見て取れなかった。
「わかった。ならこうしよう。」
×××××
コトはカレイドの前に立った。
「すみませんがその袋の中身を見せていただけませんか?」
「この中には旅の道具しか入っていないよ?」
「嘘ですね。旅の道具なら野宿用具や食料でしょうがそんなものは魔法の鞄があればなんとかなります。貴方はなんで魔法の鞄を持っているのに別の袋に入れているのですか?」
コトがカレイドにそう言うとカレイドは軽く舌打ちをして東側の城壁に向かって走り出した。それを追ってコトも走り出す。
―作戦はこうだまずコトがカレイドをなるべく東側の城壁に追い込む、そうすれば奴は魔法を使い城壁を超えるだろう。僕が東城壁の外に先回りしてカレイドと応戦する。コトもすぐに城壁を超えてきてくれ。ソフィアはソニアの連れてくる騎士団と合流して連れてきてほしい、ソフィアが来るまでは僕とコトでなんとかしてみせる―
作戦通りコトはカレイドを東側の城壁に追い込むことに成功した。そして予想通りカレイドは風魔法を使い城壁を超えたのだ。
そしてすぐさまコトも風魔法を使い城壁を超えるのだった。