第八章狼騎兵連隊
第八章狼騎兵連隊
「本12月1日をもって貴分隊は狼騎兵連隊配属となる。よって今から新たな装備を渡す。」
JSF大講堂でみんなの前で俺は鎧をだした。
「この赤い鎧こそが狼騎兵である証しでもある。良いな、各部位を確認するぞ。垂だ。喉を守る役割をもつ。ここが敵からの攻撃を最もよく防ぐ仏胴で念をこの中に流し込めばより強大な防御力を有する。」
念は能力を発動するためのエネルギー源だ。
「続いては当世袖だ。上手く使えば攻撃にも使える。草摺、太股を守ってくれるが刃物ではなく打撃等をこの場所にもらうと機動力が大幅に下がるから注意が必要。後は脛当てだ。」
当世具足を簡易化したものに近いこの鎧は他に利点がある。
「いいか、仏胴の右腰の部分に苦無袋ををつけられる。左腰には太刀緒に太刀を佩き、背中には直刀を装着するがこの2本の刀は時と場合で使い分けることを求められる。最後に槍だ。これは野戦での主兵器だ。普通右手に持った状態で携行する。主に開けた場所での野戦なら槍か太刀を用いて、森などの障害物の多いところは直刀で、塹壕などの閉所では苦無を用いて臨機応変に戦うことがひつようである。又環境に合わせて術を使い分けることも必要だ。例えば閉所で炎球を使っても味方に被害も出てしまう。逆に開けた場所で炎手刀等を使っても槍などに遠距離から一方的に攻撃されるだけだ。又基本陣形は鏃型だが地形によっては陣形の展開が困難になり、縦隊を組むこともあるし他に散開戦を挑んだり鶴翼陣形や円陣を組むこともある。今後の訓練で学んで行くが陣形から落伍した分隊は基本的に全滅する。それを防ぐ為には無線の活用、や通信妨害の際の伝令に誰を使うか。戦闘の際に陣形を崩さないことや冷酷に聞こえるかもしれないが戦死した者の遺体は時間の余裕がない限り回収しないことも重要となる。これからお前たちには連隊陣形訓練を見学してもらう。無線をもって上空から見学しろ。」
「了解!」
訓練生ではなく新米兵達を見送ると鎧を着け、太刀を佩き俺の愛用狼である雪風、これは大東亜戦争の武勲艦である駆逐艦雪風から拝命した。に騎乗した。
「いくぞ雪風!」
灰色狼の雪風は所々に白い毛も混じった立派な雄狼だ。
「これより連隊陣形訓練を開始するにいたって現状を説明する。本連隊は現在朝鮮半島北緯三十八度線のやや北側にて北朝鮮、支那の連合部隊と交戦中し敵中に孤立した第五装甲旅団の救出と敵軍の撃破を目的としている。我連隊はソウルにて休養をしており今から出撃する。尚第五装甲旅団以外はすでにソウルまで退却しており、道中で接敵の可能性もある。注意せよ。」
「おぉ!」
「前進開始!」
北海道の広大な平野で主に訓練は行われる。
「鏃型陣形に展開!」
俺は無線に叫んだ。今回訓練に協力してくれるのは自衛隊第七師団だった。
「無線感度確認。」
「よし!」
「では無線交信を行う。針路そのまま前進せよ。」
機甲部隊の第七師団はどこに潜んでいるか分からない。
「左翼四列索敵班より本部へ我敵戦車隊と接敵する。」
「撃破せよ。針路右に15度変更!前進続行!」
狼を上手く前進させる。因みに撃破といっても命中直前に術の軌道を変えるものである。
「正面索敵隊より本部へ。歩兵連隊を発見、敵はまだ我々に気付いていない模様。」
「よし、針路そのまま前方戦闘隊突撃せよ!後続は速度10落とせ。」
しばらくの戦闘の後敵は退却したようだ。
「損害報告!」
「地雷により第四分隊の一死亡二軽傷が損害です。」
「前方伝令二班は直ちに第四班と位置を交代せよ!」
素早い展開がこの作戦の要だ。
「偵察機より入電ワレテキシダンシュリョクヲハッケンセリ。以上であります。」
「鏃型陣形を閉じる。円形陣に切り替え、針路変更左三十度。」
言い終わらない内にザーザー砂嵐がはじまる。
「伝令分隊、無線使用不可状態に陥った。直ちにこの事と円形陣への切り替え、針路変更を伝えてくれ。」
「了解!」
彼等は狼を走らせていく。しばらくすると伝令が走って戻ってくる。
「伝達終了しました。」
「よろしい、ならば敵のいるこの小高い丘の近くに小川があったはずだ。この体勢で川岸まで移動。そこで休止をとる。」
「了解!」
再び伝令が土煙を上げていく。
川岸に出ると行軍は止まり警戒状態で各中隊の中隊長を集める。
「敵の師団主力だ。第二中隊は川に沿って右へ前進、そこから遠距離で術の攻撃をかけてくれ。その間に残りの五個中隊は左翼に迂回して敵陣へ突撃して敵陣を制圧、信号炎が打ち上げられたら第二中隊も合流する。良いな?」
「了解!」
直ちに出撃する。草摺が擦れる音すらたてるなといい慎重に進む。ドーン!
「第二中隊攻撃を開始しました。」
術の火の玉や岩、氷、雷などが丘を襲っている。信号炎を打ち上げようと思う。
「炎球!」
大型の炎が上空に向かって進む。
「突撃ー!」
閧の声をあげて突撃する狼騎兵連隊の先頭の狼は雪風でそれに乗るのは俺だ。敵主力がいる設定の丘を占領して訓練は終了した。ヘリコプターから降りてきた訓練生は無線交信を聞きながら陣形変更や針路変更を見ていたのだから当然訓練のできがわかるはず。
「どうだった?塚本。」
「まー、一糸乱れぬ動きは凄いと思った。無線通信だけでここまで動けるとは思わなかった。」
「そうか、全員この用に動かねばならないのだ。日々精進せよ。」
この一言で演習見学を終了。
次回、狼騎兵連隊2