第五章更なる新隊員
いよいよ本格的な事件が始まります。
第五章更なる新隊員
その日の部活は先輩たちの引退試合が近いため監督も最終下校時刻ギリギリまで練習を見てくれたので下校時刻の六時半をやや過ぎて教頭にグチグチ言われながら門を出る。同じクラスの古澤は自転車通学なので彼と校門で別れ残りの二年八人で南浦和駅を目指して進んでいく。石川は南浦和駅の近くにすんでいるため南浦和駅前で七人になる。岩城達三人は京浜東北線で一・二番線に進み、佐藤は府中本町方面なので五番線に行き岡と荻野と俺の三人で六番線に続く階段を登った。電車のなかで俺は部下からの暗号化されたメールで報告を受け、荻野と岡は携帯の某パズルゲームでコンボ数を競っていた。新松戸で岡が降りると荻野は急に口を開いた。
「本当に新隊員何て来るの?」
疑ってる目をしている。浦実生もいることを伝えたからだろう。
「あぁ、俺たちが少し遅れているだけだ。」
実際に船橋法典の隣、市川大野についたときに既に集合時間だったのだ。
「ま、気にするな。すぐつくさ。」
船橋法典駅で降りるとエスカレーターで上に上がる。
「え、あそこにいる八人のこと?」
荻野の視線の先には浦実生四人、と河野正剛本物(本人は交通事故で死亡していてそれと入れ替わった偽物の河野正剛が七闘将の一人である。)の小学校の同級生が三人、同じく本物の福岡での友達が一人、計八人がいる。
「まっ、そんなとこだ。」
一人は分隊直属の情報官であるのだが説明は基地内部でしよう。
「お前ら、待たせたな、行こう。」
彼等は予め説明を受けていたらしく白いハイブリッドカー三台に別れてのる。同じガレージから隠しエレベーターで地下に降り基地内部に入る。講義室Aで全員に自己紹介をさせる。浦実生からだ。トップバッターは荻野。
「えっと、名前は荻野健太です。好きなことは野球です。部活は浦実の野球部に所属しています。えっと…」
こっちを見てくる。
「それぐらいでいいよ。簡単にでいいからみんな頼むよ。」
次は平織だ。
「平織心咲です。浦実のテニス部に所属しています。好きなことは運動です。」
次は仲崎がたった。
「仲崎春香です。好きなことはピアノを弾くことで浦実の軽音部に入ってます。」
浦実生はまだ続く。
「塚本隼です。好きなことはテニスでテニス部です。」
「宮本優人です。好きなことはゲームです。浦実野球部の部員です。」
ここから別の学校にはいる。
「金子恵美です。好きなことはサッカーでサッカー部に所属しています。」
「盛田佑香です。部活はサッカー部で好きなことは体を動かすことです。」
「岡田大希です。部活はサッカー部でサッカーが好きです。」
彼はみさきと読む珍しい名前だ。
「篠隈研太です。空手が好きで軟式テニス部です。」
全員自己紹介を終えた。
「まぁ、俺は皆知ってるはずだから自己紹介は省略、で皆には親から伝えられているだろうけど君たちはこれからここのJSF関東支部局で生活してもらうことになる。ケンチャン以外は学校を変える必要はなくケンチャンも四中に通ってくれれば良い。」ケンチャンは篠隈の渾名だ。
「さて、廣瀬中尉、ちょっとこっちに来てくれ。」
「はっ!」
女性の士官が歩いてくる。
「彼女は廣瀬孝子中尉である。女子隊員の生活監督官である。」
「皆よろしく。」
「男子の方は荻野が生活監督官だ。」
「おぅ、任せとけ。」
荻野が返事をする。
「あ、明日の朝全員に装具一式をわたす。服と階級章は今わたすからこちらへ。後お前らは本日付で国防軍少尉に任官される。荻野だけは国防軍中尉に昇進だ。宮本、被服を受領したらミーティングルームへ。荻野、全員を大講堂へつれていってくれ。」
踵をかえし歩いていく。俺はミーティングルームへ進む。ミーティングルームの自動ドアが開くと中には既に情報五課、パソコンを使ったり、通信傍受や暗号解読が任務の通称電子情報課が揃っていた。因みに一課は対外諜報員を派遣しての諜報を、二課は防諜を、三課はテロ等の捜査を、四課は株や通信量等公開されている情報の分析を、六課は衛星や偵察機等の写真の分析を行いそれらすべてをおれが把握し指示を出している。二課と三課は国内捜査がメインなので協力することが多い。さて、宮本がやって来た。
「おーい、高浜情報中佐。」
「は!」
敬礼して三十路を迎えたばかりの中佐がやって来る。
「こいつは今日から情報五課に入る宮本少尉だ。新兵だからな。びしびししごいてやってくれ。」
「なるほど、見たところ学生ですが訓練はどうしますか?」
「そうだな、確かお前らは交代で二十四時間誰かしら任務に当たっているだろ。だから朝と夜中心に見てやってくれ。こいつの部屋番は一七三だ。」
「了解しました。」
「では、俺は司令官室に戻る。」
俺は自動ドアを出てゆっくりと司令官室に戻る。司令官室には一課課長の大橋情報中佐が待っていた。
「大橋中佐、何のようだね?」
「はっ!本日付で入隊したものは情報一課の喋報員でしょうか?」
「いや、彼等はスパイ訓練と特殊部隊訓練を終えたら狼騎兵連隊に入ることになる。お前がわざわざ司令官室まで来たと言うことはこれだけではないだろう?」
「はっ!支那の烏から情報です。」
烏とはスパイの隠語だ。
「で、どうした。」
思わず身を乗り出す。
「はっ!北朝鮮が近頃、支那経由での石油輸入量が大幅に増加しており、かといって支那の統計上の対外輸入量や採掘量は特に目立つ増加はないとのことでその石油の元をたどったところ中東のテロ組織からの密輸の可能性が高いと。」
「成る程、資料を持ってきてくれ。直ちに会議を開く。五分後に各課長をミーティングルームに集めよ。」
ミーティングルームには六人が深刻な顔をして集まっている。
「さて、知っての通り支那がテロ組織と貿易をしその石油を北に流しているということだ。まずはこの情報の真偽のほどと貿易相手の組織がわからないことには手の打ちようがない。全員の意見を聞きたい。」
「はっ!三課としては最近ISILの資金が潤沢で武器などの調達もしていることからその情報が真実ならばここで間違いないと思います。」
「六課としてもISILが押さえている油田も正常に採掘していることが衛星写真でわかっています。ので真実味はあります。」
「五課としてはかれらは最近インターネットで若者を勧誘する姿勢を見せており通信量も増加、電話やメールですが海外の協力者と話しているそうです。」
「更にISIL占領下のテレビ局にも外国で学んだメディア関係の人間が出入りしていることからそれらによる戦術も考えられ放っておくとかなり危険な状態になるでしょう。」
「成る程、とりあえずこの件は国防会議に上げておく。明後日までに全力で彼等の情報を集めよ。十分後に全員を講義室Bへ、それまでに発表の準備をしてくれ。会議は課長達で進めてくれい。俺は本部と連絡を取る。」
「了解しました!」
テレビ電話で第五軍集団本部を呼び出す。
「はい、こちら第五軍集団司令部。」
取り次ぎが出る。
「第四軍集団司令官だ。団長を出してくれ。」
「しばしお待ちを。」
「おぅ、何だ?」
団長が出る。
「重大な案件です。こちらの烏がとんでもない事を掴みました。北が最近支那経由でテロ組織から石油を輸入しているらしいです。」
「テロ組織名は?」
「こちらの判断としてはISILだと睨んでいる。」
「成る程、で?」
「安全保障上重大な問題となると思います。ひいては明後日国防会議を開いてほしいということです。これは真実としても世界には伏せておくべきだと判断します。」
「何故だ?」
「決定的な証拠を掴むべきです。ここで中途半端に公開して周りを固められては手が出ません。」
「もっともだ、だがどのようにして証拠を掴む?」
「六課の衛星と五課の通信傍受を中心としてテロ事案なので三課や四課の情報分析で何とか掴みます。一課の烏を送り込むのも手です。」
「まぁ、それはこちらの国防会議で決定する。関東支部局だけ動かすのもあれだからな。JSPや自衛隊、内閣情報局、警察とも協力せねばやっていけん。」
JSPは防諜のための組織で特別警察組織であり、どこの省庁からも独立している。
「はっ!では、明後日東京で。」
「うむ。」
電話を切ったようだ。ミーティングルームから講義室Bに向かう。
「であるからして我々はこのISILに関しての調査をすることになる。五課は通信傍受を六課は衛星写真の分析、一課は諜報員派遣の用意、二課と三課で国内にテロリストが潜んでいないかの捜査。四課は支那以外の国家による援助の有無を分析しろ。あ、隊長これらでよろしいですね?」
うまく課長連中で纏めてくれたようだ。
「これは世界の安全上も急務となる。課長達はミーティングルームを指揮室として待機、訓練生達は各部署間での伝令を頼んだぞ。尚明日は全員学校や偽装の会社を休め。明後日の国防会議までは二十四時間体制でこの件にあたる。二課と三課は警察に化けて捜査、出入国管理局から情報をもらって怪しいのを徹底して洗い出せ。又国内に潜伏している支那のスパイはマークしろ。怪しい動きがあれば適当な理由で拘束、尋問にあたる事を許可する。又これはテロ事案であるため二課と三課は全員拳銃を所持、車内には突撃銃を備えた状態で任務にあたれ。以上別れ!」
「別れます!」
こうして本格テロ事案対策の一日が始まった。
初めて本格的なJSFの組織活動です。どうなる日本!?
感想で誤字脱字等ご指摘いたたげたら直していきます。感想お待ちしております。