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ある、王国の物語『白銀の騎士と王女 』  作者: うさぎくま
今世の物語
61/71

61、ヘアージュエリー

久しぶりの更新です!!アレンの究極の愛をお楽しみくださいませ。

 


「アレンは、今日何をしていたの?」


「騎士団の雑務を手伝っておりました」


「そうなのね。バルデン様!! アレンは強いだけでなく、頭も切れるから助かるのではなくて??」



 エルティーナは左隣りを歩くバルデンに、アレンの事をまるで自分の自慢みたいに話す。



「あ、あぁ。そうですね。助かりますよ」



 バルデンの言葉にエルティーナは屈託のない笑みを浮かべ、提案を持ちかける。



「アレン、あのね。私の護衛、丸一日一緒じゃなくていいわ。一日置きとかでも大丈夫よ!!

 レイモンド様に言われて分かったんだけど。もう今は、アレンが私を護衛する意味がなくなっているの。

 アレンが私の護衛についた時は、私は王位継承第三だったわけで……やっぱり優秀な護衛が必要だった。でもお兄様が結婚されて、クルト、メフィスが産まれて、お義姉様もまだまだ健康で子供も望める。

 王家の血筋はもう大丈夫よね? だったら、もし私に何かあっても誰も困らないじゃない? そうですよね? バルデン様!!」



 可愛らしくハキハキと答えるエルティーナに、バルデンは冷や汗が流れるのを感じる。

 あのきゃぴきゃぴのメロディーとは違う意味で空気の読めないエルティーナ。


 答えにくい質問にバルデンは答えに困る…。エルティーナに何かあっても困らない。の問いに、ハイ。と答えた瞬間、アレンのサーベルが確実に急所を確実に狙ってくる。


 正直黙ってほしい。



(エルティーナ様はレオン殿下やアレンに囲まれ、ちやほやされてきたはずなのに、何故そんなに自己評価が低いのですか!?

 不思議でなりません!? そして、そんな恐ろしい提案はやめて頂きたい!!)



 バルデンの心の声がエルティーナに分かるはずもなく。バルデンが返事を返してくれないので、今度は右隣りにいるアレンを見上げる。




「ね!! いい提案だと思うのだけど。アレンもいいと思わない??」


「思いません」


「…どうして?? 自由な時間が増えるわよ??」


「とくに今、自由な時間を欲しいとは思いません」




「??? アレンは変わってるわ?? レイモンド様も…」


「エルティーナ様、フリゲルン伯爵の話はなさらないで下さい。

 彼はまだ外部の人間、どれほど見た目が貴女の好みでも、中身までがエルティーナ様の思い描くタイプの人とは限りません。

 あまり警戒心がないのは心配です……お願いですから、まずはどんな人間にも警戒心を持って下さい」



 最初は機嫌悪く……段々とそれが懇願に変わるアレンの物言い。エルティーナの事を凄く心配してくれると分かる。


 いつまでも…子供から大人になっても、アレンに甘やかされるのは嫌いじゃない。

 愛されていると分かるから。だから、アレンがそう言うならまだ甘えよう。



「警戒心はちゃんとあるわ。でも、今は警戒してない。だってアレンが隣にいるもの。アレンが側にいる時が一番安心するわ………。

 肩の力が抜けるの、だからね…アレンの側にいる時が……一番……好き……」



 本当の気持ちを少しだけ、入れて話す。


 それはエルティーナの魅力を最大限に引き出し、自身も気づいていない。無意識に香る濃厚な色香に男を誘う甘い声……。


 言葉を投げかけられたアレンも、至近距離で聞いていたバルデンも息を呑む……。



「………私も、エルティーナ様の側にいる時が一番……好きです」


「ふふっ…ありがとう」



 まるで寝所の中にいるような会話。しかし抱き合うわけでも、口付けをするわけでもなく、身体は一切触れ合っていない。


 バルデンは言葉と身体があってない二人を見ていて、怒鳴りたくなる。

 怒鳴らなかったのは、見つめ合う二人が幸せそうだから……また見て見ぬ振りをする。



 エルティーナを自室に送り「また、明日」という甘い拘束の約束をし、ドアが閉まる。





 エルティーナの自室から少し離れた廊下で、バルデンは食堂で聞きたかった事を口にする。


「お前達は。いつも、あーなのか?」


 攻めるようなバルデンの言葉にアレンは無言で返す。アレンの無言の返事に溜め息を吐き、静かに話を始める。



「先日の立食晩餐会、今の会話、お前は疑問に思わないのか? 王や王妃、レオン殿下、グリケット様が何も言わないから黙っていたが、睦言を話しているようなお前達の会話や雰囲気は正常ではない」


「バルデン団長、正常でない。などと判断して頂く必要はございません。十分異常だと分かっております」



 あまりにも当たり前に話すアレンに、唖然とするバルデンは口が開いていた。



「私はエルティーナ様の為に生きています。騎士になったのも彼女の側にいたいからであって、バルデン団長のように騎士の精神なんてものは最初からございません。

 エルティーナ様との関係が不思議であっても、所詮言葉遊びです。

 病持ちの私が彼女と肌を合わせる行為が出来るわけがないので、間違いは起こり得ない。

 そういう事は全てフリゲルン伯爵に譲ります。ですから言葉遊びくらい構わないでしょう。それ以上、決して私は望みませんので」



 はっきりと気持ちを隠すことなく話すアレンに、バルデンは何も言葉を発せず。アレンの姿を呆然と見つめるしかなかった。


 穴を開けるように、見つめてくるバルデンにアレンは普段見せる事のない、顔を見せる。


 腰が砕けると言われるバリトンの甘い声で、極上の甘さを含む優しい微笑みで話す。




「私は、エルティーナ様を愛しております」



 甘さで身体が痺れる。そんな感覚にバルデンは陥る。アレンはゆっくり頭を下げ王宮にある騎士専用の自室に戻っていく。




 バルデンはアレンの後ろ姿を見て、初めて騎士団にアレンが入団してきた日を思い出した。


 メルタージュ宰相が「入団させてほしい。万一それで命を落とす事になっても苦情は一切言わない」と頭を下げてきた。



 自分の息子だと話す隣にいる青年……青年であるはずの年齢だが、あまりにも細く小さく痩せていて。何故騎士になるのか…なりたいのか…分からなかった。


 今でこそ、ボルタージュ騎士最強と言われているから忘れていたが………。


 あの時に感じた疑問がたった今、解けた。



「そうか……エルティーナ様に会うために、騎士になったのか。

 なるほどな……見た目だけに惹かれてくる女が嫌いなわりに、一向に美術彫像の様な なりを止めないのは何故かと思っていたが……エルティーナ様が美術品愛好家だからか…重い愛だな。全く」


 バルデンは短く切り揃えた髪をガシガシとかいて、かるく笑い、愛しい妻と子供の元に戻るためもう一度 王宮の門を目指した。



 ***



「エルティーナ様、明後日にラズラ様はボルタージュを発つとの事で。

 明日は一日一緒にいたいという申し出がございましたので、お受け致しました。ラズラ様と是非楽しくお話し下さいませ」


「まぁまぁ!! なんて素敵なの!!! 明日が楽しみだわ!!! さすがナシル!!」


「お褒めの言葉、ありがとうございます。では、ゆっくりとお休み下さいませ、エルティーナ様」



 ナシルの柔らかい声と共に寝室のドアが閉まる。



 エルティーナは太陽の匂いがする寝具に顔を埋め、先ほど聞いたアレンの最高に幸せになる、魔法の言葉を思い出す。



『………私も、エルティーナ様の側にいる時が一番……好きです』



 まさか、そんな言葉をアレンの口から聞けるとは思わなかった。優しいアレンは私の言葉にただ同意してくれただけ、深い意味がないのは分かっていても心踊る。


 エルティーナはこの上ない幸せな気持ちで瞳を閉じた。





 翌日。



「エルティーナ!!!」


「ラズラ様、おはようございます!!!」




 かるく走ってきたラズラをエルティーナは受け止める。そして ぎゅぅーーと抱き合う。



「はぁぁぁ。エルティーナの巨乳が気持ちいいわ、柔らかいしマシュマロみたいね。至福の時だわ。

 エルティーナとなら腹上死は最高ね。そう思いませんか?? アレン様??」



 先ほどから、エルティーナの斜め後ろから冷めた目でラズラとエルティーナを見ていたアレンにラズラは軽く攻撃してみる。


 グリケットから「くれぐれもエルティーナをダシにアレンをからかわないように」と今朝も注意されたラズラだが、意地悪は楽しい為に止められないのだ。


 抱き締めているエルティーナが一気に真っ赤に染まり、可哀想なくらいアワアワしているがそれは無視する。


 ラズラは勝ち誇ったように「うん? どうだ??」とアレンを見上げる。しかし上手はアレンだった。


 エルティーナに関しては色々純粋なアレンだが、ラズラが思う以上に男女の営みには経験があるし不自由していない。




「おはようございます、ラズラ様。腹上死なんてものは体力のない男の死に方です。よって私には全く関係ございません」



 さらっと爽やかに、いい返すアレンにラズラは不服だった。


「あっそ」と楽しくなさそうに返事をし、エルティーナから離れ、美しい彫り込みがなされた椅子に座り肘をつく。


 ラズラが椅子に座ったのを見て、エルティーナも椅子に座る。まだ真っ赤なままであった。


 アレンが面白くないので、エルティーナに攻撃をシフトする。




「エルティーナ、真っ赤よ。相変わらずエッチね」


「違うわ!!」



  やはりエルティーナは可愛い。想像してるのか? しかし想像しているように甘くはならないとラズラは脳内でツッコム。


 エルティーナは夢を見過ぎだ。


 本当にアレンがエルティーナの上にのってきたら、先ずは肺が圧迫されて息ができなくなって死ぬだろう。

 エルティーナの腕力で意識のないアレンを移動出来るわけない。考えただけで恐い。



 そんな会話を繰り広げながら、二人は紅茶を飲む。


 鮮やかに色付けされたティーカップはエルティーナの大好きな薔薇が描かれており、それに付随したポット、皿、フォークやスプーンまでがセットになった美しい陶器の食器は見ているだけでも満足感が得られるものだった。


 しばらく美味しい紅茶やお茶菓子を食べていて和んでいると、ラズラが突然提案を持ち出してきた。




「エルティーナ、スチラ国に伝わるジュエリーを作ってみない?」


「ジュエリーですか?? はい! 作ってみたいです!! 自慢じゃないですけど、私、なかなか器用ですよ!!」


 美術品を愛でるのが大好きなエルティーナは、実は自分自身で編んだり描いたりするのも大好きで大得意だった。



「了解! では、じゃーーーあん!!

 実はもうジュエリーの材料は持ってきているのよ。あっナイフあるかしら?」


「ナイフ?? 何に使うのですか??」


「髪を切る為に使うのよ。だってヘアージュエリーだから。だいたいは自分の髪を切って作るのよ。

 貴族の令嬢の髪は皆、手入れが行き届いているから宝石にだって負けないくらい素敵になるのよ! 宝石の少ないスチラ国では大人気なの!!」


「まぁ!! そうなんですね。凄いです!! そんな伝統がスチラ国にはあるのですね。ナシル!! ナイフを持ってきて!!」



 どんどんと進む話にアレンが待ったをかけてくる。



「ラズラ様、待ってください。エルティーナ様の髪を切るのは止めて下さい。ジュエリーは沢山ございます。わざわざ作る必要はございません」



 これこそが、実はラズラの思惑通りなのだ。スチラ国伝統のヘアージュエリーは二つの意味合いがある。



 一つは自分の厄よけ。もう一つは愛し合う互いの髪を一緒に織り込む……お互いの魂を縛る意味合いを持っている。


 何よりも強い絆になり、裏切りや嘘をつくと裁かれると言われており、本当の夫婦であってもあまりする人がいない〝呪い〟とも言われていた。



 ラズラは後者をエルティーナに教えるつもりなのだ。



 二人の髪を一緒に織り込むのは、裏切るとお互いが裁かれるのだが、それを言うとエルティーナは作らないと言うのが目に見えているので、誤魔化して話すつもりだ。


 アレンの気持ちが、エルティーナから離れる事はあり得ないと分かるから出来るのだ。



 ラズラは絶対にエルティーナとアレンの魂を縛りたかった。今世で二人が夫婦になり愛し合う事はできなくても、来世では夫婦になり子供をつくって楽しく生きていってほしい。そう思う。

 だからこそ、スチラ国では恐ろしいとされている魂を縛るヘアージュエリーを教えるのだ。



 内緒に作るにしても先ずは、アレンの髪が必要だ………。


 正面きってアレンの髪を下さいとは言えない。アレンが『白銀の騎士』、『歩く宝石』と言われているのはラズラも知るところ。他国まで響くような美貌の持ち主なのだ。その人の髪を切るなんてあり得ないのは分かる。

 しかしエルティーナ第一主義のアレンが彼女の髪を切ると言えば、必ず食いつく。



(きた!! ここだ!!)ラズラは内心でガッツポーズをとる。



「そんな……せっかくエルティーナと友人になった証にお教えしようと思ったのに………残念でなりません」


「ラズラ様、大丈夫です。私は髪の毛くらい気にしません。大丈夫ですよっ」


「エルティーナ様、お止めください!!」



 アレンの少し苛立ちを含んだ声にエルティーナの瞳に薄く幕がはる。エルティーナは、アレンがどうして怒っているのか分からないのだ。


 どれほどエルティーナが残念に思っていてもこれだけは譲れないし、阻止したい。


 アレンにとって大切に護ってきたエルティーナ。色々な事を失っていく今、何故これ以上、髪といえども彼女を傷つけないといけないのか!?


 冗談じゃない!! ジュエリーなんて、山のようにある。今更いらない。


 アレンはラズラに怒りを隠すこともなく、睨みつける。




「確かに……髪は女の命と言いますし……。

 あっ そうだわ!!

  ならばアレン様の髪をくださいな。アレン様の髪は宝石のような輝きですし、ヘアージュエリーとしてエルティーナが身に付けるのに色合いがとても合うと思いますわ!!

 アレン様が髪を下さったら、エルティーナの髪を切る必要がなくなりますし!! いかがかしら?」




 ラズラの提案にエルティーナは絶句。控えていたナシル、侍女達も絶句。


 エルティーナの髪以上に、そんな恐れ多い事をよく言えるなとアレン以外の皆が思っていた。



(私の髪をジュエリーに…。エルティーナ様が肌に付けるのか…そんなこと……)



 アレンにとってラズラの提案は、胸が高鳴り身体が沸騰しそうな喜びを運んできた。



(エル様は断るだろう。だったら、その言葉を可愛らしい口が紡ぐ前に……)




 アレンはエルティーナ達から一歩下がり、腰に下げていたサーベルを抜く。

 ゆるく編み込み、後ろに流している美しい銀髪を素早く切ったのだ。




「………ア……レン……」



 あまりの光景に呆然とするエルティーナ。声にならない悲鳴をあげるナシル達は今のあり得ない状況を理解しようと、必死に止まっている頭を動かす。


 アレンはそんな皆の状態を目にも止めず。サーベルを鞘に戻し、エルティーナの側に寄る。


 目を見開いて呆然としているエルティーナの手の上に、今まさに目の前で切った美しく輝く銀色の髪を置く。



 愛しさを惜しげもなく入れた、エルティーナだけに向ける甘く蕩けるような声と表情で…。




「エルティーナ様、どうぞ。お使い下さいませ」


 そう言ったのだ。




いつも、アクセス、ありがとうございます!!長い前置きを消化していっております。どうぞ、最後までおつきあいくださいませ!

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