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ある、王国の物語『白銀の騎士と王女 』  作者: うさぎくま
今世の物語
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3、エルティーナの勇気

 

「…ナシル。今から、ドレスを変えるのは無理?」




 エルティーナが言った言葉に、ナシル他侍女皆が驚く。




「……エルティーナ様。何故か、お聞きしてもよろしいでしょうか。…正直に申し上げますと、かなり難しいです。でも不可能ではございません」



 優しく、そしてはっきりと。ナシルらしい言葉が返ってきた。

 エルティーナはそんなナシルの事が、大好きだと改めて思う。



「私は、今まで殿方と触れ合うのが嫌で。舞踏会に出るには、ありえないドレスを着ていたわ」



 エルティーナの着ているドレスは、胸元も、背中も、肩も、腕も、全部隠れている。

 男からの視線に慣れず、どうしても気分が悪くなるからだ。

 自分の、今着ているドレスを見て。そして苦笑しながら、淡く光沢のあるピンクのドレスを指で軽く持ち上げて、ナシルに言う。



「私ね。どんな風に社交界の方から、言われているのか…なんとなくだけど、分かってるの…。

 残念で時代錯誤の…王女様って言われてるわよね。

 でも殿方がどうしても気持ち悪くて。視線が嫌で。触れられたくなくて。ダンスが嫌で。自分の身体に自信がなくて……」



 下を向いていた顔を上げ、宣言する。



「でも、頑張ってみようと思うの。綺麗になりたいわ。こう…思わず抱きしめられるくらい!!」


「「「きゃーきゃーきゃー」」」




 ナシルの背後の侍女、キーナ、メーラル、クキラ、が興奮し思わず叫ぶ。



「キーナ! メーラル! クキラ!」とナシルの叱咤がとぶ。



 そのやり取りがとても楽しくて、ナシルに怒られる事が分かっていても、エルティーナも王女である事を忘れ、大きな声で一緒に笑う。


 もちろん。エルティーナが綺麗に変身した姿を見せたいのはアレン。結婚相手は、もう誰でもいいと思っており、今日の舞踏会で決めると決心していた。



 エルティーナにとって、アレン以外は皆、同じだ。

 アレンと他の殿方を比べるのは可哀想だが…。アレンほど眉目秀麗、文武両道に秀でた殿方はいない。見た事がない。

 エルティーナの兄も、眉目秀麗、文武両道だけど。異性ではないし結婚しているし、もちろん恋愛対象外だ。

 アレンといい勝負なのは、兄だけ!!

 きっと…

 アレンは真面目だから。そろそろ恋人と結婚したいと思っていて…本当はエルティーナと離れたくても、国王からの命令で縛られている。


 綺麗な人と抱き合っているのも、口付けしているのも…何度も、何度も、見たことがある。


 だから最後くらいアレンとダンスを踊りたかった。一度でいいから。たった一度でいい。今日は、いつものエルティーナから変わるのだ!



 拳に力を入れ宣言するエルティーナを見て、ナシルは力強く頷いた。



「エルティーナ様、かしこまりました。素敵なドレスが沢山ございます。誰もが振り返る女性に、私達が致しましょう。

 本日は、隣国のバスメール王国。スチラ王国。の姫君も参加されます。ぜひエルティーナ様が一番になってくださいませ」



「そうですとも。エルティーナ様は、美しいです!! 自信がないのが、何故なのかわからないですよ!!」とキーナが。


「すっごい、スタイルがいいのに!! お胸だって信じられないくらい、柔らかくて気持ちいいのに!!!」とメーラルが。


「肌、すっべすっべですもんね! 触りごこち最高ですよ!!」とクキラが。



(なんて事いうの!!!)侍女のあまりの発言に、真っ赤になって。恥ずかしさから涙目になっているエルティーナ。


 恥ずかしけど、嬉しい。本当に嬉しい。幸せな今に、感謝だとエルティーナは、真っ赤になりながら思った。



 エルティーナは侍女達の技で魔法にかかっていく。土台が良い為、着飾ると更にエルティーナの魅了を押し上げるのだ。





「如何ですか」


 ナシルに促されて、立ち上がり。鏡の前に…。

 鏡の前の自分を見て、エルティーナは…驚愕する。



「……綺…麗……」



 ドレスの色は薄い光沢があり、楽園の湖のようだ。可愛さと妖艶さが合わさった究極の一品。


 コルセットで締め上げたウエストは折れるのでは…と思うほど細く。



 胸はドレスからはみ出すのでは? …と心配するほど開いている。正面の鏡からでも胸の割れ目がしっかり見える。自分で見てもなんだか、思わず触りたくなる胸元で、背中も半分以上開いている。


 そして髪は、なんと本物の宝石を編み込んでいる為キラッキラッ!! エルティーナの細い首には、大ぶりのダイヤモンドが輝いている。


 文句無しに美しい姿だった。


 ナシル、キーナ、メーラル、クキラ、皆が満足げで。皆の思いを受け感動して涙が溢れてくる…。



「エルティーナ様、泣かないで、くださいませ!!!」


 とナシルの必死な声がとんでくる。



 感動しすぎて。涙目になっていた。これなら、アレンの今までの恋人にだって負けてない。

 隣に並んでも見劣りしない! こんなに舞踏会が楽しみなのは、生まれて始めて。早く、アレンに会いたいと強く思う。


 エルティーナは美しく飾り立てられた、鏡に映る自分を見ながら想像し、幸せな妄想をする。



(アレンに抱きしめられて、もしかしたら口付けされたり!! なんて……きぁゃーきぁゃー!!)



 素敵な魔法…が


 解けませんように…


 エルティーナは、鏡に映る自分に願いを込めた…。





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