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ある、王国の物語『白銀の騎士と王女 』  作者: うさぎくま
今世の物語
24/71

24、ミダへの道…

 

「レオン様、お会いできて良かったです。かなり探しましたよ。

 ミダに行かれたと思い、我々もミダに行きましたら、まだいらっしゃらないと言われ…。焦りましたよ」




「ほぅ…。で、そこで離れて俺達を鑑賞していたということか」


「鑑賞なんて!! 滅相もございません。なっ、パトリック」


「もちろんです! とても異様な光景でしたので、近づけなかったのです」


「おい。パトリック!!」




 パトリックの失言にフローレンスは思わずつっこむ。



「パトリック様もフローレンス様も、いらっしゃったのね。気づかなくて申し訳ありません…」


「エルティーナ様!! やめてください!! あと、我々に〈様〉は入りませんので! 是非、呼び捨てで!!」



「わかりました。では、パトリック。フローレンス。と呼びますね。

 私は殿方の知り合いがほとんどいないので、とても嬉しいです!! 今日は防波堤壁画を生で見れて、素敵な友人もでき、そしてミダにも行ける!! 嬉しい事ばかりですわ」



 嬉しくてたまらないのか、エルティーナの身体は左右に揺れている。見ているだけで癒されるエルティーナにレオンも自然と微笑む。



「良かったな。エルの嬉しそうな姿は俺も嬉しい」


「ありがとうございます、お兄様!! 独身最後の生活を謳歌いたしますわ!!」


「…ああ、エルは利口だな。幸せになれよ」



 レオンはあえて、肯定も否定もせず、エルティーナの淡い金色の頭をポンポンと叩く。



 五人は楽しく話をしながらミダに向かって歩いていく。

 何人もの人がアレンを見て、お兄様を見て振り返る。

 それを目にするたびエルティーナは誇らしい気分になった。




(アレンがお兄様が、見目が良いのは誰が見ても分かる。

 でも二人は決して見た目だけじゃない。アレンは騎士として優秀だし、お兄様は賢王としての器がある…)


 だんだんと、遠くなる十二神の防波堤壁画をエルティーナはもう一度振り返り、神々に願いを込める。



『この国がいつまでも、平和でありますように。

 私みたいな、何もできない、ちっぽけな存在に頼まれても仕方がないと思います。けど…

 今 この時に生きている事を感謝いたします』



「エル??」


「お兄様! ミダに着いたらまずはチョコレートですわ!!」


「昼飯の前に、菓子を食べるのか??」


「はい!」


「エルの胃袋は変だな」


「変だなんて失礼ですわ! そんな事を言うお兄様には、こうだわ!!」




 エルティーナは、全体重をかけてレオンの腰に抱きついた。といより巻き付いた。

 そして、してやったりという顔でレオンを見上げる。



「エルは、反抗の仕方がいちいち可愛らしいな。よっと」


「ぃきゃっ!!」




 レオンは、自分に巻きついているエルティーナのウエストをグイッと掴み持ち上げた。


 びっくりするエルティーナに微笑みかけ、膝裏に手をそえて抱え直し、エルティーナの上半身を柔らかく抱きしめた。


 今はレオンよりエルティーナの方が頭一つ分高い。

 見た事のない高さ。

 見る位置が違うだけで全く違う世界だった。


 いつまでも、怖がっていてなかなか先に踏み出せないエルティーナ…。


 兄は、そんなエルティーナにいつも道を示してくれる。兄の何気ない行動一つ一つが色々気づかせてくれる。


(フリゲルン伯爵…いえ…レイモンド様と共に歩んでいけるように…。私にできる何かを探すわ。お兄様」)



 エルティーナはレオンの肩に手を置き、ボルタージュ国の太陽神がおわす、大きく広がる青空を見上げる。


 この場で今一度生まれ変わった気がした。




「さぁ。もうすぐ着くぞ。ミダに着いたら好きなだけ食べろ」


「…お、お兄様。あのそろそろ降ろしていただけませんか…恥ずかしです…」


「いやいや。せっかくだから、このまま抱いててやるよ。いい気分だろ」


「いたたまれませんわ…」




 エルティーナとレオンが、そんなやりとりをしていると…。



「うん?? アレン、なんだ??」


 レオンの前方にアレンが立ちはだかったのだ。




「レオンばかりずるいな。ですので、ここからは私が」


「っふぇぇ!?」




 エルティーナはレオンから思っ切り引き剥がされる。

 びっくりしてレオンの肩に添えていた手が離れる。落ちる!!! と思った瞬間、甘い匂いが鼻をくすぐる。


 閉じていた瞳をあけると、麗しいアレンの顔が至近距離に!!!


 絶句!!!!



「レオンばかりずるいです。ミダに着くまでは、私が抱いてもよろしいでしょうか。エルティーナ様」


 お人形みたいにカクカクと頭を縦に振り、今の状況に発狂する!!!



(はじめてよ!! はじめてよ!!!

 アレンに抱っこしてもらっているわぁぁぁぁ!!!

 何これ。私の夢!? 白昼夢!? )


 エルティーナがあたふたしている最中、レオンは呆れ顔。パトリックとフローレンスは目が飛び出ていた。皆のぶっ飛んだ表情で少し冷静になったエルティーナは、この状況を素直に喜ぶ。


(そっかぁ…嘘みたいな現実が今、起こっているのね…。堪能しなくちゃ)



 エルティーナは落ちないように(アレンが落とすわけがないが)アレンの首に腕を回す。顔をアレンの肩口に入れたら、もう恥ずかしくない…顔が見えないから…。


 アレンの甘い匂いを感じながら、好きな気持ちがばれませんように。ばれませんように。と念じる…。


 林檎のように真っ赤になった頬を、アレンの髪に押し付ける。



(最後だから…最後だから…気づかないで…)と言い訳をしながら。



申し訳ありません。次こそは、ミダです。

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