表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある、王国の物語『白銀の騎士と王女 』  作者: うさぎくま
今世の物語
23/71

23、エルティーナの勘違い

 


「わぁ!!!」


 エルティーナは防波堤壁画の前で思わず叫んでしまった。先ほどレオンに声がデカイと注意されたはずだが。また、まるっと忘れていた。


 エルティーナは感動しっぱなしである。


 エルティーナ、アレン、レオンがいるこの場所は、防波堤壁画の最終地点である。



 スイボルン・ガルダーの防波堤壁画十二神は二キロに及ぶ超大作。

 十二神の末弟から順に見ていくのが通常のルートである。

 末弟から比べると、十二神ツートップのコーディン神とツリィバ神の防波堤壁画の彫り込みは他を寄せ付けない圧感のできとなり、魂を揺さぶるものだ。


 たっぷりとした布地が身体をまとい、宝飾品で飾り立てている腕、首、額、足首は躍動感があり筋肉の動きが見て取れる。

 コーディン神は大剣、ツリィバ神は弓矢を構えている。


 そして、とくに乙女達に人気なのが顔である。コーディン神は甘く精悍な色男。ツリィバ神は氷のごとく研ぎ澄まされた美男。


 乙女の間では常に「あなたはどちらがお好き?」という会話で盛り上がる。彼女達の中では一種の挨拶なのである。


 男側からすれば神に対して、好みか? 好みでないか? と口にするのは失礼だろう……と常々思われていた。




「はぁ〜素敵…たまらない…さすがスイボルン・ガルダー様………」


 エルティーナは、うっとりと壁画をみて興奮していた。興奮しているので、周りの目があまり気にならない。



(…うっそ……!!)


(おい、あれ見てみろよ…やばいぜ、あれ…)


(いやぁ〜ツリィバ様よ!!!)


(あぁぁぁ、なんて素敵!! コーディン様もいるわよ!!!)


(……妻が無事に出産できますように)


(プロポーズが上手くいきますように!!)


(…………拝む)





「アレン……俺はここまで居心地が悪い経験は初めてだ………。どう考えても皆が何かに憑かれているとしか思えない……」


「……思った以上だ……。女性に拝まれる事はあっても男性にまで拝まれるのは、私も初めてだ」



「「「「キャーイャぁ〜。お二人が何かお話しをされているわ!!!」」」」


「「「動機息切れが……はぁはぁはぁ」」」



「………」「………」



 願いを叶えてもらおうと拝む市民、二人の男達のナニを想像し興奮する女性たちが、舐めるようにアレンとレオンを見ている間、二人は現実から逃避した。


 もう限界値まで達するその時、エルティーナが満足したのか、やっと二人に意識を向けた。




「はぁっ堪能したわ!! うん? アレン?? お兄様?? どうされたの??」


「……エル……神として拝まれるのは、まぁ…なんとなく分かるが……。

 なんか、先ほどから…はぁ〜はぁ〜言っている女が多いのだが、あれは何故か…? 聞かないほうが良い気がするんだが……あえて聞こう」



 エルティーナは「はぁ〜はぁ〜」言っている乙女達を見てから、またアレンと兄に瞳を戻す。


 理由が分かったエルティーナは、その可愛らしい口から爆弾発言をレオンとアレンにぶつけるのだ。



「なるほど、ふむ。ふむ。

 お兄様! コーディン様とツリィバ様は恋人どうしなの。だからきっと お兄様とアレンが二人で並んでいると、色々妄想が膨らんで堪らないのではないかしら」


「……エル…その神達は、男…だよな…」


「?。ええ、そうよ。性別なんて別に構わないのでは?? 美しいですし絵になりますし」



 エルティーナは「お兄様は今更何を言ってるの?」的な感じの顔をし、可愛らしく頭を傾けている。



「……エルティーナ様も、レオンと私を見て、そう思われていたのですか?」


「まさか!! お兄様には、エリザベス様がいらっしゃいますし、アレンにも沢山恋人がいるのを知っているから、お兄様とアレンが恋人どうしみたいキャッ。と思った事は一度もないわ」



「そ、そうか。エルならあり得ると思ってしまった。その想像は流石に堪えるからな」


「エルティーナ様! ち、ちょっと待ってく…」



「やだ!! アレン、そんな必死な顔しなくても思ってないからそんな事!! それより お兄様、もう十分堪能致しました。《ミダ》にそろそろ行きたいです!!」


「そうだな。俺もこれ以上ここには居たくない」




 エルティーナは早く早くとレオンの手を引いて歩き出す。


 その光景をアレンは呆然と見ていた…。


 エルティーナは……アレンに沢山の恋人がいると言う…何故そんな事……。


 あいつらは恋人じゃない……そもそも好きでもない……国家の闇に潜む輩や、裏情報を貰う為に、何度か相手はしているがそれは国の為…ひいてはエルティーナの為。


 彼女が幸せに暮らせる国の手助けとなる為…仕方なくだ。


 エルティーナに男として見てもらえない以前に、アレンはフリゲルン伯爵とそもそも同じ舞台に立っていない。


 アレンはエルティーナの盾になる為に、何があってもこの身で守れるように騎士になったが、騎士になった事を後悔しそうだった…。


 十一年前に会った時、小さくガリガリに痩せていたアレンを『天使みたいね、綺麗』といった。


 エルティーナの好みはあれか?


 舞踏会でフリゲルン伯爵と踊っていたエルティーナはアレンの知らない人だった。エルティーナは小さくて可愛らしい感じの男が好みなのだろう。


 過去自分に向けられたエルティーナのあの台詞を、フリゲルン伯爵がもらうのか? 羨む気持ちが、激しい怒りにシフトしていく。


 言い訳をしてなんになるのか。


 そう頭では理解していても、アレンのエルティーナに向ける想いは止まることを知らず膨れ上がる一方だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ