第十六話 「母さんは実は娘萌えだったのよ!」
ファンクラブってなんだよ? 俺は夕飯の席で兄貴を問い詰めた。
「いやあ可愛い妹の魅力をもっとたくさんの人たちと共有したいと思ってな」
理解できない。俺のどこにそんな魅力が?見てくれはいいのは認めるが。
「ファンクラブか。よし父さんも会員になろう」
なるな。この日は父も早めに帰ってきていた。
「母さんも入ろうかしら」
頼むからやめてくれ。でも、ファンクラブって何するんだ?
「そうだな。お前の魅力に語り合ったり、俺が隠し撮りした映像や画像を鑑賞したり……」
気づいたら俺は兄貴の胸ぐらをつかんでいた。いま、なんつった?
「待て、顔が怖い。冗談だ」
本当だな?
「本当、本当」
だったら俺の目を見て話せ。
「俺がそんなことする兄だと思っているのか?お前は」
思っている。いままでのお前の悪行を見れば十分ありうる。兄貴があくまでも否定するので解放してやったが本当に冗談だろうか。一回、家捜しするか?前に兄貴の部屋に俺の写真が所狭しと張られていたのを見てドン引きして以来あそこには足を踏み入れていない。しかし、妹萌えという精神疾患を患った兄貴はともかくとして他の連中はなぜ俺に惹かれるんだ?それがわからない。しかも、女の子に。試しに母親に訊いてみた。母さん、女の人から見て俺って魅力ある?
「そうね。まず、美人でしょ。それとEカップの巨乳、見事なくびれ、髪ツヤツヤにお肌スベスベ、おまけにオッドアイ。もうわが娘ながら可愛くて食べちゃいたいくらいだわ。こないだなんか近所の奥様のお茶会で隠し撮りしたあなたの写真を皆で見て盛り上がったんだから」
ぶっ。な、なにやってんだよ母さん?
「ふっふっふ、甘いわね。母さんは実は娘萌えだったのよ!」
「あ、父さんもだぞ」
なに張り合ってんだよ。それより隠し撮りした写真を出せ。デジカメのデータもだ。
「出せるかしら?金庫の中に入ってるのよ?」
金庫?こないだ買ったアレか?大事なものを入れるからって…それのことか!?家族で盗撮ってエロDVDだけの話かと思ってた……。この金庫結構値がしたぞ?呆れた。もう何十回もこの言葉を口にしている。呆れ果てて物も言えん。でもいいんだ♪それも今日までだから。実はさっき皆には内緒で注文したある物が届いたのだ。部屋に戻るとそれを開封する。数日前たまたま読んでいた雑誌にあったすべての始まりともいえる忌々しき薬そうTS薬である。男を女にしてしまう恐るべき薬。ならばその逆も然りではないのかね?さっそく飲んでみる。えっと水に薄めるのか。台所に行ってコップに薬を入れて水に薄めてごっくん。そうこの味だ。よしこれで一晩立てば……。
翌朝、目を覚ました俺は恐る恐る胸と股間に手をやった。ない!そして、ある!!鏡で確認する。一ヶ月ぶりの本来の自分の姿。やった、男にもどったぞ!
『兄が妹萌えになりまして。』完