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兄が妹萌えになりまして。  作者: 池田中務少輔輝里
第Ⅲ章 "俺"→"私"
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第十四話 「いいえ、絶対に放しません!」

 時が止まった。金縛りにあったかのように俺は動くことができなかった。彼女も頭を下げたまま上げようとしない。えと…状況を確認する。これは告白?誰が?彼女が。誰に?俺に。……ひょっとして手紙の差出人は君?


「はい…」

 ようやく顔をあげた。かわいらしい娘だ。でも、確認はしないと。君は女の子…だよね?


「えっ?あ、はい」

 質問の趣旨がわからないといった感じだ。そりゃ見たらわかるけどさ。万が一ってあるじゃんか。まさか女の子に告白されるとは。なんで男の時に告白されないで女の時に告白されるんだよ。


「あの……ダメでしょうか?」

 子犬が哀願するような顔をされたら抱きしめたくなるのが人情。しかし、理性が俺を押しとどめる。こんなことは社会道徳的に許されるものではない。相手が女の子だったのは想定外だったか俺の返事は最初から決まっている。君の気持ちは嬉しいけど……。


「嫌です!」

 へっ?いきなり大声出されてびっくらこいた。きょとんとしているといきなり抱きつかれた。ちょっ…。


「嫌です。もう、私にはお姉さましかいません!」

 待て、お姉さまってなんだ?俺には妹はいないぞ。俺は彼女を引きはがそうとするが、ぎゅうっと抱きつかれていて離れない。いったいどうなってんだ?これがうわさに聞く百合っ子か?とにかく離れて。こんなところ誰かに見られたら大変だ。


「いいえ、絶対に放しません!」

 これは罰だろうか。人が心を込めて書いたラブレターを存外に扱った事への罰だとしたら謝ります。だから許して。


「ああ、お姉さま…立派なお胸ですぅ」

 背筋が凍る思いがした。やばい、この娘はやばい。何とかしてここから脱出せねば。俺は彼女を優しく抱擁した。


「ああお姉さま…」

 もう少しだ。俺はさらに頭を優しく撫でた。


「幸せですぅ。もっと撫でてくだしゃーい」

 よし、彼女の力が緩んだ。この瞬間を待っていた。俺は彼女を引きはがすと一目散に逃げた。


 翌朝、俺は委員長と登校した。


「ねえ、昨日はどうだった?」

 委員長も女だな。くだらない事に口をはさむ。俺は別にと答えた。本当の事なんかとても言えるもんじゃない。それにしてもあの百合っ子は俺に何を求めていたんだ?ひょっとして俺の中に残留する男的な何かを感じたとか?だとしたらまだ俺に男の魅力が残っていることになる。男のままだったら喜んでOKしたのに。


「…なに泣いてるの?」

 えっ?委員長が引いてる。思わず涙が出ていたようだ。いえね、世の中の理不尽を嘆いていたんだよ。校門が見えてきた。当直の先生に挨拶して校門を潜る。すると、


「お姉さま!」

 横から百合っ子が飛び出してきて抱きついたのだ。しまった、待ち伏せされた!?


「ひどいですぅお姉さま。昨日はなぜお逃げになったんですかぁ?」

「えっ?えっ?あなたたちそういう事だったの?」

 いかん委員長がとんでもない誤解をしている。待ってくれ、これは誤解なんだ。って、これじゃあまるで彼女に弁解しているみたいじゃないか。


「もう絶対に放しません」

 わかった、とにかく離れろ。皆が見てる。とにかく落ち着いて冷静になれ。必死の説得が功を奏したのか百合っ子はとりあえず俺から離れてくれた。しかし、あの様子じゃまた抱きつきにくるだろう。どうしたものか。俺は授業そっちのけでそのことについて考えた。かわいらしい娘だ。それが俺を好いてくれている。いきなりだったんで拒否したが、あの様子じゃ裸のお付き合いも視野に入れているだろう。初めて裸の女を抱けるチャンス。自慢ではないが俺は女と付き合ったことはあったが、最後まで行ったことはなかった。それがここに来て思いがけないチャンス。社会道徳?なにそれ?喰えるの?って冗談はここまでにして、俺は急速に女への性的欲求を無くしていた。男性機能が完全に喪失したからだろうか、女を抱きたいという意欲が湧かないのだ。その証拠に兄貴の部屋のエロ本に手をつけていない。これはどうせ妹物しかないだろうなという予測もあるんだが。

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