プロローグ 花子の登場
ピチャン、ピチャンッ。
水が滴る音が薄暗闇に広がる。
どうやら誰かがきちんと水道の蛇口を閉め忘れたらしい。全く、迷惑な奴もいたものだ。 その空間は月明かりと非常口の所在地を示す緑のライト、そして消火栓の赤いランプでボンヤリと不気味に照らされていた。
現在時刻はおそらく丑の初刻。長年の感でそれは何となく分かる。伊達に長く生きていない。
――いや、正確に言うと私は生きていない。生まれた記憶も無ければ、死んだ記憶すら無いのだ。
私は気付いたらここにいて、ある使命を持たされていた。それ以外に自分の事は何も知らない。
私はこの場所に閉じこめられている。こんな場所に閉じこめた奴を私は今恨んでいる。
だからここから脱出してやろうじゃないか。誰がなんと言おうとも今日こそ絶対にここを出てってやる。
――覚悟しとけっ!腑抜けどもっ!
私は心の中でそう叫ぶと、意を決して扉を開けそこを出た。
ピチャン、ピチャンッ。
水が滴る音が薄暗闇に広がる。
私はそんな音の根源である水道の蛇口を強く締めた。そして何かに怒りを示すように目を細める。
そんな水道の前には1つの鏡が取り付けられていた。そこには一人少女の姿が映る。
その少女の外見はとても可愛らしいものだった。年齢は10歳ほどのように見える。しかしその顔は何処か怒っているようで、頬がぷっくりと膨らんでいた。
そう、私の名前は花子だ。
私は小学生を恐怖のどん底に突き落とす――トイレの花子様だっ!




