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三月の卒業

作者: 嵩凪アリナ

今日、私の大好きな人が卒業してしまった。



その人は、私より2歳年上で、高校3年生。

私は高校1年生。



私は高校の入学式の日に、先輩に一目惚れした。



先輩は、いつも一人でいた。

休み時間も教室で本を読んでいた。



彼は、いつも同じ席に座っていた。

彼の席はいつも教室の窓側の一番前。



そんな先輩に私が一目惚れした理由は、


先輩の時々見せる悲しそうな顔がとても辛そうだったから。



いつも無表情の先輩が、時々見せるその顔は、先輩が見せる唯一の感情。

そして、唯一の先輩がそこに存在する証。


その表情をした先輩は、いつも遠くの空を見ていた。


噂では、

大好きだった彼女が事故で亡くなってしまった日から、

先輩はその感情しか出さなくなってしまったらしい。


事故は彼女が自転車で横断歩道を渡ろうした時、

急に車が飛び出してきたらしい。


先輩は守れなかった悔しさと、その場にいられなかった悔しさで

その表情しかしなくなったのだ。



でも、そんな表情も、もう見ることが出来ないのだ。



こんな事になるなんて、思ってもいなかった。


こんなことなら、思いを伝えとけばよかった。

 


まだ、三月になって、四日しか経っていないのに・・・



先輩は卒業してしまったのだ。


卒業式はまだまだ先なのに。



先輩は、


私の前から・・・・・・


学校から・・・・・・


この世から・・・・・・




もう何処にも先輩はいないのだ。



先輩は「人間」という枠から、卒業してしまったのだ。



先輩はもう何処にもいない。



教室にも、


学校にも、


図書室にも、


先輩の家にも


もう何処にも先輩はいないのだ。




先輩は死んでしまったのだ。


三月の三日、午後0時、


先輩は、


死んだのだ、



首を吊って。


自殺したのだ。


先輩が残したのは、一つだけ。


それは、手紙。


先輩が残した唯一のモノは、


私宛の手紙だった。


その手紙には、こう書かれていた。




「僕をいつも見ている君へ


 君はいつも僕のことを見ていたよね。

 僕はずっと気づいていたよ。

 君が僕を見る目はいつも心配している目だった。

 僕は君がいつ教室の僕を見にくるか、とても楽しみだった。

 君が僕を探さないように、僕はいつも教室にいたんだ。


 君がこの手紙を読んでいる時、僕は君の前にはいないと思う。

 僕は、もう君の前には現れないと思う。

 君と一緒に歩むことは出来ないと思う。

 ごめんね。

 

 最後に、君に出会えて良かったよ。

 君に出会った日から、僕は生きたいと思った。

 君がこの世に生まれて来てくれてありがとう。

 本当にありがとう。


 君が大好きだよ。李那。


                     立崎 壱」





この手紙を読んで、私の目からは大粒の涙が頬をつたっていた。


「何で死んじゃうのぉ!!!私も先輩の事が好きなのにぃ!!!!!」


私は、真っ暗な部屋でそう叫んだ。


先輩に聞こえるように。


そして私は、涙が枯れるまで泣き続けた。



彼はもう戻って来ることはないのに・・・・・・

やっと、1年間シリーズ第3弾の「三月」です。

今回は、悲恋を目標に書いて見ました。

でも、書き終わってから読んでみたら、微妙なことに気が付きました。

結果的には両思いになったのだけど、

死んじゃったし。

どうなんですか、この小説!?


     嵩凪アリナ

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― 新着の感想 ―
[一言] イイよぉ… 私的に好きだw
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