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地球人SHOW  作者: 銀河猿


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第17話 二日目の終わり

二日目、最後の支給品ボックスを回収し終えた頃には、体の奥に溜まった疲労をはっきりと自覚していた。

足が重い。

喉が乾く。

それ以上に、頭の奥がじんわりと鈍く痛む。

空は相変わらず、最初にこの世界で目を覚ましたときと同じ色をしている。

朝なのか、昼なのか、それとも夜に近づいているのか。

時間が進んでいる実感は、もうほとんどなかった。

分かるのは、疲労が確実に積み重なっていることと、

誰もが無駄口を叩かなくなっているという事実だけだった。

「……ここで一区切りにしよう」

湯浅さんがそう言って、その場に腰を下ろす。

俺たちもそれに続いて、それぞれ適当な場所に座り込んだ。

五人。

最初は二人だった。それが、いつの間にか五人になっている。

増えた人数分だけ、安心感もある。

同時に、守るものが増えたという現実もあった。

「二日目の最後がこれなら、悪くはないな」

湯浅さんは支給品の中身を確認しながら、軽い口調でそう言った。

冗談めいた言い方だが、無理をしているのは分かる。

場の空気を重くしないために、あえて喋っている。

現場監督らしい気遣いだった。

「食料は……まあ、数日は持つ」

「水も問題ない」

「回復系は少なめだな。無駄遣いはできない」

「都市地帯に入るなら、なおさらだな」

その一言で、全員の視線が自然と集まった。

次の移動先。

それが、今の一番の問題だった。

現在、俺たちは草原地帯のほぼ中心にいる。

「雨雲地帯は論外だろ」

「視界が悪いし、音も聞こえにくい。奇襲されたら終わりだ」

湯浅さんの言葉に、俺も頷いた。

最初は、だからこそ奇襲は起きにくいと思っていた。

だが、支給品ボックスには何が入っているか分からない。

もし、雨雲地帯で活動できる道具を、悪意ある人間が手にしていたら——

あそこは、一気に地獄になる。

快晴地帯は、正直もう近づきたくなかった。

王子だの、姫だの。

あの場所で起きている争いに、これ以上関わる気はない。

それに、貴重な爆音箱も一つ使ってしまった。

あれは、できれば最終日まで取っておきたい切り札だ。

「となると……都市地帯、か」

湯浅さんが地図を指でなぞる。

人工物が密集したエリア。

遮蔽物は多いが、その分、潜んでいる危険も多い。

殺人犯の件も、三人にはすでに話してあった。

「正直、二人や三人なら避けてた」

「でも、今は五人いる」

ちらりと、俺たちの顔を順番に見る。

丸本さんは無言のまま、周囲を警戒するように視線を動かしている。

余計なことは喋らないが、油断は一切していない。

矢尻さんは表情こそ平静を保っているが、手元の動きが少し硬い。

川上さんは話を聞きながら、時折その様子を気にしていた。

「五人いれば、都市地帯のリスクも分散できる」

「単独行動よりは、確実にマシだ」

誰も反論しなかった。

たぶん、全員が同じ結論に辿り着いていた。

《残り時間:05:04:12:56》

《生存人数:94》

「……三時間、休もう」

そう決めて、俺たちは短い休憩に入った。

完全な睡眠ではない。

交代で見張りを立てながらの、仮眠だ。

男性陣と女性陣に分かれ、それぞれ荷物を下ろす。

湯浅さんと今後の予定を軽く確認したが、

もう誰も生存人数の話はしなかった。

殺人犯の存在。

快晴地帯での紛争。

二日目にして、見すぎてしまったのかもしれない。

ふと女性陣の方を見ると、川上さんと矢尻さんが並んで座り、声を潜めて話していた。

その様子を、俺は少し離れたところから見ていた。

矢尻さんは、みんなの前では平気そうにしている。

でも分かる。

無意識に、肩に力が入り続けている。

俺は少し迷ってから、立ち上がった。

柄じゃないことをする自覚はあった。

それでも、足は自然と動いた。

「……矢尻さん」

声をかけると、少し驚いた顔でこちらを見る。

川上さんは空気を察したのか、さりげなく一歩引いた。

「大丈夫ですか」

そう聞くと、矢尻さんは一瞬だけ言葉に詰まり、

それから小さく笑った。

「大丈夫、だと思います」

「みんながいるし……」

その言い方が、逆に無理をしているように聞こえた。

「……俺がいます」

思っていたより、声は落ち着いていた。

「少なくとも、俺は矢尻さんを守ります」

「何かあったら、俺の後ろにいてください」

一瞬、沈黙が落ちる。

矢尻さんはきょとんとした顔で俺を見て、

それから、ふっと表情を緩めた。

「……ありがとうございます」

その声は、さっきまでより少し柔らかかった。

「信頼してるんですね」

不意に、川上さんがそう言った。

悪意はなく、ただ事実を確認するような口調だった。

「え……」

矢尻さんが少し照れたように視線を逸らす。

「こういう時、誰かがそう言ってくれるだけで、全然違うんですよ」

川上さんは穏やかに笑った。

その空気に、俺もそれ以上は何も言わず、軽く頷いてその場を離れた。

約三時間後。

《残り時間:05:01:01:32》

《生存人数:94》

全員が最低限の休息を取り、再び集まる。

「よし、行こう」

湯浅さんがそう言って立ち上がる。

丸本さんは無言で頷き、先行する位置についた。

川上さんと矢尻さんは並んで歩き、俺はその少し後ろにつく。

都市地帯へ。

空の色は、変わらない。

けれど、この先で何が起きるのかは、誰にも分からない。

ただ一つ確かなのは、

もう引き返すという選択肢はない、ということだけだった。

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