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地球人SHOW  作者: 銀河猿


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第16話「姫」赤井 由衣

アイドルにとって、全員に好かれる必要なんてない。

これは、私がいちばん最初に気づいたこと。

好かれる人と、嫌われる人。

その線引きは、曖昧にしちゃだめ。

中途半端に愛想を振りまくより、

「この子が好き」って思ってくれる人に、ちゃんと刺さる方がいい。

赤井由衣。

カラフルチアーズのセンター。

私は最初から、そう割り切ってアイドルをやってきた。

ぶりっ子って言われたこともあるし、

あざといとか、計算高いとか、

裏がありそう、なんて噂を流されたこともあった。

でもね、それでいいの。

嫌う人は、どうせ何をしても嫌う。

だったら最初から、相手にしなければいい。

好きでいてくれる人には、ちゃんと応える。

それだけで、十分だった。

握手会では、目を見て名前を呼ぶ。

SNSでは、ちょっと意味深な言葉を残す。

距離を縮める人と、越えさせない人は、きっちり分ける。

感情じゃない。

全部、考えた上でのこと。

その結果――

私を中心に、人が集まった。

グループの雰囲気も、自然と私基準で回り始めて、

気づいたら、誰も逆らわなくなっていた。

十九歳のとき、

私は人気アイドルグループのリーダーになった。

最年少で、異例。

そう言われたけど、正直、驚きはなかった。

だって当然でしょ?

私は誰よりも、人の気持ちの動かし方を知っていたんだから。

表では平等。

裏では、ちゃんと選ぶ。

誰かを殴らなくても、

誰かを傷つけなくても、

人は、思ったより簡単に動いてくれる。

――だから分かってる。

今、私の周りにいる人たちも、

あの頃と、何も変わらない。

ショーが始まったとき、

私は知らない場所で目を覚ました。

空はやけに澄んでいて、

世界がセットみたいに静かだった。

少し驚きはしたけど、パニックにはならなかった。

こういう時こそ、落ち着いている方が得。

周りを歩いて、話を聞いて、

自然に人を集めて、役割を振る。

気づけば、十五人ほどの男の人たちが、私の周りにいた。

「姫」

誰かが、そう呼んだ。

……悪くない。

むしろ、すごく都合がいい。

私が前に立って、

この人たちが盾になる。

危ない場所には、彼らが行く。

揉め事も、争いも、探索も。

私は、言葉を選んで指示するだけ。

彼らはそれを

「守ってる」とか

「仕えてる」とか、

勝手に勘違いしてくれる。

その勘違いが、いちばん使える。

快晴地帯に、もう一つの勢力ができたと聞いても、

特に焦りはなかった。

王子。

女の子を集めて、船を拠点にしている男。

ふふ、分かりやすいよね。

欲で動くタイプ。

正面から戦う気はない。

戦うのは、私じゃない。

戦うのは――この人たち。

「支給品、取りに行きましょう」

「王子側、動いてるみたいです」

そんな言葉で、男の人たちを前に出す。

その間に、私は集める。

食料。

水。

回復アイテム。

少しずつ、でも確実に。

だって最初から、決めてるから。

形勢が悪くなったら、

負けそうだと思ったら、

私は逃げる。

この人たちが戦っている間に、

私は、生き残る。

情?

そんなの、最初からない。

罪悪感?

別に、感じる理由もない。

アイドルの頃から、ずっとそうだったでしょ?

好かれる人と、切り捨てる人。

線を引くのは、私の得意分野。

王子と姫の戦争?

勝ち負け?

そんなの、どうでもいい。

……おかしい。

支給品回収に向かわせた男たちが、なかなか戻ってこない。

いつもなら、もう報告が上がってくる時間だ。

多少の遅れはあっても、

ここまで音沙汰がないのは珍しい。

さっきの、あの大きな音。

やっぱり、それと関係してるのかな。

私は、そばに残していたガード役の男たちに声をかけた。

「様子、見てきてくれる?」

できるだけ、いつも通りの笑顔で。

彼らは嬉しそうに頷いて、

モーターボートで走っていった。

――それから、しばらく。

戻ってきたのは、一人だけだった。

顔を真っ青にして、

信じられないものを見る目で、私を見る。

「……全滅、してました」

その瞬間、

胸の奥が、すっと冷えた。

全滅?

意味を理解するまで、少し時間がかかった。

王子側にやられた?

……違う。早すぎる。

「ここ、危険かも」

そう判断するのに、迷いはなかった。

私はすぐに、残っている男たちに指示を出す。

「無理しないで。みんなを回収して、状況を確認しよう」

声を、ほんの少しだけ低くして。

しばらくして、男たちは戻ってきた。

何人かは意識を取り戻し、自力で帰還したらしい。

王子側は、確かに動いていた。

でも――それだけじゃない。

「第三者が、いました」

若い男と、女の二人組。

支給品回収の最中に割り込んできて、

混乱したところを、一気にやられたという。

「爆発……というか、とにかく音が凄くて」

「近くにいた人間は、みんな倒れました」

……音?

私は、その言葉に引っかかった。

「どんな音?」

耳を塞ぎたくなるほどの爆音。

一瞬で、意識が飛ぶような衝撃。

正体不明。

でも、効果は絶大。

優勢だったはずの状況が、

第三者の介入で、ひっくり返された。

(やっぱり……あれ)

正直、苛立った。

同時に、少しだけ――ワクワクした。

……欲しい。

爆音が出るやつ。

名前も分からないけど、使えるのは確実。

王子より、厄介。

でも、だからこそ。

「早めに決着をつけよう。できれば、明日の最初の支給品ボックスで」

私は、男たちに微笑んで告げた。

「絶対、勝とうね。最後まで一緒に生き残ろ?」

その言葉で、彼らは安心した顔をする。

――大丈夫。

ちゃんと使ってあげるから。

王子との小競り合いを、長引かせる意味はない。

邪魔者は、早めに片付ける。

そのあとで――

あの二人組を追う。

爆音が出る“それ”を、奪う。

それがあれば、

このショーは、もっと楽になる。

最後に立っているのが誰かなんて、

最初から決まっている。

――私よ。

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