表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球人SHOW  作者: 銀河猿


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/16

第15話「王子」五十嵐 龍

ステージの照明は、いつも眩しかった。

名前を呼ばれ、笑顔を向ければ、

そこには無数の視線と期待があった。

何を言っても、何をしても、

「五十嵐 龍」である限り、それは肯定された。

楽だった。

同時に、息が詰まるほど窮屈でもあった。

だから俺は、女に逃げるようになった。

理由なんていらなかった。

求められる場所に、流されるだけでよかった。

――だが、いずれはバレる。

それは分かっていた。

案の定、しっかり写真を撮られた。

週刊誌に載り、今は活動休止中だ。

明日、社長に会いに行かなければならない。

下手をすれば、謝罪会見。

想像しただけで、ため息が出る。

めんどくさい。

そう思いながら、何も考えずにくつろいでいると、

目の前の景色が、ゆっくりと歪み始めた。

視界が白く染まり、

次の瞬間――すべてが反転した。

俺を閉じ込めるショーが静かに開幕した。

ショーが始まり、俺は草原地帯で目を覚ました。

空は妙に青く、風は静かで、現実感がない。

ここがどこなのか、何が起きているのか、しばらく理解できなかった。

当てもなく歩いていると、支給品ボックスを見つけた。

だが、そこにはすでに一人の女がいた。

俺の顔を見るなり、女は目を見開いた。

「もしかして、五十嵐 龍さんですか?」

……バレたか。

アイドルとしての知名度が、こんなところで邪魔になるとは思わなかった。

こうなった以上、一人で行動する選択肢は消えた。

俺はいつもの癖で、軽い口調と慣れた言葉を並べ、女に話しかけた。

結果的に、俺たちは一緒に行動することになった。

後から分かったことだが、そいつは地球では旦那持ちだったらしい。

旦那持ちと関係を持つと、ろくなことにならない。

それは、俺自身が一番よく知っていた。

だから、どこかで離れる機会を探しながら、必要以上に踏み込まない距離を保っていた。

一日後、俺たちは草原地帯に隣接する快晴地帯へと辿り着いた。

免許なんて持っていないから、移動は手漕ぎのボートだ。

支給品を回収しながら、慎重に動いていた。

そんなある時、支給品の中から鍵のようなものを見つけた。

その横には、紙が一枚添えられていた。

《これは岸にあるクルーズ船の鍵です。それでは良い旅を》

とりあえず、俺とその女の二人で船に乗り込むことにした。

――中は、想像以上だった。

快適。

食料以外のものは、ほぼすべて揃っている。

この船を拠点にすれば、ショーの間、楽に生きていける。

そう思った瞬間、考えが切り替わった。

一人で使うには、もったいない。

人を集めれば、もっと安定する。

俺は快晴地帯にいる女たちに、次から次へと声をかけた。

気づけば十人ほどになっていた。

誰かが俺を「王子」と呼び始め、その呼び名は自然と広まっていった。

快晴地帯を独占し、自分の王国を作る。

その考えは、いつの間にか俺の中に根付いていた。

だが、その中で一人だけ、はっきりと異を唱える女がいた。

最初に一緒に行動していた、あの女だ。

「独占は良くない」

「争いを生むだけ」

正論だ。

分かっていた。

だが、今の俺には邪魔だった。

とはいえ、無理に追い出せば、周りの女たちがどう思うか分からない。

すると、あいつは自分から言った。

「私は、あなたについていけない。ここで下ろして」

そう言って、快晴地帯から去っていった。

……まあ、あいつから出ていったのならいい。

あいつがいようがいまいが、もう俺には関係のない話だ。

――そして、時間は今に戻る。

いつものように、姫のお付きのオタクどもを大砲で追い返し、

支給品ボックスへ近づいた、その時だった。

ついてきた女が、小声で俺に告げる。

「……見知らぬ人がいますわ。お二人」

若い男と、女が一人ずつ。

その姿を見た瞬間、俺は最初の自分を思い出した。

見逃そうか。

一瞬、そんな考えもよぎる。

だが、もしあいつらが原因で王国が脅かされたら?

姫との戦争を控えた今、不安要素は排除すべきだ。

俺は、女たちに攻撃を指示した。

――その瞬間だった。

最悪のタイミングで、姫のオタクどもが全員戻ってきやがった。

焦った。

本気で、焦った。

その時、さっきの二人が目に入った。

……そうだ。

囮にすればいい。

俺はオタクどもに向かって叫んだ。

「あいつらが支給品を全部持っていった!」

嘘だった。

だが、躊躇はなかった。

撤収しようとした瞬間、

二人のうちの一人が、何かをこちらに向かって投げた。

次の瞬間、凄まじい激音。

声にならない悲鳴が、喉の奥で潰れた。

小舟にいた女どもは、全員気絶していた。

俺は一人で小舟を操り、必死でクルーズ船まで逃げ切った。

船に戻ると、女どもが一斉に集まってくる。

その光景に、理由の分からない苛立ちが込み上げた。

「うるさい! 少し一人にしてくれ」

気づけば、怒鳴っていた。

自室に戻り、ようやく一息つく。

これからの計画を考えなければならない。

久しぶりにマップを開く。

次の日の安全地帯予定が表示されていた。

――ギリギリ、快晴地帯は含まれている。

だが、二日後には、ここは安全地帯圏外になる。

……移動が必要だ。

俺は選択をしなければならない。

余計なものを落とし、必要なものだけを選ぶ。

この女ども全員を連れていくか。

それとも――。

しばらく考えた末、俺は決心した。

女どもを集め、静かに告げる。

「明日、一番最初の支給品ボックスが来たとき……

 そこで、あいつらを全滅させる」

もう、迷うつもりはなかった。

俺たち、いや俺だけでも必ず生き残る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ