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地球人SHOW  作者: 銀河猿


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11/18

第10話 危険すぎた選択

六時間後。

短い休息だったが、何もしないよりはましだった。

携帯端末の表示が、静かに切り替わる。

《残り時間:05:16:58:03》

《生存人数:96》

……また、減っている。

俺たちが眠っている間にも、どこかで誰かが死んだ。

この世界では、命は驚くほど軽い。

「……行きましょうか」

俺の声に、矢尻さんが静かにうなずいた。

夜明けのない空の下、俺たちは草原地帯を歩き始める。

背の低い草が一面に広がり、視界を遮るものはほとんどない。

隠れにくい。

だがその分、奇襲の心配も少なかった。

「次のエリア、本当に天気が荒れてるんですよね……」

「ええ。積乱雲が、ずっと広がっています」

指差した先には、黒く沈んだ空。

雲の奥が、不規則に白く光っていた。

(……雷)

危険なのは分かっている。

それでも、人が近づきにくい場所を選ぶしかなかった。

草原を進んでいると――

「……あれ」

矢尻さんが足を止める。

視線の先、草の中で金属がわずかに光っていた。

「支給品ボックス……?」

慎重に周囲を確認する。

人影はない。草の揺れも、風以外は感じられなかった。

「念のため、距離を取ってください」

俺が先に前へ出て、角度を変えながら確認する。

罠はない。気配もない。

ゆっくりとケースを開けた。

「……ほとんど、空ですね」

中に残っていたのは、わずかな包装材と――

黒い金属の塊。

「……銃?」

実弾銃だった。

弾倉は空で、予備弾も見当たらない。

(使い切られた……)

嫌な想像が、頭をよぎる。

「誰かが……使った後なんでしょうか」

矢尻さんの声が、少し震えていた。

「たぶん」

銃は道具だ。

だが、この世界では――人を殺すための最短ルートになる。

(ああいう人間の手に渡るくらいなら……)

俺は無言で銃を拾い上げ、バッグにしまった。

「谷口さん……使うんですか?」

「いいえ」

即答だった。

「使いません。でも、放置もしない」

矢尻さんは、少しだけ安心したように息を吐いた。

俺は支給品ボックスの蓋を開けたままにしておく。

これなら、すでに漁られたと思って誰も近づかないだろう。

それで、誰かの死が一つでも減るなら――

意味はある。

草原を抜け、積乱雲地帯へ足を踏み入れた瞬間。

叩きつけるような雨が、視界を白く染めた。

「……っ!」

風が体を横から押し流す。

足元が取られ、思わず踏ん張る。

雷鳴。

空が割れるような音。

「谷口さん……! これは……!」

矢尻さんの声は、雨音にかき消されかけていた。

体感でも、風速は二十メートル近い。

呼吸するだけで、体力が削られていく。

(生活どころじゃない……)

ここは、人が来ない代わりに――

人が、生きられない場所だった。

「矢尻さん! ここは無理です!」

俺は叫ぶ。

「予定変更! 快晴だったエリアへ向かいましょう!」

一瞬の迷い。

だが、矢尻さんはすぐにうなずいた。

「……はい!」

嵐を背に、俺たちは進路を変える。

危険を避けたつもりが、別の危険にぶつかる。

それでも――

生き延びるために、選び直す。

それが、今の俺たちにできる唯一の戦い方だった。

空の向こうで、雷がもう一度、光った。

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