↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/248

物語序章 第一版 92章

陸軍の規模拡大


海の向こうで都市が立ち、線路が伸び、港が眠りなく働き出した頃、

大地の上でも違う鼓動が高まり始めていた。


最初の陸軍は、開拓の先遣隊として始まった。

彼らはツルハシと斧を持ち、道を切り開き、鉄路を敷き、港の岸壁を打ち固めた。

移民の家々が並び、倉庫が積み上がり、街路に街灯がともると、

新たに暮らす人々は「自分たちの国ができた」と胸を張った。


だが、明賢は静かな危機感を抱いていた。

「港と線路を作る力は得た。しかし、もし大規模な陸上戦闘が起きたら──」

その言葉は、平和の風景の裏に潜む脆弱さを照らし出した。


陸軍の再編成


そこで陸軍は再編成された。

開拓と建設に特化した先遣隊の役割は尊重しつつ、

陸上戦闘部隊としての再編が命じられたのだ。


まず行われたのは役割の明確化だった。

道路・鉄道・港湾を作る工兵部隊は「支援部隊」として編制を固定し、

一方で戦闘に即応する歩兵・機械化部隊が独立した編制として整備された。

工兵は依然として前線のインフラを支えるが、彼らの指揮系統は別れ、

戦時には戦闘部隊の支援に即座に回れる体制が作られた。


訓練場では昼夜を問わぬ演習が始まった。

かつてはツルハシを振っていた若者たちが、今は射撃訓練に汗を流し、行進を繰り返す。

教練場の指揮官が声を張る。

「我々は道を作る者であって、同時にその道を守る者でもある!」


編成面でも根本的な変更が入る。

小規模で分散していた部隊は、戦闘単位として再結成され、

師団や旅団といった中核部隊が編成され始めた。

これらは機動力と持久力を重視し、鉄道による機動展開や道路を使った即応を前提に配備される。


兵站(ロジスティクス)も根幹から見直された。

補給路の確保、前線倉庫の配置、燃料と弾薬の蓄積――

これらは港と鉄道網と密に連携して設計され、

「戦うための国土インフラ」という新しい思想が生まれる。


教育面では、従来の軍学校に加え、新たな戦術学校や工兵学校が設立された。

砲兵の射撃理論、野戦工学、鉄道を活用した部隊運用法、補給管理など、

戦場を科学するための学びが導入される。教官は艦隊や開拓で実績を上げた将兵や技術者が兼務し、

実務経験と理論が混ざり合った教育が行われた。


指揮系統は簡潔に整えられた。

平時には地域防衛と開発支援を行い、有事には迅速に戦闘指揮下へ移行する──

その切り替えを可能にするため、通信網と司令部の運用プロトコルも作り直された。


町の人々の目には、変化は穏やかなものに映った。

門を守る兵士はかつてと同じ笑みを浮かべながら、夜の見廻りを続ける。

だが明け方の霧が晴れると、整然と並ぶ隊列と訓練場の轟音が新しい時代を告げた。


明賢は報告書に一行を添えた。

「我らはただ作るだけではない。作るものを守り抜くための力も同時に育てる。」


再編の号令が正式に下ったのは、東京の冬が終わりを迎えたころだった。

机上には、世界地図が広げられている。そこに赤い線で描かれたのは、

日本を中心に広がる新たな陸軍の指揮体制の構想だった。


「ここからは“守る陸軍”ではなく、“支える陸軍”として動かす。」

明賢はそう言って、地図の中央──東京に指を置いた。


東京本司令部の設立


日本の首都・東京。

ここに「日本陸軍総司令部」が設けられた。

この本司令部は、世界に広がるすべての陸軍師団を束ね、作戦・補給・教育・編成の最終決定権を持つ。

厚い鉄筋コンクリートで造られた建物には、各大陸の現地司令部と直結する有線通信線が通され、

遠く離れた地の報告を即座に受け取ることができた。


東京本司令部の傘下には、日本列島全域を網羅する11の師団が配備された。

それぞれは地域特性に合わせた防衛・補給・工兵・戦闘の複合部隊であり、

地理と気候、産業と交通を理解した上で配置された。

•関東師団(東京・横浜・千葉・埼玉)

•北陸師団(新潟・富山・石川)

•東北師団(仙台・青森・秋田)

•中部師団(名古屋・静岡・長野)

•北海道師団(札幌・旭川・函館)

•九州師団(博多・熊本・鹿児島)

•近畿師団(大阪・京都・神戸)

•山陽山陰師団(広島・岡山・松江)

•四国師団(高松・松山)

•琉球師団(那覇・宮古・石垣)

•台湾師団(台北・高雄)


それぞれの師団は、地元出身の兵士を中心に編成され、

「自らの土地を自らの手で守る」という思想のもと、士気の高さを誇った。


⸻


山番市陸軍司令部


次に作られたのが、太平洋の向こうの大陸、山番市司令部である。

この司令部は、広大な北米大陸全域と中南米の一部を管轄した。


山番市の丘の上に建つ本部庁舎は、

日本からの輸送船によって運ばれた鉄筋とコンクリートで築かれ、

通信塔が立ち、地下には発電設備と無線・有線の通信網が整っている。

部屋の壁には大陸全体の地図が貼られ、そこに各師団の印がびっしりと並ぶ。


その配下には、二十を超える師団が置かれた。

西海岸の都市から東部のノーフォークまで、

そして南のパナマや南端のフォークランド諸島まで。

海岸線をなぞるように師団が配置され、

大陸を守る「陸の鎖」を形作った。


山番市、サンディエゴ、バンクーバー、シアトル、ロサンゼルス、

ポートランド、アルバカーキ、カルガリー、サンアントニオ、ヒューストン、

カンザスシティ、ミネアポリス、シカゴ、クリーブランド、オタワ、

ケベックシティ、アトランタ、ニューオリンズ、ノーフォーク、

ジャクソンビル、マイアミ、チャールストン、ハリファックス、パナマ、フォークランド諸島──


この師団群の特徴は、どこも鉄道と港湾を中心に展開していることだ。

兵士だけでなく、工兵や補給部隊、通信兵が常に隣り合って動く。

一度命令が下れば、どの都市からでも即座に部隊が動ける仕組みだった。


⸻


シドニー陸軍司令部


最後に、南半球の雄、シドニー司令部。

ここはオーストラリアと南太平洋諸島を統括する基地である。


シドニー湾を見下ろす高台に、石造りの堂々たる司令部が建てられた。

南洋の暑さを防ぐため、厚い断熱壁と深い庇が特徴的だ。

ここには海軍とも連携する統合作戦室があり、

太平洋南部の防衛と輸送を一手に担っている。


配下には、シドニー・オークランド・メルボルン・ブリスベン・アデレード・パース・ダーウィン・ポートモレスビー・グアムの9師団が所属。

この地の師団は、防衛よりも支援と展開能力に重点を置き、

鉱山都市や港湾都市の守備、物資輸送、緊急派遣など多様な任務に就いていた。


⸻


こうして、三大陸に跨る陸軍の司令体制は形を成した。

東京、山番市、シドニー――

三つの都市は、それぞれの大地を繋ぐ三本柱となり、

陸軍の力は国土を超えて、世界規模で動き始めたのだった。


明賢は司令部の地図を見つめながら静かに言った。

「これでようやく、“世界に広がる日本”を守る骨格ができた。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。