物語序章 第一版 6章
第六章 黎明の礎 ―1594年―
転生からおよそ四年。
明賢の家は、相変わらず平凡な武家の家のように見える
しかし、裏手の工作所では相変わらず金属音が微かに響き、
部屋の窓からは少しだけ光が漏れる。
幼かった明賢の体は成長し、ようやく人並みに動けるようになっていた。
「ここからが、本当の始まりだ。」
そう呟きながら、彼は毎朝パソコンを開き、
未来の国を築くための計画書を更新していた。
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四人の成長
この四年間、彼の弟子たちは見違えるほどに成長していた。
清助
CNCや旋盤の操作に熟達し、
今では自ら設計から加工、組み立てまでを一人でこなせるほどの技術者となっていた。
明賢の設計図を理解するだけでなく、
改善点を提案することも増えている。
「この角度を変えれば効率が上がるのでは。」
「よい発想だ、清助。理屈を超える感覚が育っている。」
清助の手は油と鉄粉に染まり、
日々、未来の工学を形に変えていた。
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源太と佐吉
二人は理論と基礎の両面で進歩を遂げた。
国語や算数の範囲は完全に修得し、
中学から高校初級にかけての内容を学び始めていた。
源太は文章力を磨き、
記録や報告書をまとめる責任を担うようになった。
佐吉は実験や観察を好み、
物理や化学の理解に深くのめり込んでいる。
「これは……加熱で反応が変わるのか。」
「正解だ。理科は“なぜ”を追う学問だ。」
彼らは明賢の教育方針の試験台であり、
同時に未来の教育者候補でもあった。
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兄・忠明
そして兄・忠明は、ついに正式に武士として仕える身となった。
武芸の稽古を続けつつ、夜には勉強机に向かう日々。
剣と知識の両立を目指すその姿は、
家の中でもひときわ誇り高く映っていた。
「戦うために学ぶのではない。
学ぶことで、どう戦をなくすかを考えるためだ。」
彼は弟の理想を理解し、
いずれ国を支える柱となるべく歩み始めていた。
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明賢の鍛錬と国家構想
一方の明賢は、すでに頭の中で国家の基礎構造を完成させていた。
中央政府の仕組み、教育庁・科学庁・工業庁の分担、
税と通貨の流通、軍事と行政の統合計画――
それらをすべてデジタル上で整理し、
年齢に似つかわしくない精密な国家初期案を作り上げていた。
しかし同時に、彼は自分の体の弱さを痛感していた。
これからの激動の時代に耐えるためには、
知識だけでなく、行動する力が必要だと感じたのだ。
「いずれ戦国の武士たちと共に生きるには、
体力と精神も備えねばならない。」
彼は日の出とともに庭に出て、
毎朝の体力訓練を始めた。
走り、腕を鍛え、木刀を振る。
初めはすぐ息が上がったが、次第に体が慣れていった。
清助たちはその様子を見て笑った。
「明賢様が動いている……!」
「頭脳だけの方かと思えば、鍛えるのも怠らぬとは。」
「知を守るにも体が要る。
国家とは、心・体・理のすべてで成り立つものだ。」




