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物語序章 第一版 48章

日本国建機十二号 レール敷設車《鋼燕こうえん》 一世代型


 夜明け前の平野を、長い鉄の線が伸びていく。

 その先頭で、機械が軽やかに歌っていた。

 日本国建機十四号――レール敷設車《鋼燕》一世代型。


 この機械の目的はただ一つ。

 無数の枕木と鉄のレールを、正確な間隔で敷設していくこと。

 鉄道建設という国家の大動脈を形にするための“燕”であった。


 「速度、一定。敷設間隔、問題なし!」

 清助が確認すると、後方で源太が枕木の整列を見守る。

 鉄の爪がレールを持ち上げ、地面にそっと置くたびに、

 “カシャン、カシャン”と美しい音が鳴った。


 「まるで燕が鉄を運んでるみたいだ……」

 と作業員が呟く。

 その名の由来が、まさにこの光景だった。


 《鋼燕》は、機械式油圧と滑車機構を駆使した自動敷設機。

 作業速度は人力の十倍、精度は数段上。

 この建機の登場によって、鉄道網の拡張速度は爆発的に上がった。


 明賢は、朝日に光るレールを見つめながら言った。

 「この道は血管だ。日本という体を動かすための――鉄の血流だ。」


 やがて《鋼燕》は全国各地に配備され、

 主要街道と同様に都市と都市を繋ぐ“鉄の道”を築き上げた。

 《黒龍》が地を貫き、《鋼燕》が地を繋ぐ。

 その二機が共に動き出した時、日本国の基盤はついに完成へと踏み出した。


日本国建機十三号 アスファルトフィニッシャー《黒鷲こくしゅう》 一世代型


 地平線の向こうまで続く未舗装の道。

 そこを、ゆっくりと黒い巨鳥が這うように進んでいく。

 日本国建機十五号――アスファルトフィニッシャー《黒鷲》一世代型である。


 巨大なホッパーから吐き出される熱いアスファルトが、

 機械の腹部を通って均一に広がり、

 後方のスクリードでならされるたび、

 地面は滑らかな黒の絨毯へと変わっていった。


 「温度、安定。厚み五センチ、誤差なし!」

 清助が叫ぶと、運転台に座る源太が笑い返した。

 「黒い翼で地を覆うようだな!」

 その名の通り、《黒鷲》は空を飛ぶ代わりに地を滑る。


 舗装が終わった後を歩いた明賢は、

 足元の熱を感じながら静かに呟いた。

 「この道は未来へと続く滑走路だ。

  やがてここを、数百万の人が歩くだろう。」


 《黒鷲》の登場により、

 都市部の道路整備は一気に効率化された。

 主要街道は次々と黒く塗り替えられ、

 夜には電灯がその道筋を照らし出す。


 黒い翼が通った跡に、

 街と文明が生まれていった。



日本国建機十四号 ラインペインター《光条こうじょう》 一世代型


 舗装が終わった道を最後に飾るのは、一本の線だった。

 それを描くために誕生したのが、日本国建機十六号――ラインペインター《光条》一世代型。


 見た目は小柄な車両だが、その精密さはどの建機にも引けを取らない。

 前方の塗料ノズルから真っ直ぐな白線が引かれると、

 まるで夜明けの光が地上を走るようだった。


 「幅、十二センチ。直線誤差、ゼロ。」

 清助が目盛りを確認しながら頷く。

 源太が少し笑って言った。

 「これがあるだけで、車も人も迷わなくなるんだな。」


 《光条》は単なる塗装車ではなかった。

 塗料の乾燥機構を備え、反射材を混ぜることで、

 夜でもライトに照らされれば光るように設計されていた。

 道路の線が闇夜に浮かび上がる光景は、

 まるで未来への導線のように人々の胸を打った。


 明賢はその様子を見ながら静かに言った。

 「道が線を持つということは、文明が秩序を得たということだ。」


 《光条》が描く一本の白線。

 それは単なるペイントではなく、

 “人が人を導く道標”としての意味を持っていた。


 《黒鷲》が地を覆い、《光条》がその上に秩序を刻む。

 この二機が揃ったことで、

 日本の大地はようやく「完成された文明の顔」を持つことになった。

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