物語序章 第一版 246章
第一設計局
装軌式自走榴弾砲 試作2号車
第一設計局は、他設計局の試作結果を精査したうえで、
「無理をしないが、確実に要求を満たす」という方針を貫いた。
彼らにとって重要なのは性能の尖りではなく、
•前線で壊れない
•継続運用できる
•大量生産できる
という、明賢ドクトリンそのものであった。
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要求性能の達成状況
火力・継戦能力
•150mm榴弾砲
•完全自動装填装置
•即応弾35発
要求された搭載弾数を正確に満たし、
弾庫・装填系は戦車系車両との共通思想で設計されている。
連続射撃時の給弾信頼性も高く、
砲撃速度は常に一定に保たれる。
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機動力
•最高速度:62km/h
装軌式自走榴弾砲に求められた
「60km/h以上」という条件を達成。
急制動・旋回後でも再加速が安定しており、
撃って、逃げるという運用が現実的に可能となった。
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防御性能
•重機関銃弾に耐えるモジュラー装甲
第三設計局ほどの重装甲ではないが、
•小火器
•破片
•至近弾
に対して十分な防御を確保。
さらにモジュラー化により、
•被弾部位のみの交換
•任務に応じた装甲量調整
が可能となり、整備性と柔軟性が大幅に向上した。
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電子装備
•高度な電子戦・射撃統制システム
•データリンクによる同時弾着能力
観測・計算・射撃の一連の流れが自動化されており、
複数車両による斉射でも人為的遅延が発生しにくい。
「精密射撃」よりも
確実に弾を同時に落とすという砲兵本来の役割を重視した設計である。
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第一設計局の真骨頂:信頼性
モジュール化と共通化
•車体構造
•電装系
•足回り部品
•パワーパック周辺機器
これらは可能な限り他の工業製品と共通化されている。
結果として、
•部品点数の大幅削減
•整備時間の短縮
•補給の簡素化
が実現し、
前線で「動き続ける砲」としての完成度が極めて高い。
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パワーパック
第一設計局が最も力を注いだ部分。
•高重量でも確実に動く
•長時間運転に耐える
•過酷な環境でも性能低下が少ない
という条件をすべて満たし、
装軌式自走榴弾砲として初めて「完成した心臓部」を手に入れた。
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試作2号車は、
•火力
•継戦能力
•機動力
•防御力
•電子戦能力
•信頼性
•生産性
のすべてを過不足なく満たす稀有な存在となった。
突出した性能はないが、
「どの砲兵部隊に配備しても、必ず期待通りに働く」
という点で、
最も危険な前線に置ける自走榴弾砲である。
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ほぼ完成状態であったため、
•操作系の微調整
•電装の最適化
•生産ラインへの最終適合
といった少量の改良のみが加えられ、
本車は正式に制式採用される。
1式装軌自走150mm榴弾砲 量産型
1式装軌自走150mm榴弾砲は、
主力戦車と装輪式自走砲の間を埋める存在として設計された純然たる前線火力投射プラットフォームである。
要求されたのは突出した性能ではなく、
•止まらず
•撃ち続け
•確実に撤退できる
という、砲兵にとって最も重要な要素であった。
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車体・機動系
全長11m、重量50トンというサイズは、
150mm砲と35発の弾薬を搭載する装軌車両としては極めてバランスが取れている。
•出力750kWのパワーパックは余裕を持って設計され
•最高速度60km/hを安定して発揮
•不整地でも速度低下が緩やか
特筆すべきは加減速の素直さであり、
射撃後の即時撤退においてエンジンレスポンスの遅れがほとんどない。
これは第一設計局が得意とする
「ピーク性能を抑え、常用域を重視したパワーパック設計」によるものである。
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武装・火力運用
主武装
•50口径150mm榴弾砲
•自動装填装置
•即応弾薬35発
自動装填装置は高射程・高装薬弾に対応した堅牢な構造で、
連続射撃時でも装填テンポが乱れない。
35発という即応弾数は、
•数分間の集中火力投射
•同時弾着を含む斉射
•射撃後の即時撤退
を想定した実戦的な数値であり、
弾切れによる運用中断を最小限に抑えている。
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副武装
•1式軽機関銃
近接防御用として最小限に割り切られており、
本車両が「前に出て戦う存在ではない」ことを明確にしている。
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装甲・生存性
搭乗員区画は、
•重機関銃弾に耐えるモジュラー装甲
•破片・至近弾を想定した構造設計
を採用。
過剰な重装甲化は避けつつも、
•敵砲撃の至近弾
•歩兵からの攻撃
に対して十分な防護を確保している。
モジュラー式であるため、
•被害部分のみの交換
•任務に応じた装甲構成変更
が可能で、前線整備性が極めて高い。
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電子装備・射撃統制
•射撃統制装置
•データリンクによる同時弾着能力
観測・計算・射撃は完全に統合され、
複数車両が同一目標に対して時間差なく弾着させることができる。
精密誘導弾に頼らずとも、
「同じ場所に、同じ瞬間、十分な量の弾を落とす」
という砲兵の基本を、最も確実な形で実現している。
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補給・運用面の完成度
特に評価が高いのが、
•弾薬運搬車からの直接装填機構
これにより、
•砲の再補給時間が短縮
•補給中の露出時間が減少
•継続火力能力が飛躍的に向上
弾薬車と組み合わせることで、
事実上、持続的な火力拠点として運用可能となった。
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生産性と整備性
•共通部品の大量採用
•部品点数の削減
•モジュール単位での交換設計
これにより、
•生産ラインの立ち上げが容易
•故障率が低い
•整備兵の負担が軽減
「量産され、前線で使い倒されること」を前提とした、
非常に現実的な工業製品に仕上がっている。
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1式装軌自走150mm榴弾砲量産型は、
•派手さはない
•最先端でもない
しかし、
常に撃てる、必ず動く、確実に戻ってくる
という点において、
完成度という意味では最上位の自走榴弾砲である。
主力戦車が前線を切り開き、
装輪式自走砲が素早く火を届けるなら、
この車両は――
戦場に火力を定着させる存在だ




