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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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229/248

物語序章 第一版 229章

翌朝


夜が明けても、

炎は消えていなかった。


船倉の奥で燻り続ける熱が、

時折、赤い舌となって吐き出される。


消火は継続されていたが、

鎮火の兆しはない。


それどころか――

事態は悪化していた。



漂流開始


夜通しの放水と消火作業の間に、

貨物船はわずかずつ位置を変えていた。


解析班から報告が入る。


「海流に乗っています。

ゆっくりですが、南下しています」


湾口の外。

そこからさらに南。


このままでは沿岸へ寄せられる。



最悪の想定


もし――

燃え続けたまま座礁したら。

•船体構造が崩壊

•内部で蓄積した熱が一気に解放

•穀物粉塵と酸素が混合

•爆燃、もしくは爆発


その先にあるのは、

住宅街への延焼。


サンフランシスコ(山番市)沿岸部は、

すでに都市化が進んでいる。


一瞬の判断ミスが、

都市災害に直結する。



決断


指揮艦の作戦司令室。


静かな声で、

しかし迷いのない命令が出された。


「――曳航する」


鎮火はしていない。

だが、ここに留める方が危険。


「外洋へ曳航。

住居区域から引き離す」



応援要請


即座に命令が飛ぶ。

•タグボート2隻、追加要請

•消防艇は引き続き放水

•巡視艇は周辺海域を完全封鎖


数十分後、

2隻体制のタグボートが揃った。



命がけの作業


火が――

一瞬、弱まった。


そのわずかな隙を逃さない。


「今だ。乗り込め」


耐火装具を着た要員が

貨物船へ移乗する。


甲板は熱を帯び、

足元から熱気が立ち上る。


煙。

煤。

焦げた穀物の匂い。


視界は悪い。



曳航索の取り付け


曳航ポイントへ到達。


ロープを回し、

固定。


その間も――

消防艇は放水を止めない。


曳航索へも水がかけられる。

•燃え切らせないため

•強度低下を防ぐため


すべてが

秒単位の判断だった。



曳航開始


「張力、確認」


「曳航開始」


ゆっくりと、

ゆっくりと。


燃え続ける貨物船が、

動き出す。


炎を上げながら、黒煙を靡かせ

海へ引きずられていく異様な光景。


タグボート2隻。

消防艇4隻。

巡視艇多数。


一隻の燃える船を守るための艦隊。



外洋へ


速度は出せない。


曳航索の温度、

船体の歪み、

炎の動き。


すべてを監視しながら、

少しずつ、少しずつ。


目指すは――

外洋。


都市から、

人から、

遠ざけるために。


曳航は――

順調だった。


タグボートの推力は安定し、

消防艇の放水も途切れていない。


燃え続けてはいるが、

制御下にあるように見えた。


その時だった。



曳航開始から、およそ三十分。


貨物船の船体内部――

船倉の奥で、

圧力と温度が臨界点を越えた。


曳航による船体振動。

破断した区画。

そこから一気に流れ込む――

新鮮な空気。


そして。



爆発


ドン――ッ!!


鈍く、

しかし腹に響く衝撃。


船倉内部で、

穀物粉塵が一斉に燃え上がった。


爆燃。


完全な爆発ではない。

だが、

密閉空間に近かった船倉では十分だった。



破断


衝撃で――

曳航索が悲鳴を上げる。


水を浴び続けていたとはいえ、

高温と張力は限界を超えていた。


バンッ!!


ロープは破断。


張力を失った貨物船は、

再び自由になった。



再漂流


爆燃で船体はさらに歪み、

炎は勢いを増した。


貨物船は

再び海流に乗る。


南へ。

南へ。


海流に弄ばれ誰の制御も及ばない、

燃える巨大な漂流物。



現場指揮艇の艦橋。


一瞬、

誰も言葉を発しなかった。


全員が理解していた。


これ以上の消火・曳航は不可能



作戦司令部にて冷静な声が、

しかし重く響いた。


「……これ以上の消化は不可能、撃沈を決定する」


被害を最小限に抑えるための選択。


「このまま沿岸に近づけば、

人命に被害が出る」



応援要請


即座にホットラインが開かれる。


「こちら海上保安庁、山番市管区。

日本海軍へ応援要請。

炎上貨物船、制御不能、撃沈処理を求む」


数秒の沈黙の後、

応答が返る。



「了解」


「現在、

サンフランシスコ湾へ入港予定の

潜水艦が一隻ある」


「その艦を派遣する」



撃沈が確定したことが指揮艦から全艦へ通達された


消防艇は放水を続けながら、

距離を取る。


巡視艇は

さらに外周へ展開。


燃え盛る貨物船の向こうに、

太平洋が広がっている。

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