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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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227/248

物語序章 第一版 227章

400トン級消防艇 ― 海の火災に対する最後の切り札


それは艦砲も、小型艇も持たない。

だが、炎の前では

この船以上に頼りにされる存在はなかった。



存在意義 ― 炎と煙の中へ入る艦


大規模艦隊がどれほど整備されても、

港で、海峡で、航路上で――

火災は必ず起きる。

•弾薬を積んだ軍艦

•原油を満載した大型タンカー

•可燃物に囲まれた港湾施設


それらが燃え始めた瞬間、

通常の艦艇は距離を取らざるを得ない。


だがこの船だけは違った。


400トン級消防艇は

「近づくこと」そのものを任務として設計されている。



船体 ― 安定性を最優先した設計


全長40メートル、全幅13メートル。

排水量400トン。


寸法以上に特徴的なのは、

異様なまでの横安定性だった。

•幅広の船型

•低重心配置

•放水反動を想定した構造補強


数十トン毎分の放水を行っても、

船体はほとんど揺れない。


これは「航走性能」ではなく、

消火中の踏ん張りを最優先した結果だった。



機関 ― 消火のための三基構成


ディーゼルエンジン 3基。

•推進用 ×2基

•ポンプ専用兼非常用 ×1基


この構成が、この艇の性格を決定づけている。


旋回可能な可変ピッチプロペラにより、

•微速前進

•横移動に近い挙動

•放水中の姿勢保持


が可能。


そして最大の特徴は、

ポンプ用エンジンが推進と完全に独立していること。


仮に推進系が損傷しても、

消火能力は失われない。



放水装備 ― 圧倒的な「水の兵装」


この艇の武装はすべて「水」だった。


主放水系

•上部放水砲 ×2

•伸縮式放水砲 ×2

•甲板放水砲 ×2


これにより、

•高所構造物

•船体側面

•甲板火災

•密閉区画への注入


すべてに対応可能。


自衛用放水銃

•×6基


高温から船体を守り、

火炎・破片・熱風を押し返す。


特殊消火用放水砲

•×1基


ここから噴射されるのは水だけではない。

•液体消火剤

•粉末消火剤

(窒息消火用)


特に泡は、

タンカー火災への有効手段として設計された。



電子装備 ― 見るため、近づくため


電子装備は簡素だが目的に特化している。

•航海用レーダー

•高精度監視カメラ


煙の向こう、炎の奥。

視界がゼロになる現場で、

カメラが唯一の目となる。


見失わないことが最重要だった。



特殊装備 ― 救うための力


後部には

船舶牽引用ロープが搭載されている。

•漂流する船

•港湾施設に衝突しそうな船

•操舵不能に陥った大型船


炎を消すだけでは終わらない。

危険区域から引き離すことまでが任務だった。



唯一の存在


この400トン級消防艇は、

•海上保安庁に配備された

•唯一の専用消防艇


である。

火災が起きたとき最後まで現場に残るのはこの船だった



この艇は「艦」ではない。

だが、


船舶が安心して活動できる理由

その一端を確実に支えていた。


砲声の裏で、

煙と熱の中で、

誰にも見られず働く船。


400トン級消防艇は、

海の裏方にして、最前線だった。


日本の海は、もはや「青い空白」ではなかった。


外洋、沿岸、港湾、河川、運河、湖沼――

あらゆる水面には、必ず誰かの目と手が届いている。


それを担っているのが、

刷新された海上保安庁であった。



多様な任務、多様な船


海上保安庁の艦艇は、

戦うためだけの艦ではない。


守る・測る・調べる・止める・救う

そのために特化した船は、数え切れないほど存在した。



油回収船

座礁事故、衝突事故、タンカーの漏洩。

海を殺す黒い油を、

黙々と回収し続ける船。


静かな作業だが、

放置すれば沿岸漁業も港湾も壊滅する。

この船は、災害の「拡大」を止める存在だった。



放射能調査船

原子力艦が当たり前になった時代だからこそ、

目に見えない脅威を測る船が必要だった。


海水、海底、海産物。

異常があれば即座に報告され、

軍と行政の両方が動く。


この船は

恐怖ではなく、数値を持ち帰る。



浮標業務船

航路を示す浮標を設置し、修理し、回収する。


誰も気に留めないが、

浮標が一つ失われれば、

その海域は一夜にして危険地帯になる。


海の「道」を維持する、

極めて重要な仕事だった。



漁業取締船

密漁、違法操業、他国船の侵入。


砲ではなく、

法律と記録で海を守る船。


漁民からは頼られ、

違法者からは恐れられた。



取締艇・警備船

港湾、河口、運河、要所。


高速で、数が多く、

昼夜を問わず巡回する。


大きな事件の多くは、

この小さな船が最初に発見していた。



海底調査船

海底地形、ケーブル、沈没物、未知の構造物。


軍事とも学術ともつかないが、

どちらにも不可欠。


日本の海を

「理解する」ための船だった。



タグボート

巨大な船は、自分だけでは動けない。


港で、運河で、狭水道で、

黙って力を貸す。


事故を未然に防ぐ、

最も地味で、最も重要な存在。



16000隻を超える「日常の艦隊」


これらすべてを合わせると、

海上保安庁が保有・運用する船は

1万隻を超える。


それらは、

•日本の支配海域

•河川

•運河

•湖沼


を、

一日も休まず巡回している。



戦争の裏側で


戦艦が威容を誇り、

空母が空を制し、

潜水艦が海の底を支配していても――


それらが安心して存在できるのは、

この無数の船が

平時を維持しているからだった。


海上保安庁は、

戦争の主役ではない。


だが、


戦争が起きない状態

あるいは

起きても社会が崩れない状態


を作り続ける組織だった。



静かに、

確実に、

今日もまた一隻が港を出る。


誰も拍手はしない。

だが、その航跡の上に

国家の秩序が成り立っていた。

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