物語序章 第一版 219章
巡洋艦という解
時代が進むにつれ、
日本海軍の艦隊編成思想は明確になっていった。
原子力戦艦――
圧倒的な威容と火力を誇る存在。
しかしそれは、
常に前面に立たせるには重すぎる剣でもあった。
建造コスト、運用負荷、
そして政治的・外交的な重み。
この時代において、
戦艦は「見せる力」であり、
「切る力」ではなかった。
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主戦力の再定義
そこで再定義されたのが、
巡洋艦という艦種である。
・戦艦ほど巨大ではない
・駆逐艦よりもはるかに強力
・空母を守り、艦隊を率い、単独行動も可能
まさに
艦隊の背骨。
日本海軍は巡洋艦を、
単なる中型艦とは考えなかった。
「巡洋艦こそが、艦隊運用の基本単位である」
そう位置づけられたのである。
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二つの巡洋艦
この思想のもと、
二種類の巡洋艦が計画される。
あたご型重巡洋艦
・強力な対水上火力
・高い防御力
・空母機動艦隊の中核随伴艦
空母の盾であり、
必要とあらば剣にもなる存在。
空母の横に並び立ち、
敵艦隊に対して圧力をかける。
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てんりゅう型軽巡洋艦
・高速
・指揮能力重視
・駆逐艦隊や護衛艦隊の旗艦
軽巡という名称ではあるが、
その中身は指揮艦そのものだった。
駆逐艦の速度に完全に追従し、
艦隊を束ね、戦場を整理する。
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旗艦としての巡洋艦
両型に共通する思想がある。
それは――
単艦で艦隊旗艦になれること。
そのため巡洋艦には、
・高性能CIC
・多重通信設備
・陸海空共通リンク
・独立した指揮区画
・冗長化された電源とコンピューター
が標準装備される。
戦艦が不在でも、
空母が後方に下がっても、
艦隊は止まらない。
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速度への執念
もう一つの重要な要素は、速度だった。
この時代の艦隊戦は、
帆船が主力なため速度が命である。
空母、駆逐艦、潜水艦――
すべてが機動力を前提としている。
巡洋艦だけが遅れては意味がない。
そのため、
・高出力機関
・統合電気推進
・流体抵抗を極限まで抑えた船体
が徹底的に追求された。
巡洋艦は、
重くても速くなければならなかった。
あたご型重巡洋艦 ― 艦隊の拳
日本海軍が巡洋艦を「主戦力」と再定義したとき、
最初に形となったのがあたご型重巡洋艦であった。
戦艦ほど誇示的ではなく、
駆逐艦ほど軽くもない。
だが、ひとたび戦場に出れば、
確実に敵の注意を引きつけ、叩き潰す力を持つ。
それが、あたご型の役割である。
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船体と推進 ― 速力への執念
全長210m、全幅23m。
排水量17000t。
17世紀の海を走る艦としては異様な存在だった。
船体は徹底して水線抵抗を抑える設計がなされ、
艦首は鋭く、艦尾は流れるように絞り込まれている。
推進方式は統合電気推進。
2基のガスタービンエンジンが発電し、
70000kwという膨大な電力を生み出す。
それは直接スクリューを回さない。
一度すべて電力へと変換され、
精密制御された電動モーターによって推進力へ変えられる。
この方式により、
・低速域での静粛性
・高速域での爆発的加速
・機関配置の自由度
が確保された。
最大速力は60km/h。
これは空母に完全に追従し、
場合によっては先頭に立つ速さである。
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主武装 ― 200mm連装砲
あたご型の象徴は、
艦の前後に配置された連装200mm砲4基8門である。
この砲は単なる大口径砲ではない。
・高初速
・精密な射撃管制
・データリンクによる外部照準
を前提として設計されていた。
目標は必ずしも視認されない。
索敵は空母機、無人機、潜水艦、衛星から送られてくる。
あたごはそれを受け取り、
見えない敵を撃つ。
対艦戦闘では敵巡洋艦を、
対地では港湾や陣地を、
支援砲撃では上陸部隊の前面を粉砕する。
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多層防空 ― 生き残るための装備
近接防御も徹底されている。
・120mm速射砲
・40mm機関砲
・20mm多銃身機関砲
これらはすべて射撃管制システムと連動し、
自動追尾・自動射撃が可能。
さらにVLS40セル。
対空ミサイル、対艦ミサイル、対地攻撃用弾頭など、
任務に応じて柔軟に搭載される。
あたご型は単艦で、
「簡易防空圏」
を形成できる能力を持っていた。
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電子装備 ― 見て、聞いて、考える艦
艦橋の奥深く、
分厚い隔壁に守られたCIC。
そこには、
・フェイズドアレイレーダー
・対水上レーダー
・アクティブソーナー
・衛星通信アンテナ
・位置誘導アンテナ
からの情報が集約される。
艦内のコンピューターは常に状況を更新し、
敵味方の位置、速度、予測進路を表示する。
あたご型は単なる「撃つ艦」ではない。
考える艦であり、
状況によっては艦隊全体の指揮を引き受ける。
CICには艦隊指揮機能が付与されており、
駆逐艦隊や補助艦を束ねることが可能だった。
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防御思想 ― 破壊されにくい艦
装甲は一枚ではない。
・セラミック
・燃料タンク
・鋼板
・バラストタンク
・VLSセル
これらを意図的に挟み込む複合装甲構造。
一部が貫通されても、
エネルギーは分散され、
致命傷になりにくい。
区画は細かく分けられ、
損傷時には自動で閉鎖される。
あたご型は、
「一撃で沈まないこと」
を何よりも重視して設計されていた。
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あたご型の立ち位置
戦艦が外交の象徴なら、
あたご型は現実の戦場の象徴だった。
空母の横に立ち、
敵を睨み、
必要とあらば真っ先に火を吹く。
常に前線にいることを宿命づけられた艦。
それが、
あたご型重巡洋艦である。




