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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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217/248

物語序章 第一版 217章

大和型超大型原子力戦艦


それは「戦艦」と呼ばれてはいたが、

誰もそれを純粋な戦闘艦だとは考えていなかった。


計画名――大和。



構想


長門型が世界に姿を見せた直後、

海軍中枢と工学研究部門の間で、ある結論が共有された。


「限界を知らねば、次の世代は作れない」


戦場で使う艦ではない。

外交のための艦でもない。


技術の天井を叩くための艦。


それが、大和型の本質だった。



建造


建造地は拡張された専用造船区画。

既存のドックでは収まらず、

海そのものを囲い込む形で造船所が作られた。


全長380m

全幅40m

排水量70000t


長門を見慣れた技師たちでさえ、

その船体を前にして声を失った。


「……まるで城だな」


鋼鉄の城が、

ゆっくりと形を成していく。



動力と心臓


四基の原子炉が据え付けられる。


電力は推進だけでなく、

技術そのものを動かすために使われる。


艦内に張り巡らされた電力系統は複数に分かれ、

どれか一つが失われても、

艦は機能を止めない。


原子炉の低く安定した鼓動は、

この巨大艦を「強固な存在」にしていた。



砲と沈黙


主砲――

500mm砲。


前世にも存在しなかった口径の艦砲。


だが攻撃のためではない。

「作れるか」を確かめるための砲だった。


砲身の応力、

反動制御、

射撃時の電力変動。


すべてが記録され、

次の兵器へとつながっていく。


艦内では、こう囁かれていた。


「大和が撃つ砲弾は、未来へ飛ぶ」



艦内中枢


CICは、もはや作戦室ではない。


陸・海・空、

すべての情報が集まり、

統合され、

演算される。


そこに設置されたスーパーコンピューターは、

戦争司令部そのものを艦内に成立させる力を持っていた。


「これは艦ではない

――浮かぶ研究都市だ」



防御という思想


装甲は分厚いが、

それ以上に賢い。


区画は細かく分断され、

損傷が発生すれば自動で隔離される。


沈まないための工夫は、

「当たらない」ことよりも重視されていた。


なぜなら――

沈めてはならない艦だったからだ。



実験艦として


大和は、前線に立たない。


新型レーダー、

電子妨害装置、

衛星連携、

新世代兵器。


まず搭載され、

試され、

壊され、

改良される。


「失敗していいのは、大和だけだ」


そう言われるほど、

すべての実験はこの艦を通過した。



戦闘向きではない。

回頭は鈍く、

被弾すれば修復に時間がかかる。


だが、

この艦がなければ生まれない技術がある。


大和は、

未来の艦艇たちにとっての

「母艦」だった。


大和型超大型原子力戦艦


一番艦 大和


呉の造船所で、大和は生まれた。


それは進水式というより、

巨大な実験施設が海へ移動した瞬間だった。


鋼鉄の船体は静かに浮かび、

煙も蒸気も上げないまま、

ただ原子炉の低い振動だけが艦内を満たしていた。



就役後


竣工と同時に、大和は戦力として数えられなかった。


配属先は前線ではなく、

海軍技術研究本部と直結した技術実証艦指定。


・新型フェイズドアレイレーダー

・艦内統合電力制御

・新型射撃管制システム

・VLSの運用試験

・電磁妨害対策

・複合装甲の被弾再現実験


次々と装備が載せられ、

次々と外され、

艦内は常に工事中だった。


「大和は完成しない艦だ」


それが合言葉だった。



技術的役割


大和は実用化直前の技術を受け持つ。


・現場で使えるか

・兵員が扱えるか

・故障した時に復旧できるか


理論ではなく、

実際に海の上で使えるかどうかを検証する。


艦内には常時、

技師・研究員・解析官が乗艦し、

乗員数は戦艦としては異様なほど多かった。


「大和は艦であり、教科書である」



四基の原子炉は余裕があったが、

それでも「未来」をすべては賄えなかった。


高出力兵器を同時に稼働させると、

レーダー系統に一瞬の電力揺らぎが出る。


それは致命的ではないが、

理想ではなかった。


そこで、

次の艦の構想が始まる。



二番艦 武蔵


横須賀で建造された武蔵は、

最初から性格が違った。


「これは実用艦ではない」


設計段階で、

そう明言されていた。



設計思想


武蔵は研究者の欲望そのものだった。


・原子炉 五基搭載

・総発電能力 160,000kW

・高エネルギー兵器同時稼働前提

・電力余剰を常に確保


「足りないかもしれない」ではなく、

「余る前提」で作られた艦。


艦内電力網はさらに細分化され、

一部区画だけで都市一つ分の電力を扱える。



実験内容


武蔵では、

大和では“できなかったこと”が行われた。


・高出力レーダー常時稼働

・電子妨害と探知の同時最大出力

・試験用レーザー兵器の連続照射

・複数砲塔の同時最大電力射撃

・将来型電磁砲の模擬負荷試験


艦内の記録装置は、

常に限界値を書き換えていく。


「武蔵は答えを出す艦ではない

問題を作る艦だ」



技術者たち


武蔵には、

若手から第一線の研究者までが集められた。


失敗してもいい。

壊してもいい。


ただし――

理由を記録しろ。


艦内には実験ログ専用のデータサーバーがあり、

武蔵が動くたびに

未来の艦艇設計図が書き換えられていった。



大和が「使えるか」を示し、

武蔵が「どこまで行けるか」を示す。


この二隻によって、

日本海軍の艦艇設計は

300年先の技術を先取りして進むことになった。



海に浮かぶ二つの異形。


一つは現実のために。

一つは夢のために。


そして両方が揃って初めて、

次の時代の艦が生まれるのだった。

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