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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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206/248

物語序章 第一版 206章

任務完了


南極点到達。

沿岸基地完成。

内陸基地設営。


――第1次南極観測隊の主要任務は、すべて達成された。


残るのは撤退のみ。


誰もが理解していた。

この地の冬を越えるには、

まだ人類の装備も経験も足りない。


氷点下80度。

数か月続く闇。

風と雪が全てを削り取る季節。


「今回は、ここまでだ」


それは敗北ではない。

次に繋ぐための布石だった。



内陸基地の封鎖


内陸観測基地。


最後の点検が行われる。


発電機停止。

燃料遮断。

通信機は待機モードへ。


観測装置は、

最低限の自律記録状態に移行された。


ゆっくりと扉に手をかける。


重い金属音。


ガン――


扉が閉じられ、

ロックがかかる。


白い大地の中に、

静かに眠る基地。


「……また来る」


誰ともなく、

そう呟いた。



帰路


雪上車の隊列は、

再び沿岸へ向かう。


来る時よりも、

確実に速かった。


理由は単純だ。


彼らは、もう道を知っている。


電波灯台。

地形。

風向き。


全てが、

次の調査のためのデータとして

蓄積されていた。


数日後、

白い水平線の向こうに

宗谷のシルエットが見えた。



沿岸基地


沿岸基地では、

すでに撤退作業が始まっていた。


クレーンが動き、

コンテナが吊り上げられる。


研究機材。

記録媒体。

故障した部品。


必要なものだけが、

宗谷へと積み込まれていく。


一方で――

残されるものもあった。


雪上車数両。

予備燃料。

非常食。

簡易工具。


全ては、

次の観測隊のため。


基地は完全撤去ではなく、

「休眠状態」とされた。



痕跡を消す


不要な資材。

破損した梱包材。

生活ゴミ。


それらは一つ残らず回収され、

宗谷の貨物倉へ運び込まれる。


明賢の指示は、

出発前から明確だった。


「南極に、人のゴミを残すな」


この地は、

まだ世界に知られていない。


余計な痕跡は、

未来の選択肢を狭めるだけだった。



最後の確認


撤退直前。


沿岸基地の屋上。


通信アンテナが風に揺れる中、

最後の無線が送信された。


「第1次南極観測隊、撤退準備完了」


短い電文。


だがその裏には、

数年分の計画と、

数十年分の未来が詰まっていた。



出航


宗谷は、

ゆっくりとモーターを回し始める。


原子炉は安定稼働。

発電量は十分。


氷を割りながら、

船は北へ向きを変えた。


白い大陸は、

次第に遠ざかっていく。


だが、

誰一人として

それを「別れ」だとは思っていなかった。



第1次南極観測隊は、

確かに帰還する。


だが――

南極は、もう終わらない。


基地は眠り、

観測機器は静かに記録を続け、

次の時代を待っている。


第1次南極観測隊と宗谷の帰還


宗谷は、

氷の海を抜け、

再び外洋へと出た。


南極海の荒波は、

往路ほどではなかったが、

それでも容赦はない。


だが船内の空気は、

明らかに違っていた。


誰もが疲労していた。

だが同時に、

やり遂げた者だけが持つ静かな充足があった。


原子炉は終始安定。

電気推進は何度全身後退を繰り返してもほぼ性能を落とさず、

機関科は膨大な運用データを取得していた。


宗谷はメルボルンに寄港し、

最小限の補給のみを行った後、

そのまま日本へ向かった。



帰還


東京湾。


汽笛は、

南極へ向かった時よりも短く、

控えめに鳴らされた。


華々しい出迎えはない。

凱旋でも、英雄行進でもない。


ただ、

埠頭に静かに接岸する。


第1次南極観測隊の帰還は、

世界中には公表されない帰還だった。


だが、

船から降ろされるコンテナ一つ一つが、

この航海の重さを物語っていた。



蓄積されたもの


帰還と同時に、

帝国大学、海軍、工業省、資源庁、宇宙研究部門――

複数の組織が動き始める。


宗谷の航海は、

単なる探検ではなかった。


巨大な実証実験だった。



南極の気候調査

•気温推移

•風速・風向

•気圧変動

•白夜・極夜の影響


これらは詳細な時系列データとして整理され、

南極の季節変動モデルが構築され始める。


「南極は未知」ではなく、

「計算可能な環境」へと変わっていった。



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