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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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205/248

物語序章 第一版 205章

基地建設開始


残った人員は、

すぐに作業へ移る。


停止すれば、

身体は冷える。

考えるより先に、

動く必要があった。


まずは整地。


スコップと削岩工具で、

表面の柔らかい雪を削る。


数十センチ下に、

硬く締まった氷床が現れる。


「ここでいい」


隊長が判断する。



氷の基礎


通常なら、

コンクリートを打設する。


だがここでは、

氷こそが最良の基礎だった。


削り出された氷面は平坦に整えられ、

滑り止めの溝が刻まれる。


氷は、

この気温では溶けない。


何年経っても、動かない土台だ。



モジュール展開


基地モジュールの外装が開かれ、

内部構造が展開されていく。


ボルト。

ロック。

補強フレーム。


手袋越しでは

細かい作業が難しい。


一人が手袋を外した。


数秒で、

指先が焼けるように痛む。


すぐに手袋をはめ直し、

彼は作業を続けた。



組み上がる拠点


数時間後、

氷の上に

四角い影が生まれる。


白一色の世界に、

人工物が立った。


小さい。

だが確実に、

人類の拠点だった。



発電機が回る。


低い唸りが、

静寂を破る。


照明が点灯し、

白い内壁が現れる。


暖房が入り、

わずかに空気が揺れた。


温度計の針が、

ゆっくりと上がる。


誰かが、

深く息を吐いた。



南極点を前にして


基地は完成した。


外は吹雪。

視界は数十メートル。


だが、

全員が分かっていた。


ここから先は、

人類未踏の領域だ。


南極点は、

すぐそこにある。


だが、

一歩一歩が、

命を削る距離だった。


南極点へ


基地を背に、

数名が1台の雪上車へ乗り込んだ。


エンジンが始動し、

白い大地をゆっくりと進み出す。


進む方向はただ一つ。

地図の終点。



数十分後。


先頭車両の観測員が、

計器を覗き込み、声を上げた。


「……ここだ」


コンパスの針が、

落ち着きなく揺れている。


一定の方向を指さず、

円を描くように回り始めた。


誰もが悟った。


「来たな……」



南極点


雪上車は停止した。


周囲は、

どこを見ても同じ風景。


だが、

計器だけが、

ここが特別な場所だと告げている。


磁針は、

方向を失っていた。


ここが――

地球の南の極点。



ポール設置


作業は迅速に行われた。


ドリルが氷を穿つ。


甲高い音が、

極地の静寂に響く。


氷は硬く、

だが割れない。


十分な深さまで掘り進め、

鋼製のポールが

ゆっくりと差し込まれた。


数人が支え、

確実に固定する。



刻まれる歴史


プレートが取り出される。


そこには、

はっきりと文字が刻まれていた。


1641年1月14日

南極点到達

第1次南極観測隊


一人が、

ポールにプレートをはめ込んだ。


金属が触れ合う、

乾いた音。


その瞬間、

誰も言葉を発しなかった。



静かな達成


風が吹き、

雪が舞う。


だがその場には、

確かに“人類の足跡”があった。


誰かが、

低く呟いた。


「……ついた」


それだけで、

十分だった。



観測開始


数日間、

南極点付近で作業が続けられた。


気象観測装置。

地磁気測定器。

氷床コア採取。


装置は、

極寒に耐えるよう

慎重に設置されていく。


データは逐一記録され、

基地へ送信された。



帰路


全ての作業を終え、

雪上車は向きを変える。


南極点は、

再び静寂に包まれた。


ポールだけが、

白い世界に立ち続ける。


人類が、

ここへ到達した証として。



雪上車は、

内陸基地へと

ゆっくり走り去っていった。


彼らはまだ知らない。


この日が――

日本が南極に刻んだ最初の一行として、

後世に語り継がれることを。


内陸基地へ


雪上車は、

白い平原を切り裂くように進み続けた。


来た時と同じ道。

だが、意味はまったく違う。


彼らは――

辿り着いた者たちだった。


内陸基地の影が、

吹雪の合間に見えたとき、

誰かが大きく息を吐いた。


「……帰ってきたな」



祝杯


基地のエアロックが閉まり、

内側の扉が開く。


暖気が一気に広がり、

凍り付いていた身体が

ようやく現実に戻ってくる。


その夜、

簡素だが確かな祝杯が用意された。


金属製のカップ。

中身は、

凍らないアルコール。


誰かが言った。


「南極点、到達――」


それ以上の言葉は要らなかった。


カップがぶつかり合い、

乾いた音が響く。


笑い声が上がり、

しばしの間、

極地の孤独は忘れ去られた。



電波は海を越える


同時刻。


内陸基地から沿岸基地へ。

沿岸基地から宗谷へ。

宗谷から、日本本土へ。


暗号化された電文が送信された。


「目標達成。予定通り。」


それだけで、

全てが伝わった。



日本本土――


明賢は、

電文を静かに読み終えた。


表情は変えない。


だが、

指先がわずかに止まった。


「……到達したか」


誰にも聞かせない、

小さな声。


人類がまだ踏み込んでいない地。

その最奥に、

人の足跡が刻まれた。


それが、

計画の一部であることを

明賢は誰よりも理解していた。


「一歩、進んだな」


それは歓喜ではなく、

確認だった。



秘匿


この事実は、

即座に最高機密指定となった。


南極点到達。

観測データ。

設営位置。

写真、映像、記録。


全ては分離管理され、

限られた者しか触れられない。


理由は明白だった。


南極は、まだ世界に見せる場所ではない。


ここは、

いずれ――

日本の支配下として確定させてから公開する地。


その時初めて、

人類は知ることになる。



再確認


それでも、

この出来事が持つ意味は大きかった。


人類は、

理論だけでなく、

技術だけでなく、

意志によって地球の果てへ到達できる。


それを、

明賢は改めて実感していた。


計画は、

机上の空論ではない。


現実として、

一つずつ形になっている。

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