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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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203/248

物語序章 第一版 203章

南極基地建設開始


南極大陸に上陸してから数日後。

第1次南極観測隊は、ついに本来の目的へと移行した。


南極基地の建設。


今回の計画では、

長期滞在が可能な基地を二つ建設する。

•沿岸部の拠点基地

•南極点付近の内陸基地


そのため、

同一設計の基地モジュールが二式、

宗谷には積載されていた。


まず手を付けるのは――

沿岸基地である。



造成作業


南極の大地は、

一見すると平坦な雪原に見える。


だがその下は、

分厚い氷と凍結した岩盤だ。


雪上車と重機が動き出す。


エンジン音が、

白い静寂を切り裂く。


ブレードで雪を削り、

ドリルで氷を砕き、

慎重に、慎重に掘り下げていく。


やがて――

灰色の地盤が姿を現した。


「ここで行ける」


地質班の判断で、

建設位置が確定する。



基礎工事


次に行われたのは、

基礎コンクリートの打設だった。


低温下でも硬化する

特殊配合のコンクリートが使用される。


現地で加熱され、

流し込まれ、

均一に均されていく。


強風が吹き荒れる中、

防風幕の内側で作業は続く。


ここが、

数十年にわたり人が暮らす

南極の拠点となるのだ。



基地モジュール組み立て


基礎が固まると、

いよいよ本体の組み立てが始まった。


基地はプレハブ式。


巨大なモジュールが

クレーンで吊り上げられ、

基礎の上に正確に降ろされていく。


ボルト締結。

溶接。

断熱、シーリング。


作業は流れるように進む。



基地構造


完成後の基地は――

•地上4階建て

•厚い断熱材に覆われた外壁

•すべて二重・三重構造の扉


内部には、

•居住区

•研究室

•医療室

•食堂

•発電室

•通信室


が配置される設計だ。



屋上設備


屋上では、

別班が忙しく動いていた。


設置されていくのは――

•長距離通信アンテナ

•衛星通信実験用アンテナ

•気象観測装置

•風速・気圧・気温センサー


極地特有の天候を、

常時記録するための設備である。


吹き付ける風の中、

アンテナがゆっくりと立ち上がった。



ライフライン構築


基地建設で最も重要なのは、

水だった。


南極には、

液体の水がほとんど存在しない。


すべて――

氷を溶かして得る。


基地の隣には、

•燃料タンク

•水タンク


が設置される。


水タンクは常時、

発電機や排熱ダクトからの熱で

温められている。


凍結すれば、

それは即ち死を意味する。


配管はすべて二重化され、

緊急時の手動加熱装置も備えられていた。



発電開始


発電機が起動する。


低く、安定した音。


基地内に、

明かりが灯る。


白い大地の中に、

初めて現れた

人工の光だった。


その瞬間、

作業をしていた者たちが

思わず手を止めた。


誰もが、

無言でその光を見つめていた。



南極初の恒久拠点


こうして――

人類史上最も早い時代に、


南極沿岸基地建屋は完成しつつあった。


ここは、

•観測の拠点

•内陸進出の前線基地

•生存のための砦


となる。


極寒が牙を剥く


基地が稼働を始めてから、

数日が過ぎた頃だった。


最初に異変に気づいたのは、

整備班だった。


「……おかしい」


油圧ホースの点検をしていた兵が、

眉をひそめる。


ホース表面に、

細かな白い亀裂が走っていた。


触れた瞬間、

パキッという嫌な音がした。



ゴムが死ぬ温度


南極の気温は、

昼間でマイナス40度。


夜間には、

マイナス60度以下に達する。


これは――

想定していた「寒冷地」の限界を

明確に超えていた。


ゴム製の部品が、

次々と異変を起こし始める。

•シール材

•Oリング

•パッキン

•電線被覆

•防振ゴム


柔軟性を失い、

硬化し、

ひび割れ、

そして砕ける。


「寒冷地用ゴム……

 確かに性能は良い。

 だが、これは“極寒”だ」


研究員の一人が、

そう呟いた。



連鎖する不具合


一つのゴムが死ねば、

機械全体が止まる。


油圧が抜ける。

燃料ラインが漏れる。

振動が直接金属に伝わる。


雪上車の一台が、

突然動かなくなった。


原因は、

たった一つのシール破断だった。


修理はできる。

だが――

問題は頻度だった。


「またか……」


整備ログには、

同じ文字が何度も並ぶ。



予備部品の異常消費


宗谷には、

大量の予備交換パーツが積まれていた。


通常環境なら、

数年分の備蓄量。


しかし――

南極では違った。


消費速度は、

予想の三倍、いや五倍。


一週間で、

1ヶ月分が消えていく。


倉庫の棚が、

目に見えて空いていった。


「このままでは、

 内陸基地建設まで持たない」


現場の責任者が、

そう判断するのに

時間はかからなかった。



定期無線連絡


定刻。


基地の通信室で、

無線機が唸りを上げる。


日本本土、

統合研究局との定期連絡だ。


研究主任が、

静かにマイクを取った。


「こちら南極沿岸基地。

 極寒環境によるトラブルについて報告する」


淡々と、

だが一語一句に重みを込めて語る。

•寒冷地用ゴムの限界

•想定を超える気温低下による硬化

•予備部品消費の異常

•このままでは長期滞在に支障が出ること


そして――

結論を述べた。


「超極寒専用ゴムの開発が必要です。

 これは改良ではなく、新素材です」


通信の向こう側が、

一瞬静まり返った。



現実を突きつける南極


南極は、

甘くなかった。


知識も、

技術も、

準備も――

すべてが試される場所。


「ここは実験室じゃない。

 世界そのものが試験機だな」


誰かが、

そう言った。


隊長は、

基地の外に出て

白い大地を見渡していた。


吹きつける氷点下の風。

容赦のない現実。


だが――

その表情に、

迷いはなかった。


「いい。

 ならば作るんだ。

 極寒でも生きる素材を」


南極は、

次の課題を突きつけてきた。


そしてそれは――

技術レベルを、

さらに一段階引き上げる

起点となろうとしていた。


沿岸基地、完成


南極に上陸してから、

二ヶ月が過ぎていた。


吹雪と静寂を繰り返す日々の中で、

沿岸部基地は――

ついに完成した。


白い大地に立つ、

四階建ての人工構造物。


分厚い断熱壁。

二重気密構造の居住区。

常時稼働する発電設備と融氷装置。


屋上には、

アンテナや気象観測装置が林立し、

南極の空を睨んでいる。


夜間、

基地の灯りが雪原に反射し、

そこだけが人類の領域であることを示していた。


「これで……

 次に進めるな」


誰かが、

安堵と緊張の混じった声で言った。



内陸調査への準備


沿岸基地の完成は、

この計画の通過点に過ぎない。


本当の目的は――

内陸部、

そして南極点だ。


事前計画通り、

人員は二つに分割された。

•沿岸基地常駐班

•内陸調査隊


基地運用、

通信維持、

物資管理を担う者は残り、

探索と建設を担う者が前へ出る。



内陸調査隊、編成


内陸調査隊は、

慎重に選抜された。

•雪上車の操縦員

•機械整備員

•建築・基礎工

•気象・地質研究者

•医官


そして――

体力仕事に備えた、

熟練した海軍兵。


人数は最小限。

だが、

全員が多能工だった。


「全員、

 一人が三役できると思え」


出発前、隊長はそう告げた。



雪上車と基地モジュール


雪原に、

巨大な影が並ぶ。


内陸用に調整された雪上車だ。


低温対応エンジン。

太い履帯。

交換可能なゴム・金属複合部品。


そして――

後方には、

基地モジュールが連結されていた。


内陸部用モジュールには、

特別な工夫が施されている。


スキッド構造


モジュールの底部には、

取り外し可能な大型スキッド。


金属と樹脂の複合材で作られ、

氷雪の上を滑るように移動できる。


雪上車が前方で牽引し、

必要とあらば切り離して

その場で設営可能。


「建物が走る時代か……」


研究者の一人が、

冗談めかして言った。



最後の確認


出発前。


沿岸基地前で、

全車両が最終点検を受ける。

•燃料残量

•暖房系統

•通信機

•予備部品

•医療物資


全てが、

二重三重に確認された。


南極では、

「たぶん大丈夫」は

死を意味する。

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