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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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202/248

物語序章 第一版 202章

氷原への侵入


進むにつれ、

流氷は「浮かぶ破片」ではなくなっていった。


一枚一枚が巨大になり、

互いに押し合い、

重なり合い、

氷の原を形作っている。


厚さも増している。


船首が氷に触れても、

もはや簡単には割れない。



ラミング航行開始


艦橋に、短い指示が飛ぶ。


「通常推進、限界です」


機関長が即座に応じる。


「ラミング航行に移行」


宗谷は一度、

後退した。


電気推進モーターが低く唸り、

船体が静かに下がる。


そして――


前進。


ポンプによって船首から海水を放出しつつ氷に乗り上げる。


次の瞬間、

船体全体の重量が氷にかかり、

鈍い破砕音が響いた。


バキッ……ギギギ……


氷が押し割られ、

割れ目に船体が沈み込む。



後退、前進、繰り返し


それは力任せな航行ではない。


後退。

前進。

わずかな角度調整。

再び前進。


一歩ずつ、

氷を踏み砕きながら進む。


速度は極端に落ちた。


航海図上の進捗は、

ほとんど動いていないように見える。


だが、確実に前へ進んでいる。



氷上調査


進行が緩やかになったことで、

研究者たちに時間が生まれた。


気象班と安全班の確認後、

一部の研究者が氷上に降り立つ。


初めて人間の足が踏み入れる、

この場所。


足元の氷は厚く、

青白く、

内部に閉じ込められた気泡が光を反射している。



サンプル回収


氷を削り取り、

密閉容器へ。


雪氷サンプル。

海水が凍結した層。

堆積した微粒子。


すべてが、

過去の地球環境を語る証拠だった。



生命調査


一見、

無の世界。


だが、拡大鏡を通せば違う。


氷の下の海水。

微細な藻類。

極限環境に適応した微生物。


研究者たちは、

興奮を抑えながら記録を取る。


「……生きている」


その一言が、

この大陸の価値を物語っていた。



記録


写真。

動画。

位置情報。

気温、風向、風速。


すべてがデータ化され、

船内サーバーに保存される。


この時代において、

前例のない情報量だった。


後世、

南極研究の原点として

何度も参照されることになる。



前進


調査を終えた研究者が戻ると、

再び号令がかかる。


「ラミング航行、再開」


宗谷はまた、

氷に向かって進み出す。


白い世界の奥へ。

人類の知らない領域へ。


南極は、

まだ遠い。


だが――

確実に、近づいていた。


南極大陸、初視認


数日間、

白と青だけの世界を進み続けたその先で――

風景が、わずかに変わった。


水平線の向こう。

白ではない色。


灰色。


雪に覆われながらも、

確かに「大地」と分かる輪郭。


誰かが、低く言った。


「……陸だ」


次の瞬間、

艦橋が静まり返る。


測距儀。

双眼鏡。


間違いない。


南極大陸。


人類が、

この時代において初めて目にする

巨大な氷の大陸だった。



停船


宗谷は慎重に接近し、

氷縁の安定した地点で推進を止めた。


スクリューが停止し、

船体は静かに揺れる。


氷と雪と岩だけの世界。


無線が日本へ向けて送信される。


「我、観測船宗谷。

 南極大陸を確認。

 これより上陸作業に移行する」


その通信は、「南極到達第一報」である



上陸準備


即座に、

海軍の船員たちが動き出す。


甲板に張り巡らされていた

固定用ワイヤーが一本ずつ外されていく。


凍りついた金具を叩き、

慎重に緩め、

事故が起きぬよう声を掛け合う。


クレーンが起動する。


重低音とともに、

長いブームがゆっくりと動き出した。



物資揚陸


最初に降ろされるのは――

雪上車。


白い地面に、

黒い履帯が触れた瞬間、

歓声とも息を呑む音ともつかぬ声が上がる。


続いて、

•観測基地モジュール

•発電装置

•通信設備

•食料コンテナ

•燃料タンク


一つずつ、

南極の地に置かれていく。


それはまるで、

未知の星に拠点を築くような作業だった。



研究開始


その頃すでに、

研究員たちは動いていた。


船の周囲。


氷縁。


雪原。


白い大地に点々と、

人影が広がっていく。



生物調査


最初に注目されたのは、

こちらを警戒しながらも逃げない生物たち。


ペンギン。


集団で立ち、

首を傾げ、

人間をじっと見つめている。


カメラが回る。


写真。

動画。

鳴き声の記録。


少し離れた場所では、

氷上に横たわるアザラシ。


動かないようでいて、

こちらの存在は確実に把握している。


生態、行動範囲、反応速度。

すべてが未知のデータだった。



地質調査


別の班は、

地表に露出した岩盤へ向かう。


ハンマーで表面を削り、

断面を観察する。


灰色の岩石。

黒い筋。

金属光沢を帯びた粒子。


「……磁性がある」


埋蔵資源の可能性。


鉄鉱。

希少金属。

あるいは未知の鉱物。


サンプルは丁寧に袋詰めされ、

番号が振られていく。



南極に、人の営みが始まる


宗谷の周囲。


かつては、

風と氷と生物だけだった場所に――

•人が立ち

•機械が動き

•データが集まり

•拠点が築かれ始めていた


これは探検ではない。


定着の第一歩だった。


この白い大陸が、

いずれ日本の最南端となり、

科学と観測の最前線となることを

誰よりも理解していたからだ。

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