表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/248

物語序章 第一版 198章

2号機の制作 ― 加圧水型原子炉(PWR)


1624年、1号機の安定稼働が確認されると同時に、

次の段階へと計画は移行した。


2号機。


それは、

発電所のための原子炉ではない。


――乗り物に載せるための原子炉である。



目的


2号機は、将来建造される以下の艦艇・船舶を想定して開発された。

•原子力空母

•原子力潜水艦

•極地観測船

•砕氷船

•長期間無補給で航行する特務艦


共通する要求は、ただ一つ。


「壊れず止まらないこと」



設計思想


2号機は、1号機とはまったく異なる思想で作られた。


長寿命

•退役まで燃料棒交換不要

•高濃度ウラン燃料を使用

•数十年単位で出力を維持


静音性

•ポンプ・流路を最小限に抑えた設計

•振動源を徹底排除

•潜水艦搭載を想定した極低騒音構造


抗堪性

•衝撃・傾斜・一部破壊を前提とした設計

•圧力容器は厚く、形状は極力単純

•制御棒は重力落下式を基本とし、電力喪失時でも確実に挿入される


小型化

•建屋を含めた総体積は1号機より大幅に小さい

•艦内配置を想定したモジュール構造

•将来的な艦種ごとの最適化が可能



冷却系統 ― 三重防護


2号機では、放射性物質を絶対に外へ出さないことが最優先された。


冷却水は三段階で分離

1.一次冷却水

•炉心を直接冷却

•高圧・密閉

•放射性物質を含む

2.二次冷却水

•蒸気発生器を介して一次系と熱交換

•放射性物質なし

•タービンを駆動

3.海水冷却水

•二次系を冷却

•海水と直接接触するのはここだけ


この構造により、


例え一次冷却水が破損しても、

放射性物質は外界に出ない


という設計が成立していた。



燃料

•高濃度ウラン燃料を使用

•反応度を極限まで高める設計

•出力密度は1号機を大きく上回る


小柄な炉心でありながら、

艦艇用として十分以上の出力を確保していた。



建屋完成


東海村、研究施設内。


2号機専用の建屋が完成する。

•厚いコンクリート壁

•二重の圧力隔壁

•水密構造

•艦艇搭載を想定した振動試験設備


燃料棒はすでに装填され、

制御棒も所定の位置にある。


一次冷却水は満たされ、

圧力試験も完了。


残されているのは、ただ一つ。



発電開始を待つ


制御室には、1号機とは異なる緊張があった。


これは都市を照らす炉ではない。

海の底で、氷の下で、戦場で動く炉だ。


明賢は静かに言った。


「この炉は、

人を守るために使え。」


「そして、

決して暴走するな。」


制御棒を引き抜くその瞬間を、

誰もが待っていた。


1627年 ― 2号炉、起動


1627年。

東海村、帝国大学・陸軍共同研究施設。


厚い隔壁に囲まれた制御室は、1号炉の起動時とは違う静けさに包まれていた。

人の声も、機械音も、必要最低限しか存在しない。


ここにあるのは――

**「艦艇に積むための原子炉」**である。



起動操作


所定のチェックリストが淡々と読み上げられる。

•冷却水圧力:正常

•炉心温度:安定

•制御棒位置:挿入完了

•放射線量:自然放射線量と変わらず


異常なし。


明賢は短くうなずき、

制御板の前に立った。



臨界


ボタンが押される。


制御棒が、ゆっくりと引き抜かれていく。


1号炉の時のような、緊張を煽る振動はない。

圧力容器内部は、驚くほど静かだった。


計器の針だけが、確実に動く。


中性子束、上昇。

核分裂反応、安定増加。


――臨界到達。



送電開始


蒸気発生器が動き、

二次冷却系が回り始める。


タービンが回転を開始し、

送電ラインが接続された。


観測された出力。


25万kWh。


制御室に、抑えきれないざわめきが走る。



評価


1号炉よりも小型。

それでいて、より高い出力密度。


そして何より――


圧倒的に静かだった。


耳を澄ましても、

感じられるのはわずかな流体音だけ。


潜水艦に載せても、

敵に気づかれない。


研究員の一人が、思わず漏らした。


「……これが、動いている音ですか?」



意味するもの


明賢は計器を見つめたまま、静かに言った。


「これで、

海の距離制限はなくなる。」


「燃料補給の制約は、

もう我々には存在しない。」


2号炉は、

海軍力・空軍力・科学探査力のすべてを変える核心だった。



次への布石


この成功により、

•原子力艦艇の設計は最終段階へ

•原子力潜水艦計画が軌道に乗る

•極地観測船・砕氷船の建造決定

•空母搭載原子炉としての実用化試験開始


すべてが、一気に動き出す。


二号炉 ― 実用化への鍛錬段階へ


2号炉は完成した瞬間から、

「完成品」ではなく 育てる兵器 として扱われた。


この炉の役割は単なる発電ではない。

艦艇に載り、戦場に出る原子炉――

そのための、あらゆる状況を想定した訓練と改良が始まった。



静音性強化計画


まず最優先されたのは、静音性の極限化である。


従来の強制循環ポンプは、

どうしても振動と音を生む。


そこで目指されたのが――

次世代・自然対流型原子炉。

•冷却材の温度差による密度変化のみで循環

•ポンプ停止状態でも炉心冷却が成立

•振動源を極限まで削減


研究班は、

「音が存在しない原子炉」

という、前世でも到達が難しかった領域へ踏み込んでいった。



被攻撃時の対策訓練


2号炉では、平時運用だけでなく

攻撃を受けた状況下での行動訓練が徹底された。


想定は多岐にわたる。

•建屋外部への砲撃

•冷却系配管の破損

•電源喪失(完全ブラックアウト)

•制御室損壊

•炉心部分への直撃想定(最悪ケース)


そのすべてで、

•自動停止が成立するか

•手動操作へ即座に移行できるか

•炉心損傷をどこまで抑えられるか


が、実機を用いて検証された。



人が主役の炉


明賢の思想は一貫していた。


「どれだけ自動化しても、

最後に炉を守るのは人間だ。」


そのため、2号炉では

人員配置が意図的に厚くされた。



配置人員

•主任機関士(海軍機関科将校)

•副機関士

•炉心管理担当

•冷却系統担当

•電力・タービン担当

•放射線管理担当

•非常時対応要員


特に点検員は多く、

•日常点検

•微細な異音・温度変化の把握

•計器値の「違和感」を読む訓練


が重視された。


この炉は、複雑であることを前提に設計されている。

だからこそ、

人間の目と経験が不可欠だった。



海軍機関科の学び舎


2号炉は、

海軍機関科の最高訓練施設となった。


ここで学んだ人員は、将来――

•原子力空母

•原子力潜水艦

•原子力巡洋艦

•極地観測船


の心臓部を任されることになる。


彼らは単なる技術者ではない。


**「艦を生かす者」**として育てられていった。



二号炉の立ち位置

•発電炉であり

•試験炉であり

•教育炉であり

•将来兵器の原点


2号炉は、

日本の原子力艦隊の精神的・技術的母体となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ