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明賢の物語(日本建国物語)試作版 第一版  作者: 大和草


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197/248

物語序章 第一版 197章

原子炉順次稼働


1624年 ― 研究用原子炉1号機、初臨界


1624年、東海村研究施設。

研究用原子炉 1号機(沸騰水型原子炉) はついに完成を迎えた。


炉心には設計通りに燃料棒が装填され、

高純度に精製された純水が一次系へと慎重に注入される。


巨大な原子炉建屋の中は、

異様なほどの静けさに包まれていた。



計測と制御


この時代、電子技術はまだ発展途上にあった。

計測の主力は、

•アナログ指針式の中性子計

•圧力計

•温度計

•機械式記録ドラム


である。


針が震え、紙に刻まれる線が、

人類が初めて扱おうとする力の挙動を示していた。


一方で、

明賢がネットショッピングで買い集めた

•pcやサーバー

•高精度センサー

•データロガー


は、

炉心近傍や制御系の要所 に慎重に配置されていた。


すべてを電子に頼るには、電子産業の成熟度がまだ早すぎた。



制御室に集まった研究者、軍技術将校、監督官たちを前に、

明賢は静かに語り始める。


「これから扱うのは、

火でも、蒸気でも、雷でもない。」


「人類が自然の奥底から引き出した、

“秩序ある破壊”だ。」


「だが、恐れる必要はない。

恐れるべきは無知と慢心だ。」


「我々は、知っている。

だからこそ、制御できる。」


その声には、

前世の記憶と、この世界で積み上げてきた年月の重みがあった。



制御棒引き抜き


制御盤の前に立つ明賢。

手元には 制御棒スイッチ。


室内の空気が、わずかに張り詰める。


明賢は一瞬だけ目を閉じ、

そしてスイッチを押した。



制御棒が、ゆっくりと引き抜かれる。


アナログ計器の針が、

わずかに、しかし確実に動き始めた。


中性子を示す値が上昇する。


一次冷却水の温度が、

わずかに変化する。


研究員の誰もが声を出さず、

ただ計器を見つめていた。


――臨界。


核分裂反応は暴走することなく、

設計通り、穏やかに立ち上がった。



正式稼動開始


運転主任が、震えを抑えた声で報告する。


「……臨界確認。

 反応、安定しています。」


制御室に、

小さく、しかし確かな安堵の息が広がる。


この瞬間、

この世界において 人類は原子の火を制御下に置いた。



それは単なる発電技術の成功ではなかった。

•航空機

•艦船

•都市

•産業

•そして未来の兵器


すべての基盤となる 新しい時代のエネルギー の誕生である。


明賢は計器を見つめながら、心の中で静かに呟いた。


「今度は、

間違えない。」


1624年 ― 初送電


臨界確認から数時間後。

原子炉1号機は、慎重な出力上昇試験を経て、ついに発電段階へ移行した。


蒸気がタービンへ導かれ、

巨大な回転音が、低く、安定して響き始める。


発電機の計器がゆっくりと上昇し――

やがて、一定の値で落ち着いた。


出力:20万kWh


制御室のpcに、その数値が書き込まれる。



電気が流れる


送電スイッチが投入される。


太い送電線を通じて、

原子炉から生まれた電力が研究施設内へと流れ込む。


照明が、わずかに明るさを増した。


工場の試験用設備が起動し、

計測機器の針が安定した動きを示す。


――原子の力は、

ついに「仕事」を始めた。



研究炉としての役割


1号機は、商用発電炉ではない。


明賢は、最初からそれを決定していた。


この原子炉の役割は、

•出力変動試験

•緊急停止(SCRAM)試験

•冷却材喪失時の挙動観測

•燃料棒劣化の長期観察

•被曝管理・除染手順の確立


――失敗を、管理された形で起こすこと。


ここで得られた知識がなければ、

次の世代は作れない。



廃炉計画


計画書には、すでに明確に記されていた。


1640年代

電子技術成熟後、1号機は廃炉


この原子炉は、

永久に使い続けるためのものではない。

•アナログ計測に依存した設計

•初期世代の材料

•保守性より実験性を重視した構造


すべてが「第一世代」であることを前提としていた。


第二世代は、

より安全に、より効率的に、

そしてより多くの人々の生活を支える存在になる。



放射性廃棄物管理


明賢が最も厳格に決めたのは、

廃棄物の扱いだった。


中間処分


使用済み燃料は、東海村で冷却・管理された後、

厳重な容器に封入される。


その後、極秘裏に輸送され――

カナダ北部、北極圏に近い人跡未踏の地に設けられた

中間貯蔵施設へ集積される。


そこは、

•人口ゼロ

•地盤が極めて安定

•氷床と岩盤に守られた地域


国家最高機密として管理され、

地図にも正式名称は記されない。



最終処分


採掘技術と掘削機械の進歩に合わせ、

将来的には地下深部最終処分場が建設される予定だった。


数百メートル、

いずれは数キロに及ぶ岩盤の奥深く。


人類が、

二度と立ち寄る必要のない場所へ。



明賢の思想


明賢は、はっきりと命じていた。


「これは未来への負債だ。

だからこそ、未来だけに押し付けてはならない。」


「誰もが見える場所に置くな。

忘れられる場所にも置くな。」


「管理し、記録し、

そして自らの手で終わらせろ。」


原子力は、

使った瞬間から責任が始まる。



文明は次の段階へ


1624年。

この日を境に、世界は静かに変わり始めた。


煙突に頼らず、

昼夜に関係なく、

天候にも左右されず。


都市、工場、研究所、

そして未来の艦船や航空機へ。


安定した膨大なエネルギーが供給される時代が、

確実に近づいていた。

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