物語序章 第一版 155章
宇宙ステーションのトラブル報告と解析体制
宇宙ステーション「天宮」が稼働を始めてからというもの、
ステーション内外で起きた細かなトラブルはすべて記録され、
即座に日本へ送られるよう厳格なプロトコルが組まれていた。
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ステーションからのデータ送信
クルーは異常を感知すると、
原因箇所・発生時刻・関連パラメータを即座に ログとしてまとめ、
地球との通信ウインドウが開いた瞬間、
ハワイ・琉球・フロリダにある3拠点の宇宙軍通信基地へ送信した。
例:
•太陽光パネル損傷
•モジュール間接続部のわずかな振動
•冷却水循環の圧力低下
•センサー類の一時的なノイズ
•内部換気システムの異音
•姿勢制御スラスターの微小な燃料漏れ
些細な異常でも必ず送信することが義務付けられていた。
宇宙は「小さな異常が死につながる」ためである。
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宇宙軍研究施設での解析
送られてきたデータは、
即時に 帝国大学宇宙工学研究所、
そして 宇宙軍技術局・材料分析室 に転送される。
巨大なスクリーンにステーション3Dモデルが表示され、
異常箇所が赤く光る。
研究者たちは夜通しの議論を開始した。
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太陽光パネルの小隕石損傷
•隕石破片の推定速度
•破壊面の解析
•衝突角度の逆算
→ 対流圏外の微小物質密度の新しいモデル が作成される。
冷却水循環の圧力低下
•配管内の結露微粒子の凍結可能性
•流量センサーの温度依存誤差
→ 断熱材追加とセンサー交換 の改修案が作られる。
換気システムの異音
•ベアリング金属疲労
•低重力環境での潤滑油の偏り
→ 新型潤滑剤の開発 と モーター改良型 が設計される。
姿勢制御スラスターの燃料漏れ
•マイクロバブル混入
•バルブ摩耗
→ スラスターの新型バルブ方式 が検討される。
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改善策の即時反映
研究施設で改良案がまとまると、
それは次の補給船に載せる部品、
あるいはステーションで実施すべき作業手順として整理され、
数日以内に宇宙飛行士へ指示が送られる。
また再利用ロケットの高頻度打ち上げにより、
試作部品や改良パーツは素早く宇宙へ届けられた。
ステーションは、
まるで 巨大な“空飛ぶ実験施設” のように、
日々改良されていった。
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ステーション → 地上 → ステーション の高速改善サイクル
この仕組みにより、
宇宙開発は加速度的に進化していく。
•「不具合発生」
•「即日データ分析」
•「数日で改良」
•「1~2週間で実装」
前世の宇宙開発の何十倍ものスピードで技術が改善されていった。
宇宙軍はこの流れを
『きぼう式フィードバックサイクル』
と呼ぶようになった。
地球上での宇宙産業
地球上で爆発的に発展する宇宙産業
日本全体が宇宙開発中心の国家構造へと変貌し始めていた。
その中心となったのが、筑波と鹿島、そしてハワイである。
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筑波 ― 宇宙産業の心臓部
筑波には、
かつてなかった規模の 宇宙研究都市 が形成されていた。
•ロケットエンジン開発棟
•電子部品研究センター
•船外活動スーツ製造施設
•大型真空試験施設
•宇宙飛行士訓練施設
•再突入カプセルの耐熱素材研究棟
明賢が持ち込んだ前世の膨大なデータや実際のロケット発車によるデータの蓄積に基づき、
帝国大学・空軍・宇宙軍が共同で研究を進めることで、
当時の世界基準を遥かに逸脱した施設群が増え続けた。
筑波は「地球の宇宙産業首都」 と呼ばれた。
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鹿島 ― 海の物流ゲートウェイ
筑波から数十キロしか離れていない鹿島港は、
完全に 宇宙輸送専用の超巨大港 として拡張されていた。
•ロケット第一段の大量保管倉庫
•宇宙船モジュール専用積み込みドック
•無重力試験用プール施設
•船舶クレーンは世界最大級
•港から筑波まで専用鉄道ラインが敷設
筑波で製造した宇宙パーツは、
すべてこの鹿島港へ集積され、
巨大な専用貨物船に積み込まれ羽合へ出航する。
積み込まれる物資は例を挙げれば――
•宇宙ステーション追加モジュール
•再利用ロケットの新型部品
•観測衛星の機体
•大型望遠鏡の部材
•月面基地建設用ユニット
港は毎日、宇宙専用部材の山 で埋め尽くされていた。
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羽合 ― 宇宙への最終ゲート
ハワイ島の海岸沿いには、
筑波と鹿島から運ばれた部品を最終組み立てする
巨大ロケットセンター が完成していた。
•大型ロケット組立棟(高さ150m級)
•中型・小型ロケット組立棟
•月面着陸船整備棟
•宇宙ステーション拡張モジュール接続棟
•試験場と安全地下トンネル
•3つの大型発射台
再利用ロケットの帰還地点も整備され、
帰ってきたブースターは即座に分解点検され、
部品交換と燃料充填後、
再び打ち上げ隊列へ送り出される。
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宇宙産業の拡張は止まらない
地球上では宇宙開発産業が暴走的に成長していた。
•常時稼働する研究者は数万人
•製造工場は24時間稼働
•鹿島港は毎週のように巨大貨物船を送り出す
•ハワイは毎日1~2基のロケットが打ち上がる
日本の宇宙産業は、
世界が追いつけない速度で拡大し続けていた。




