物語序章 第一版 154章
きぼう正式稼動
ステーション、ついにフル稼働
35名体制になったことで、
ステーションは一気に活動密度が増した。
大規模運用に入った主な分野
科学実験モジュール(12名体制)
•無重量環境での結晶育成
•新金属素材の形成実験
•医学実験(血流・筋力データ)
•放射線測定
天文観測モジュール(6名体制)
•上空からの広視野観測
•若い星や超新星の連続監視
•衛星間での光学干渉実験
地球観測モジュール(7名体制)
•台風・雲系の観測
•気候モデルの検証
•大地震の兆候検出の研究
船外活動(EVA)班(10名体制)
•ソーラーパネル拡張
•外壁の点検
•新しい通信装置の取り付け
•外部観測装置の設置
人数が多くなったことで、
外作業班が“毎日船外活動を行える”体制になった。
これは世界史上前例がない規模である。
初の本格船外活動(EVA)
第4クルー到着から三日後。
ついに大規模な船外活動が開始された。
船外活動士官:「ヘルメットロック完了。生命維持システム正常。」
ハッチが開く。
数名の宇宙飛行士が、ゆっくりと虚空へ踏み出した。
彼らの任務は――
ステーション外部に新型通信アンテナを取り付けること
損傷した外壁パネルの交換
外部観測装置の冷却ユニットの増設
静寂の宇宙に、宇宙服の音だけが響く。
EVA隊員:「アンテナ基部、取り付け開始します。」
地上局:「姿勢制御正常。作業続行どうぞ。」
無重力でゆっくりと回転する新パネルを、
的確に固定していく。
ステーション内の仲間たちは、
観測カメラ越しにその様子を見守った。
きぼうステーション、“宇宙都市”へ
第4クルーの合流後、
天宮ステーションは本来想定していた性能を100%発揮し始めた。
•毎日の複数回の船外活動
•24時間体制での科学観測
•人工衛星群との連携制御
•地球・月面基地との通信中継
•未来の火星探査の基礎研究
35人が同時に生活し、働き、研究し、
そして世界を変え続ける「宇宙都市」として動き出した。
きぼうステーションの生活 ― 3交代制24時間稼働
きぼうステーションでは、
地上の昼夜とは無関係に 常時24時間稼働 が必要であった。
そこで、乗員35名は A・B・C の3グループ に分けられた。
⸻
A班(早朝~昼)
B班(昼~夜)
C班(夜~早朝)
どの班も 8時間勤務 → 8時間自由時間 → 8時間睡眠 のサイクルで動く。
このリズムによって、
ステーションでは常に10〜12名が活動できる状態を保っていた。
【A班】早朝シフト ― 科学実験と装置の起動
A班は“朝のきぼうステーション”を担当する。
00:00(地上時間換算で早朝)
周回軌道上では、外は何度も夜と昼が訪れる。
しかしステーション内は人工照明によって“朝”が作られる。
A班はまず、科学モジュールの装置起動から開始する。
•結晶成長チャンバーの温度調整
•真空下での材料実験
•医療実験で採血
•植物実験の光量調整
A班は主に理工系と医療系の研究者が固まっており、
朝の静かな時間帯に精密な作業を進める。
食事
朝食はフリーズドライではなく、
半解凍状態でゆっくり食べられる改良型宇宙食。
•温かい味噌汁
•粥
•魚の煮物を真空パックで温めたもの
•カフェイン少なめの飲料
明賢が事前に用意したデータに基づき、
宇宙食は前世より遥かに美味しく多様化されていた。
【B班】昼間シフト ― 船外活動(EVA)と設備点検
B班は体力・整備系・宇宙遊泳経験者が多い班である。
EVA前準備
•宇宙服の圧力テスト
•酸素タンク残量確認
•冷却液循環の動作チェック
•工具の固定・点検
EVA開始
ハッチが開き、数名の飛行士が外へ。
彼らの任務は多岐にわたる。
•外壁パネルの交換
•新型センサー取付
•ソーラーパネルの清掃と点検
•微小隕石衝突後の損傷チェック
昼食
帰還後は静かに身体を休め、栄養のある昼食を取る。
•高タンパク栄養バー
•具だくさんスープ
•再加熱パックのカレーやパスタ
•果物ゼリー
【C班】夜間シフト ― 天文観測と地球観測
C班は夜の静寂の中で動く「科学観測専門班」。
天文観測モジュール
•星間雲の観測
•新星出現の監視
•光学干渉実験
•衛星間レーザー通信試験
地球観測モジュール
•気象データの収集
•海流・雲の流れを解析
•洪水・火山活動の兆候検知
•地震前兆研究の継続観測
静かなモジュール内で、
大型モニターには地球と宇宙が並んで映し出される。
夜食
C班のために、夜勤者向けの“静かに食べられる食事”が用意されていた。
•雑炊
•はるさめスープ
•甘味の少ない栄養ゼリー
ステーションの生活空間
共有区画
•食堂兼会議室
•軽い運動用の無重力トレーニングルーム
•時差調整用の明暗ライト設備
居住モジュール
•個室は狭いが、完全遮音
•壁面に寝袋を固定して眠る
•自由時間には日本の最先端の映画・音楽も視聴可能
•地球とのビデオ通話は機密の関係で制限あり
風呂の代わりに
専用シャンプーとタオルで身体を拭く方式が導入されている。
宇宙ステーションの“心臓”:管理センター
全班の中心となるのが メインコントロールルーム。
1日24時間、必ず2〜3名が常駐し、
地球との通信・姿勢制御・生命維持を監視していた。
⸻
こうしてきぼうステーションは、
昼夜途切れることなく稼働し続け、
地球と宇宙を見守り、膨大なデータを送り続ける
“永遠の観測都市”となった。
きぼうステーション正式稼働から1ヶ月後
巨大構造物を宇宙に上げたのは初めてであり、
どれだけ慎重に設計しても、予期せぬトラブルは必ず起きる。
その兆候は、ある“微小な違和感”から始まった。
⸻
発電量の低下
C班の夜間観測中、
メインパネルの発電量が 通常より4%低い ことが検知された。
最初はセンサー誤差だと思われたが、
念のためサブカメラで太陽光パネルを撮影したところ……
パネルの一枚に“銀色の裂け目”が見えた。
微小隕石衝突跡 だった。
⸻
緊急会議
A・B・C 各班のリーダーがモジュール中央に集まる。
•「発電ロスは今のところ生活に問題ないが、このまま放置すれば影響が出る」
•「外部への拡大損傷の可能性がある」
•「修理パネルは補給便で持ち込んである。交換は可能だ」
地上管制室にも解決策を求めた。
結論はひとつ。
EVA(船外活動)でパネルを交換する。
⸻
EVA準備
今回は危険度が高いため、ベテラン中心の B班 が作業を担当。
宇宙服の準備が進む。
•酸素タンク残量
•冷却液循環確認
•生命維持装置のセンサー校正
•工具パックの固定
•新しい太陽光パネルを外部ラックに取り付け
モジュール内は張り詰めた空気で静かだった。
⸻
ハッチオープン
点検を終えた3名が気圧室へ入り、
減圧工程を終えるとゆっくりとハッチが開いた。
外には漆黒の宇宙と青く輝く地球。
3人はハーネスをロープに固定し、
ロボットアームの根元へ移動した。
操縦は内部のC班が担当する。
•「アーム起動。持ち上げます」
•「了解。ゆっくり頼む」
ロボットアームが動き、
作業員を太陽光パネルへと運んでいく。
⸻
破損パネルの確認
パネルの根元に到達すると、
予想以上の損傷が確認された。
隕石が貫通した穴は 直径5cm ほど。
そこから細かな裂け目が放射状に広がっていた。
隊員は工具を取り出し、
固定ボルトを一本一本外していく。
•「ボルト1番、解除」
•「2番、解除」
•「パネル取り外し完了」
壊れたパネルがゆっくりと分離され、
ケーブルを切り離して専用バッグに収納した。
⸻
新パネルの装着
ステーション外壁のラックに固定していた 新品パネル が
ロボットアームでゆっくり作業員の前に運ばれる。
新パネルは折り畳まれており、
作業員は慎重に広げて固定位置へとスライドさせた。
•「ケーブル接続……完了」
•「ボルト締結、12本締め」
•「姿勢ロック完了」
最後に確認のため、
内部の電力系統担当が通電テストを実施した。
•「発電量……正常値に回復。問題なし!」
ステーション内から歓声があがる。
⸻
帰還
作業員たちはロボットアームで帰還し、
気圧室で減圧してからモジュール内に戻った。
ヘルメットを外すと、
皆額に汗を浮かべていたが、
表情には達成感が満ちていた。
•「よくやった」
•「これでまた数年は安心だな」
•「次はもっと外装補強を増やそう」
修理されたパネルは美しく光を反射し、
天宮ステーションは再び完全な状態へ戻った。




