物語序章 第一版 150章
月面帰還後 ― 膨大な資料の回収と輸送
ハワイ近海で回収された帰還船は、
重巡洋艦の甲板から即座に保安部隊に囲まれ、
厳重に封印された。
船内からは、
・月面の岩石サンプル
・観測装置のデータ記録媒体
・宇宙飛行中の映像・音声・計測データ
・ローバーのログ
・生活モジュール内での実験結果
など、膨大な量のサンプルと記録装置が運び出される。
それらは次々と耐衝撃ケースに収められ、
別の海軍の重巡洋艦に積み込まれていった。
重巡洋艦の目的地は――
帝国大学総合宇宙研究棟
帝国軍技術研究本部
この二箇所で、
数年がかりの解析が始まることになる。
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帰還船と宇宙服
ハワイ島の宇宙軍基地には、
外から見えない巨大な地下施設がある。
名称は
『宇宙軍極秘資料館(地下第3保管庫)』
ここには――
•世界初の有人宇宙飛行で使われた 1号機の帰還船と宇宙服
•世界初の宇宙遊泳をした 2号機の帰還船と宇宙服
•そして今回の 月面着陸用の帰還船・宇宙服
これらが 永久保存扱い として並べられた。
どれも密閉されたケースに入り、
温湿度管理された空間で静かにその姿を保っている。
外部には 存在自体が極秘 であり、
一般公開されるのは数百年以上先の話となる。
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帰還クルーの式典
日本本土へ戻った宇宙飛行士たちは、
裏門からひっそりと移動し、
一般には知られることのない “内部式典会場” へと案内された。
出席者は、
•明賢
•宇宙軍司令
•空軍司令
•帝国大学長
•宇宙開発関係者数十名
というごく限られた顔ぶれだった。
明賢は壇上に立ち、
静かに、しかし力強く言葉を発した。
「君たちの成果は、国家の未来を百年分先に進めた。
これは世界の歴史における転換点となるだろう。
しかし当面は世に公表することはできない。
君たちはその“重さ”と“誇り”を胸に、
次の時代をさらに切り拓いてほしい。」
宇宙飛行士3名は整列し、
勲章と記念章を授与される。
記念写真も撮影されたが、
当然ながら すべて厳重な機密文書扱い として保存される。
最後に小さな乾杯が行われ、
式典は静かに幕を閉じた。
宇宙開発技術の発展と疑問
月面ミッション後 ― 宇宙研究の爆発的進展
月面着陸船から持ち帰られたサンプル、
ローバーの記録、
モジュール実験のデータ、
そして探査機が送り続ける膨大な観測情報。
そのすべてが帝国大学と軍研究所に運び込まれ、
解析班はほぼ休む間もなく分析を始めた。
解析開始から数週間
研究者たちはまず、月の地質サンプルに驚かされる。
•月面の年代の確定
•太陽風の粒子データ
•月表層の物質構造
•微量放射線の長期記録
これらが前世より数百年単位で早く揃ったことで、
惑星形成理論と宇宙放射線の研究が飛躍的に発展。
同時に、生活モジュールや船外活動で得た
宇宙環境下の人体データは、医学や薬学分野にも
圧倒的な衝撃を与えた。
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月面観測装置の“フル稼働”
月面には、返還された3人が設置した機器が稼働している。
•大型観測装置(遠隔天文観測)
•気象観測ユニット(誤差測定用)
•地震計
•月面地下ボーリング観測装置
•調査ローバー(自動巡回)
•小型通信中継装置数台
これらが 毎日、日本へ観測データを送り続けた。
地球上では気象衛星が既に多数稼働しているため、
月面からのデータとの比較により、
地球大気の構造・磁気圏の挙動・太陽の活動周期の解析が前世より数世紀早く進む。
ローバーはほぼ毎日自動巡回し、
暗闇のクレータ内部まで照らして観測し、
今まで誰も見たことのなかった高精細データを送ってくる。
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宇宙開発技術の“異常な速度”での進歩
宇宙軍・空軍・帝国大学の三者は連携し、
月面データをベースに次々と開発を開始した。
ロケットの改良
月面ミッションの成功で得たデータから、
新たな燃焼制御方式、軽量素材、耐熱材の開発が加速。
次世代型の打ち上げロケットは何度でも再利用可能になる
“前世のSTARSHIPに匹敵する性能”
をこの時代で作り出せる見込みが立った。
航法技術の進化
月面誘導装置・ローバー誘導プログラムのおかげで
自動航法は驚異的に発展し、
人工衛星群によって日本独自の準GPS網も構築され始める。
月面通信網の確立
月面の中継装置が正常稼働したことで、
将来的に“月面局地通信ネットワーク”を構築する計画が浮上。
これは次の月面基地建設に直結する。
材料・エネルギー研究
月面で採取した微量物質から
新しい耐放射線素材やナノ構造材料の研究が急速に進行。
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国家としての宇宙開発フェーズが“第二段階”に
月面ミッションの成功で
日本はすでに世界から見えないところで
300年以上先を行く立場になっていた。
明賢はこれらの成果をまとめ、
次の3大計画を同時に動かし始める。




