物語序章 第一版 148章
月面滞在 2日目
太陽光パネルが朝の光を受けると同時に、
モジュールの内部には柔らかな人工照明が灯った。
船長
「2日目の作業を開始する。今日は“科学の日”だ。」
3人は朝食をとると、予定された一日の実験スケジュールを確認した。
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① モジュール内での科学実験
月面の低重力環境(地球の1/6)が
生命や物質にどの程度の影響を与えるか――
これを調べるのが主な目的であった。
生物実験
専用の透明ケースを取り出し、植物の種子や小動物の細胞をセットする。
A
「月面環境だと発芽速度はどう変わるか……これを地球に返して解析だな。」
温度・酸素・湿度を管理した小型実験装置の中で、
種子はゆっくりと膨らみ始めた。
金属・鉱物の反応実験
月面の砂サンプルを採取し、
地球製素材との反応チェックを行う。
B
「これが月の地面……。鉄粉みたいに細かいな。」
耐熱素材、合金、樹脂などと接触させ、
腐食性、静電気特性、摩耗のデータを測る。
真空環境での燃焼・物質挙動実験
真空チャンバーに材料を入れ、
熱した際の膨張・変形の挙動を計測する。
C
「地球では測れない“完全真空周囲の反応”だ。重要データになる。」
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② 宇宙空間での調査作業(外部EVAではなく“船外操作実験”)
午後の作業として、
モジュール外壁に設置された伸縮アームを使い、
宇宙空間での材料曝露実験 を行う。
これはEVA(船外活動)を伴わず、
室内から遠隔操作で行うタイプの実験である。
宇宙放射線の影響
アームの先端に取り付けられたケースを開き、
金属板・電子部品・樹脂を月面外へ展開する。
船長
「宇宙線の強度は地球の百倍以上だ。
どんな影響が出るかは、将来の宇宙船設計に必須だ。」
定期的にセンサーが宇宙線量を測定し、
データをリアルタイムで地球に送信する。
太陽風の影響
装置を回転させ、直接太陽風を受けるように設定。
C
「太陽風で電子部品がどう劣化するか……明賢の時代でも重要な研究だった。」
微小隕石衝突検知装置
外部に設置されたパネルの振動センサーが作動する。
B
「微小隕石1つで、銃弾並の威力が出る。
このデータは将来の月面基地建設に必須だ。」
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③ 月面からの高解像度観測
午後後半は、
住居モジュールに積んでいた高性能望遠センサーを使い、
地球の気象観測テストを行う。
衛星の代替として月面から観測し、
将来の気象解析の精度向上が目的だった。
A
「地球の雲の形がはっきり見えるな……。」
B
「月からの気象観測なんて、明賢の前世にも無かっただろう。」
地球・太平洋・アジアのくっきりとした画像が送信され、
ハワイの地上局でも大歓声が上がった。
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④ 2日目夜 ― 明賢への報告
夕食後、船長は通信卓に座り報告を始めた。
「こちら月面第1班。
本日の実験・調査はすべて成功。
データの送信も完了した。
明日は船外作業服を着てローバーを使い、遠隔地点の広域探査を開始する。」
明賢から短く返答が届く。
『よくやってくれた。
君たちの作業が、未来の宇宙基地設計に直結する。
明日も頼む。』
3人はしばらく黙り込み、
丸い地球が映る窓を眺めた。
船長
「……これが月での生活か。
地球は本当に美しい。」
月面滞在 3日目
ローバーによる長距離探索開始
月面の朝。太陽が水平線からゆっくり昇り、
住居モジュールの外壁に白い光が差し込む。
船長
「今日は長距離探査だ。スケジュールどおり進行する。」
3人は宇宙服を着込み、減圧区画へ入り、
ハッチを開けて月面へ降り立つ。
目の前には、白銀色の車体をした日本製ローバーが待っていた。
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① ローバーへの搭乗
ローバーは前世の1960年代の月面車を遥かに超える性能を持つ。
•4輪独立懸架+電動モーター
•ソーラーウイング+燃料電池のハイブリッド
•全天候カメラ
•レーダー・LIDAR・地中探査装置
•耐放射線処理された高性能コンピューター
宇宙飛行士Cが機体を起動すると、
HUDモニターが点灯し地形マップが表示された。
C
「誘導装置とのリンク確認。
事前に無人探査機が調査したルートに従って進む。」
3人はローバーに乗り込み、
ゆっくりと月面を走り始めた。
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② 長距離走行開始
目標地点は住居モジュールから35km離れた高地。
ここには、事前に無人探査機が撮影した“地殻露出部”があり、
月の内部構造研究に重要とされていた。
走行中、レーダーが前方の起伏を解析する。
B
「地球とは違う静けさだ……音が一切しない。」
A
「地平線が丸いな……。月は地球よりずっと小さい。」
ゆっくり進むローバーの周囲には、
細かいレゴリスがふわりと舞い、すぐに沈んでいく。
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③ 通信装置の設置
目的地へ向かう途中にある小高い丘で停止。
ここに**第1通信中継装置(通信ビーコン)**を設置する予定だった。
•月面基地 ⇔ 長距離探査チーム
•長距離探査チーム ⇔ 地球
を安定させるための中継塔である。
Cがアンカーを打ち込み、
AとBがソーラーパネル付き通信装置を起動する。
B
「信号強度、良好。これでこの区域の通信が安定する。」
アンテナはゆっくり地球方向へ自動調整された。
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④ 観測装置の設置
次の地点では、月面の微小地震を測る小型地震計を設置した。
これは地球の地震学者にも貴重なデータとなる。
A
「設置完了。データは自動でモジュールに送るよう設定した。」
さらに温度センサー、放射線測定器、地中レーダーを順番に設置し、
全て正常に稼働を開始した。
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⑤ 長距離探査
目的の高地に到着。
ここは無人探査機が撮影した際に、
地下層が露出している可能性があるとされた場所。
ローバーのLIDARモジュールが地形をスキャンし、
地中探査装置が地盤データを採取する。
B
「この層……玄武岩だな。月の初期の火山活動の痕跡だ。」
C
「これは地球に帰ったら論文が何本も出せるぞ。」
Aは高解像度カメラで周辺の写真・動画を撮影し、
観測データを地球へ送信した。
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⑥ 帰還
夕方。太陽が地平線に傾く頃、
ローバーは住居モジュールへ帰還した。
船長
「今日の成果は大きいな。
これで月面基地設置計画の次段階に進めるはずだ。」
3人は減圧区画へ入り、宇宙服を脱ぎ、
モジュールの中で温かい飲み物を飲みながら
送られてくる地球側の解析速報を見つめた。
B
「……月面での3日目、順調だ。」
月面滞在 4日目
「月面ボーリング調査」と「モジュール内研究」
朝。住居モジュールの窓から差し込む太陽光が、
薄い影を床に落としていた。
本日の任務は大きく二つ。
•船外チーム(2名):月面での「簡易ボーリング調査」
•船内チーム(1名):モジュール内で「実験経過観察・地球へのデータ送信」
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① Aチーム:ボーリング調査準備
朝食を取り、宇宙服を着用した2名は
減圧区画を通り、月面へと降り立った。
目標地点は住居モジュールから約2km離れた平坦地。
昨日の地中レーダーの結果から、
この地点に多層構造のレゴリスが存在すると判明していた。
A
「地質学的に面白い地点だ。
深度5mまで掘り、層構造と温度データを採取する。」
ローバーに搭載されている「簡易ボーリング装置」を降ろし、
広げて組み立てる。
•電動掘削ドリル
•レゴリス回収カプセル
•深度計
•温度・硬度センサー
•最深部用の真空カプセル
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② Bチーム:モジュール内での観察作業
残された1名は住居モジュール内で実験を継続・監視する。
今日のモジュール内任務は以下の通り:
•地球から持ち込んだ生物サンプルの耐放射線実験
•微小重力下での燃焼実験装置のデータ取り
•月面環境での電子機器の耐久性テスト
•衛星中継を利用した地球へのデータパケット送信
通信パネルのLEDが点滅し、多少の遅延を伴ってデータ送信が行われる。
「……主実験、正常。
地球側もデータ受信を確認している。」
彼はモジュールの透明窓から外を見る。
遠くでローバーがゆっくり進む姿が小さく見える。
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③ ボーリング調査開始
月面では、Aチームが掘削装置を起動した。
ゴゴゴ……という静かな掘削音が
薄い真空の地表で微かに振動する。
深度1m
レゴリスは細かい灰のような粉末だが、
温度センサーは「–22℃」を示した。
深度2m
色の濃い層に到達。
成分分析装置にかけると、火山起源の玄武岩粉塵が混ざっている。
深度3m
硬度が急激に上がる。掘削速度を下げ慎重に掘り進める。
深度4m
微量の氷成分を検出。
気化しないよう真空カプセルに保存する。
深度5m(最終)
予測されていた固化レゴリス層に到達。
月の長い歴史で加熱・冷却を繰り返して固まった層だ。
A
「サンプル採取完了。分析用に3本確保、
地球帰還船用の特別サンプルも保存した。」
ボーリング装置を分解し、回収作業に入る。
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④ モジュール内のデータ送信
Bチームは、採取された地中データと
現場から送られるセンサーのテレメトリを整形し、
地球の基地へ送信する。
B
「Aチーム、地球側から受信完了の通知。
深度4mの氷層が大きな研究価値があると。」
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⑤ 帰還とクルーの報告
午後。ボーリングを終えたAチームがモジュールへ戻る。
減圧区画で宇宙服を脱ぎ、室内に入ると
Bチームが整頓されたデータ表と
地球からの返信ログを見せた。
B
「氷成分、かなり珍しいデータだぞ。
初期の月の水経路の証拠になるらしい。」
A
「じゃあ今日の成果は大きいな。」
3人は簡易夕食を取りながら本日のログをまとめ、
翌日の作業計画を確認した。




