表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/163

物語序章 第一版 148章

月面滞在 2日目


太陽光パネルが朝の光を受けると同時に、

モジュールの内部には柔らかな人工照明が灯った。


船長

「2日目の作業を開始する。今日は“科学の日”だ。」


3人は朝食をとると、予定された一日の実験スケジュールを確認した。



① モジュール内での科学実験


月面の低重力環境(地球の1/6)が

生命や物質にどの程度の影響を与えるか――

これを調べるのが主な目的であった。


生物実験


専用の透明ケースを取り出し、植物の種子や小動物の細胞をセットする。


A

「月面環境だと発芽速度はどう変わるか……これを地球に返して解析だな。」


温度・酸素・湿度を管理した小型実験装置の中で、

種子はゆっくりと膨らみ始めた。


金属・鉱物の反応実験


月面のレゴリスサンプルを採取し、

地球製素材との反応チェックを行う。


B

「これが月の地面……。鉄粉みたいに細かいな。」


耐熱素材、合金、樹脂などと接触させ、

腐食性、静電気特性、摩耗のデータを測る。


真空環境での燃焼・物質挙動実験


真空チャンバーに材料を入れ、

熱した際の膨張・変形の挙動を計測する。


C

「地球では測れない“完全真空周囲の反応”だ。重要データになる。」



② 宇宙空間での調査作業(外部EVAではなく“船外操作実験”)


午後の作業として、

モジュール外壁に設置された伸縮アームを使い、

宇宙空間での材料曝露実験 を行う。


これはEVA(船外活動)を伴わず、

室内から遠隔操作で行うタイプの実験である。


宇宙放射線の影響


アームの先端に取り付けられたケースを開き、

金属板・電子部品・樹脂を月面外へ展開する。


船長

「宇宙線の強度は地球の百倍以上だ。

どんな影響が出るかは、将来の宇宙船設計に必須だ。」


定期的にセンサーが宇宙線量を測定し、

データをリアルタイムで地球に送信する。


太陽風の影響


装置を回転させ、直接太陽風を受けるように設定。


C

「太陽風で電子部品がどう劣化するか……明賢の時代でも重要な研究だった。」


微小隕石衝突検知装置


外部に設置されたパネルの振動センサーが作動する。


B

「微小隕石1つで、銃弾並の威力が出る。

このデータは将来の月面基地建設に必須だ。」



③ 月面からの高解像度観測


午後後半は、

住居モジュールに積んでいた高性能望遠センサーを使い、

地球の気象観測テストを行う。


衛星の代替として月面から観測し、

将来の気象解析の精度向上が目的だった。


A

「地球の雲の形がはっきり見えるな……。」


B

「月からの気象観測なんて、明賢の前世にも無かっただろう。」


地球・太平洋・アジアのくっきりとした画像が送信され、

ハワイの地上局でも大歓声が上がった。



④ 2日目夜 ― 明賢への報告


夕食後、船長は通信卓に座り報告を始めた。


「こちら月面第1班。

本日の実験・調査はすべて成功。

データの送信も完了した。

明日は船外作業服を着てローバーを使い、遠隔地点の広域探査を開始する。」


明賢から短く返答が届く。


『よくやってくれた。

君たちの作業が、未来の宇宙基地設計に直結する。

明日も頼む。』


3人はしばらく黙り込み、

丸い地球が映る窓を眺めた。


船長

「……これが月での生活か。

地球は本当に美しい。」


月面滞在 3日目


ローバーによる長距離探索開始


月面の朝。太陽が水平線からゆっくり昇り、

住居モジュールの外壁に白い光が差し込む。


船長

「今日は長距離探査だ。スケジュールどおり進行する。」


3人は宇宙服を着込み、減圧区画へ入り、

ハッチを開けて月面へ降り立つ。


目の前には、白銀色の車体をした日本製ローバーが待っていた。



① ローバーへの搭乗


ローバーは前世の1960年代の月面車を遥かに超える性能を持つ。

•4輪独立懸架+電動モーター

•ソーラーウイング+燃料電池のハイブリッド

•全天候カメラ

•レーダー・LIDAR・地中探査装置

•耐放射線処理された高性能コンピューター


宇宙飛行士Cが機体を起動すると、

HUDモニターが点灯し地形マップが表示された。


C

「誘導装置とのリンク確認。

事前に無人探査機が調査したルートに従って進む。」


3人はローバーに乗り込み、

ゆっくりと月面を走り始めた。



② 長距離走行開始


目標地点は住居モジュールから35km離れた高地。

ここには、事前に無人探査機が撮影した“地殻露出部”があり、

月の内部構造研究に重要とされていた。


走行中、レーダーが前方の起伏を解析する。


B

「地球とは違う静けさだ……音が一切しない。」


A

「地平線が丸いな……。月は地球よりずっと小さい。」


ゆっくり進むローバーの周囲には、

細かいレゴリスがふわりと舞い、すぐに沈んでいく。



③ 通信装置の設置


目的地へ向かう途中にある小高い丘で停止。


ここに**第1通信中継装置(通信ビーコン)**を設置する予定だった。

•月面基地 ⇔ 長距離探査チーム

•長距離探査チーム ⇔ 地球


を安定させるための中継塔である。


Cがアンカーを打ち込み、

AとBがソーラーパネル付き通信装置を起動する。


B

「信号強度、良好。これでこの区域の通信が安定する。」


アンテナはゆっくり地球方向へ自動調整された。



④ 観測装置の設置


次の地点では、月面の微小地震を測る小型地震計を設置した。

これは地球の地震学者にも貴重なデータとなる。


A

「設置完了。データは自動でモジュールに送るよう設定した。」


さらに温度センサー、放射線測定器、地中レーダーを順番に設置し、

全て正常に稼働を開始した。



⑤ 長距離探査


目的の高地に到着。

ここは無人探査機が撮影した際に、

地下層が露出している可能性があるとされた場所。


ローバーのLIDARモジュールが地形をスキャンし、

地中探査装置が地盤データを採取する。


B

「この層……玄武岩だな。月の初期の火山活動の痕跡だ。」


C

「これは地球に帰ったら論文が何本も出せるぞ。」


Aは高解像度カメラで周辺の写真・動画を撮影し、

観測データを地球へ送信した。



⑥ 帰還


夕方。太陽が地平線に傾く頃、

ローバーは住居モジュールへ帰還した。


船長

「今日の成果は大きいな。

これで月面基地設置計画の次段階に進めるはずだ。」


3人は減圧区画へ入り、宇宙服を脱ぎ、

モジュールの中で温かい飲み物を飲みながら

送られてくる地球側の解析速報を見つめた。


B

「……月面での3日目、順調だ。」


月面滞在 4日目


「月面ボーリング調査」と「モジュール内研究」


朝。住居モジュールの窓から差し込む太陽光が、

薄い影を床に落としていた。


本日の任務は大きく二つ。

•船外チーム(2名):月面での「簡易ボーリング調査」

•船内チーム(1名):モジュール内で「実験経過観察・地球へのデータ送信」



① Aチーム:ボーリング調査準備


朝食を取り、宇宙服を着用した2名は

減圧区画を通り、月面へと降り立った。


目標地点は住居モジュールから約2km離れた平坦地。

昨日の地中レーダーの結果から、

この地点に多層構造のレゴリスが存在すると判明していた。


A

「地質学的に面白い地点だ。

深度5mまで掘り、層構造と温度データを採取する。」


ローバーに搭載されている「簡易ボーリング装置」を降ろし、

広げて組み立てる。

•電動掘削ドリル

•レゴリス回収カプセル

•深度計

•温度・硬度センサー

•最深部用の真空カプセル



② Bチーム:モジュール内での観察作業


残された1名は住居モジュール内で実験を継続・監視する。


今日のモジュール内任務は以下の通り:

•地球から持ち込んだ生物サンプルの耐放射線実験

•微小重力下での燃焼実験装置のデータ取り

•月面環境での電子機器の耐久性テスト

•衛星中継を利用した地球へのデータパケット送信


通信パネルのLEDが点滅し、多少の遅延を伴ってデータ送信が行われる。


「……主実験、正常。

地球側もデータ受信を確認している。」


彼はモジュールの透明窓から外を見る。

遠くでローバーがゆっくり進む姿が小さく見える。



③ ボーリング調査開始


月面では、Aチームが掘削装置を起動した。


ゴゴゴ……という静かな掘削音が

薄い真空の地表で微かに振動する。


深度1m

レゴリスは細かい灰のような粉末だが、

温度センサーは「–22℃」を示した。


深度2m

色の濃い層に到達。

成分分析装置にかけると、火山起源の玄武岩粉塵が混ざっている。


深度3m

硬度が急激に上がる。掘削速度を下げ慎重に掘り進める。


深度4m

微量の氷成分を検出。

気化しないよう真空カプセルに保存する。


深度5m(最終)

予測されていた固化レゴリス層に到達。

月の長い歴史で加熱・冷却を繰り返して固まった層だ。


A

「サンプル採取完了。分析用に3本確保、

地球帰還船用の特別サンプルも保存した。」


ボーリング装置を分解し、回収作業に入る。



④ モジュール内のデータ送信


Bチームは、採取された地中データと

現場から送られるセンサーのテレメトリを整形し、

地球の基地へ送信する。


B

「Aチーム、地球側から受信完了の通知。

深度4mの氷層が大きな研究価値があると。」



⑤ 帰還とクルーの報告


午後。ボーリングを終えたAチームがモジュールへ戻る。


減圧区画で宇宙服を脱ぎ、室内に入ると

Bチームが整頓されたデータ表と

地球からの返信ログを見せた。


B

「氷成分、かなり珍しいデータだぞ。

初期の月の水経路の証拠になるらしい。」


A

「じゃあ今日の成果は大きいな。」


3人は簡易夕食を取りながら本日のログをまとめ、

翌日の作業計画を確認した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ