物語序章 第一版 146章
月面活動 ― 三者三様の任務開始
月面国旗の掲揚を終えると、
船長は落ち着いた声で指示を出した。
船長:
「よし、予定通り三班に分かれる。
Bは映像記録、Cはサンプル採取、私はローバー準備と観測装置の設置に入る。」
3人は互いに頷き合い、それぞれの作業へ散開した。
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1人目:8K撮影による記録任務
宇宙飛行士Bは胸のハーネスに装着していた
超高画質8Kビデオカメラ撮影ユニット を手に取る。
レンズ保護シャッターを開くと、
無音の世界に月面の光景が鮮やかに映し出された。
B:
「映像記録ユニット作動。撮影開始。」
まずは月面に立つ日の丸を撮影する。
地球を背景に光る国旗は、
まるで宇宙空間に浮かぶ宝石のようだった。
続いて、
サンプル採取をしているCの姿、
ローバーを展開する船長の姿、
そして遠くに浮かぶ地球の回転。
Bはプロのカメラマンのように角度を変え、
ズーム・広角映像など
後世に残る宇宙記録を次々と撮影した。
最後に、
カメラを定点カメラとするため三脚を設置して
ミッション全体の記録映像を流し続ける。
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2人目:サンプル採取任務
宇宙飛行士Cは小さなケースと
月面採取キットを持ち、地表の調査を開始した。
C:
「表面レゴリス、粒度測定……採取開始。」
スコップ型ツールを使い、
ほこほことした灰状の砂を慎重にすくい取る。
サンプルケースには、
表層サンプル・浅層サンプル・岩石片の3種類を入れる区画がある。
Cは船長が作ったチェックリストに沿って作業する。
•温度
•質量
•粒度
•磁性の有無
•静電付着の程度
一つひとつ記録を残しながら
採取キットに慎重に収納していく。
C:
「レゴリス採取完了、岩石片採取に移る。」
足で少し地面を払うと、
灰色の石が露出した。
ハンマーで軽く叩くと石の一部が欠け、
その破片がケースに収められる。
太陽光で白く輝く岩石片を見ながら、
Cは小声で呟いた。
「……この瞬間は、必ず未来へつながる。」
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3人目(船長):ローバー準備・観測装置設置
船長は着陸船のハッチ下にある
ローバー収納ユニット に移動した。
ロックボルトを解除し、
伸縮アームを使って月面ローバーを降下させる。
ローバーは静電防止処理が施された車体で、
太陽光パネルと大型バッテリーを兼ね備えている。
船長:
「ローバー降下完了。起動シーケンスに入る。」
パネルが展開し、
ローバーのライトがふわりと点灯する。
続いて船長は、
コンテナから観測装置を取り出した。
•月面地震計
•放射線量観測器
•月面温度観測ユニット
•地下レーダー測定アンテナ
ひとつずつ地表に設置し、
ローバーと連携するよう調整する。
船長:
「観測装置セット完了。データリンク正常。」
観測装置が月面に立ち並び、
まるで未来の観測基地のような光景が広がる。
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3人の宇宙飛行士、月面での作業がそろう
B:
「映像記録、良好。」
C:
「サンプル採取完了した。」
船長:
「ローバーと観測装置の展開完了。」
3人は互いに声を掛け合い、
月面の静寂の中で再び集合した。
月の地平線の向こうから、
太陽がゆっくりと昇り始める。
宇宙飛行士たちの背中に、
長い影が伸びた。
ローバーでの移動開始
3人はサンプルや機材を一度着陸船に収納すると、
船外活動専用ローバーへと向かった。
ローバーは前方に広いバンパーと
月面専用の記憶形状合金製タイヤを備え、
太陽光パネルとバッテリー、通信装置を搭載した
小型ながら高性能な探査車両である。
船長:
「乗り込むぞ。目的地は既設の住居モジュールと大型観測装置だ。」
BとCはサイドシートに乗り込み、
船長が運転席に座る。
シートベルトを固定し、
ローバーの電源が入ると
静かに駆動モーターが回転した。
船長:
「ローバー起動。ナビゲーション、ルート設定完了。」
ローバーは月面に刻まれる自分たちの足跡を越え、
ゆっくりと走行を開始した。
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月面走行 ― 住居モジュールへ向かう
目指す地点は着陸船から約700m先に設置されている
先行輸送された小型住居モジュール と
大型観測装置(長距離地震観測・地下レーダー複合施設) だ。
月の地平線は緩やかで、
影と光の境界がはっきりと見える。
Bは走行中も8Kカメラを構え、
ローバーの前方風景を撮影していた。
C:
「……無人探査機が残した車輪跡が見えるな。」
船長:
「ああ、あれが我々の目的地への誘導路だ。」
そのラインを辿るようにローバーは進み、
銀色に光る住居モジュールと、
巨大なコンテナに収められた観測装置群が見えてきた。
小型住居モジュールへ到着
住居モジュールは、
月面基地型インフレータブルハブの初期型で、
輸送時は収納されていたが、
無人探査機によってすでに自動展開されている。
外壁は白く、
太陽光パネルが外側に展開されていた。
船長:
「居住区の外装に異常なし。良好だ。」
C:
「後で内部点検をしよう。まずは観測装置だな。」
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大型観測装置の展開作業
続いて3人は、
住居モジュールの横に置かれた大型観測装置群へ歩み寄った。
コンテナの側面には
「月震探査・地下レーダー統合観測システム」と
日本語と記号で表示されている。
船長:
「展開開始する。」
電源装置の安全ピンを外し、
展開スイッチを押すと、
アームが音もなく動き始める。
•地震計統括用のパネル
•深部探査レーダーのアンテナアーム
•温度・放射線複合センサー
•ローバー連携用リレー装置
が、ゆっくりと月面に降ろされていく。
Bが記録カメラを回しながら言う。
B:
「地球に持ち帰ったとき、
この映像は確実に歴史資料になるな。」
Cは設置点の固定用ピンを月面に刺しながら確認した。
C:
「アンカー固定良好。配線接続する。」
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観測装置、起動
すべての装置が展開されると、
船長は起動パネルを開き、
手元のスイッチを押した。
――ピッ、ピピピ……
観測装置のインジケーターが次々と点灯する。
船長:
「システム起動……データリンクオンライン。」
C:
「地震計反応正常、地下レーダーの初期スキャン開始。」
B:
「記録映像、ばっちりだ。」
パネルには月内部の粗いレーダー画像が現れ始め、
地震計の波形がゆっくりと動き出す。
観測装置はついに
月科学研究の日本初の拠点として本格始動した。
3人はその光景を
静かに見守りながら立っていた。




