物語序章 第一版 144章
月面着陸ミッションに向けた宇宙飛行士6名の最終訓練
有人宇宙飛行1号・2号の成功後、
次なる偉業―― 人類初の月面着陸 のために選抜された
6名の宇宙飛行士は、専用訓練施設で特別訓練を受けていた。
訓練メニューは、有人宇宙飛行より遥かに過酷だ。
月面着陸ミッション訓練内容
•月面重力環境での動作訓練
•着陸船の操縦・故障時対応
•月面でのサンプル採取訓練
•月面観測資材やも生活モジュールの設置訓練
•月影探査機が送ってきた地形データを基にした着陸場所操作訓練
•長時間の隔離環境における精神状態チェック
•宇宙遊泳+月面歩行の複合訓練
•緊急事態による“月面離脱訓練”
•再突入船への乗り換え模擬訓練
訓練施設には精巧な月面モックアップが広がっており、
宇宙飛行士たちは砂塵まみれになりながら動き方を体に叩き込んでいった。
有人月面探査
月面着陸クルー3名の選出
最終選抜は極秘裏に行われた。
•体力
•精神安定性
•機体操作の正確さ
•チームワーク適性
•緊急時の判断力
•研究活動の素養
これら全てを総合的に評価し、
宇宙軍・空軍・帝国大学の委員会、そして明賢も含めて協議された。
ついに、
月面着陸ミッション「天翔」乗組員3名が決定する。
残りの3名はバックアップとして、
打ち上げ失敗や万一の体調不良時に交代できるよう常に控えていた。
バックアップ要員にも月面着陸の全工程を訓練させることで、
有人宇宙飛行1号・2号の時よりも完璧な体制が整っていた。
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打ち上げ準備開始
宇宙飛行士3名は
打ち上げ前の最終隔離施設に入り、
完全な健康状態を維持するために数日間の待機を命じられた。
•衛生状態は完全管理
•食事は専属栄養士が調整
•訓練は最小限にし体力温存
•3人の心理カウンセリングを毎日実施
•明賢との最終面談
•任務中に使用する月面実験セットの確認
ハワイ島の発射場では、
巨大ロケット(有人月面着陸船搭載)が
静かに準備を進めていた。
燃料の充填、機体の最終点検、通信試験――
すべてが慎重に慎重を重ねて行われる。
明賢はロケット組立棟を視察し、
ひとつひとつの工程を自ら確認していた。
「この3人が、人類の歴史を変えることになる。」
その言葉に現場の士気はさらに高まった。
1653年末・有人月面着陸ロケット 打ち上げ当日
ハワイ島・巨大発射台。
夜明けの空が薄桃色に染まる中、
明賢は静かにロケット前へ歩み出た。
周囲には空軍・宇宙軍・帝国大学の研究者、
そして精鋭の打ち上げ班のみが立ち会っていた。
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明賢は演台に立ち、
月面着陸を目前に控えた3名の宇宙飛行士に向けて語りはじめた。
「君たちの月面着陸ミッションの完了により、
日本の、そして人類の宇宙計画は大きな一区切りを迎える。
今回の成功は、人類がこれまで到達した“最も遠い場所”を
さらに更新することになるだろう。」
「この世界に、宇宙へ向かうという概念すらなかった時代から
我々は知識を積み重ねてきた。
今日その努力が結実する。」
「誇りを持って行ってこい。」
言葉は短く静かだったが、
その場の全員に重く深く響いた。
宇宙飛行士たちは敬礼し、
一人ずつゆっくりと搭乗口へ向かった。
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打ち上げ準備開始
搭乗完了。
全てのチェックリストが読み上げられる。
•姿勢制御系統、正常
•酸素循環系統、正常
•着陸船分離システム、正常
-遠隔誘導装置、リンク確立
•通信系統、ハワイ基地リンク確認
「全システム、グリーン。」
場内が静まり返る。
中央ディスプレイに巨大な数字が現れた。
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カウントダウン開始
10… 9… 8…
ロケット周囲の大量の水噴射が一気に開始され、
地面を揺らす衝撃波を抑える水蒸気の壁が立ち上がる。
7… 6… 5…
点火装置が起動。
巨大な燃焼室内部のセンサーが赤く点灯し、
最終点検信号が処理されていく。
4… 3…
すさまじい振動が発射台全体を震わせる。
2… 1…
明賢が静かに右手を下ろし、
「天翔――発射」
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ロケット発射
巨大な白炎がブースター下部から噴き出し、
地面を揺るがす轟音がハワイ島に響き渡る。
ゴォォォォォォォッ――!!
ゆっくりと、だが確実にロケットが宙へ持ち上がる。
観測室のガラスが震え、
通信班のヘッドセットからは
安定データが次々と読み上げられる。
「姿勢安定。」
「速度上昇。」
「目標軌道へ向けて順調に加速中。」
ロケットは青い空を切り裂き、
その軌跡は白い線になって大気を突き抜けていく。
高度10km、20km、30km――
空気抵抗を抜け、機体は滑らかに加速していく。
やがて大気圏上層部、
空は黒い宇宙空間の色を見せはじめた。
ブースター分離。
「ブースター分離、成功。」
切り離されたブースターは落下し、
メインエンジンがさらに火力を強める。
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地球重力圏からの離脱
速度は第一宇宙速度を超え、
やがて月へ向かうための軌道へと乗っていく。
「推進モジュール、正常稼働。」
「月遷移軌道(TLI)に入る。」
ロケットはついに地球の引力を脱し、
月へ向けた長い旅路に出た。
地球周回軌道から月周回軌道へ
打ち上げから数時間後。
宇宙船は安定した地球周回軌道を滑らかに周回していた。
船内では3名の宇宙飛行士が最終チェックリストを確認している。
•酸素量、正常
•姿勢制御スラスター、正常
•月遷移加速モジュール、正常
•通信系統、日本本土・琉球・フロリダ基地すべてリンク良好
明賢をはじめ、ハワイのコントロールセンターでも
各モニターの数値が注意深く監視されていた。
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月遷移燃焼(TLI)開始
「こちら地上。TLI燃焼開始まで10秒。」
宇宙船後部のメインエンジンが点火準備に入る。
3… 2… 1… 点火!
強烈なGが宇宙船を押し込み、
船体はわずかに震えながら進行方向を変えて加速していく。
地球の青い球体が、
窓の外でゆっくりと遠ざかり始めた。
燃焼は十数分続き、
その後エンジンは静かに停止した。
「TLI成功。月遷移軌道へ。」
巨大な弧を描きながら、
宇宙船は地球の引力圏を離れ、
月の重力の支配下へ向かっていく。
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月周回軌道へ
3日間の航行。
宇宙飛行士たちは無重力下での作業や訓練、
機器の点検を欠かさず行った。
ついに機体の進行方向前方に、
巨大な灰色の球体――月が見え始める。
「月重力圏に入った。」
月面のクレーターや高地がはっきりと見える。
「減速スラスター点火。」
機体後部のスラスターが逆向きに噴射され、
宇宙船は月周回軌道へ滑らかに取り込まれていった。
やがて安定した軌道に到達する。
「月周回軌道投入、成功。」
地上の歓声は宇宙船には届かない。
しかし、それがどれほどの快挙か、
3名の宇宙飛行士は理解していた。




