物語序章 第一版 141章
プラズマ炎の中の帰還
2号機は地球大気圏の外縁へと降下し始める。
外部カメラの映像は途切れ、
船体がプラズマに包まれる。
地上の管制にも、
次第に通信ノイズが入りはじめた。
管制:
「2号機、通信状態低下。
黒い電波遮断の時間帯に入る。健闘を祈る!」
通信士:
「……2号機、反応消失。
予定通りのブラックアウトです」
明賢は拳を握りしめながらモニターを見つめていた。
明賢:
「……帰ってこい。
世界初の宇宙遊泳者を死なせるわけにはいかない」
宇宙船は時速7,000kmで大気圏を滑り落ちていた。
摩擦で船体が灼けるように赤く光り、
外は地獄のような炎に包まれる。
機内は猛烈なGが押し寄せる。
四条:
「ぐっ……! 耐えろ!!」
和泉:
「耐熱、まだ持ってる……!」
島津:
「高度……低下中……!」
⸻
通信回復
そして数分後――
通信士:
「……電波回復! 2号機、応答あり!!」
四条:
「こちら2号機。
無事にブラックアウトを突破した。
船体軽微な損傷のみ。問題なし!」
管制室は大歓声に包まれる。
明賢:
「……よく帰ってきた。
これで本当の成功だ」
⸻
太平洋へ着水
2号機は指定されたハワイ近海へと降下し、
減速用パラシュートを展開する。
白と赤のドラッグシュートが広がり、
宇宙船はゆっくりと落下速度を落とす。
海面までの距離が縮まり――
ザバァン!!
巨大な水柱を上げて滑走着水した。
四条:
「着水確認。
衝撃なし。全員無事だ」
⸻
海軍による回収
すぐに海上では、
日本海軍の重巡洋艦が到着した。
無線:
「2号機、こちら海軍救難隊。
ただいまより回収作業に入る!」
ダイバーが海に飛び込み、
宇宙船の姿勢を固定する。
島津:
「水密ハッチ、正常作動。
内部浸水なし!」
数分でクレーンが宇宙船を吊り上げ、
重巡洋艦のデッキへ載せられた。
四条たち3名がハッチから姿を見せると、
海軍乗組員たちが拍手で迎えた。
艦長:
「世界初の宇宙遊泳ミッション、成功だ!
よくぞご無事で!」
四条は深く息を吸い込み、
静かに海の匂いを感じた。
四条:
「……地球に、帰ってきたな」
⸻
ミッション完遂
重巡洋艦はそのままハワイ軍港へ向かい、
2号機クルーは医療チェックを受け、
本部へ帰還した。
1号・2号すべて成功。
世界初の宇宙飛行と世界初の宇宙遊泳――
両方を日本が達成した瞬間だった。
成功の宴
日本初の有人宇宙飛行式典
1653年1月15日、鹿児島・極秘宇宙軍基地地下ホール。
ここは巨大なコンクリートドームの内部。
本来は非常用司令部や観測機材の保管庫として作られた場所だが、
今日だけは特別に式典会場として装飾されていた。
式典に参加しているのは、
皇族代表として皇太子、
明賢、帝国大学の研究者、空軍・宇宙軍の上級幹部だけ。
一般には公開されず、総勢百名にも満たない。
しかしその厳重な秘密性とは裏腹に、
式典は壮麗で、まさしく“国家の偉業”にふさわしいものだった。
⸻
式典開始
ホール中央には日本国旗と宇宙軍旗が掲げられ、
その前に1号・2号の宇宙帰還カプセルのが飾られている。
静寂の中、入場ファンファーレが流れた。
司会官:
「――これより、日本初の有人宇宙飛行成功を記念する式典を執り行います」
1号機のクルー
天城・大江・徳川
2号機のクルー
四条・島津・和泉
彼ら6名が前へ進み出ると、
会場から厳かな拍手が湧いた。
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明賢の演説
明賢が壇上に立つ。
明賢:
「諸君。
人類は未だ空を越えたことはあっても、
宇宙へ行ったことはなかった。
今日ここにいる6名は、
その境界を越えた“世界最初の人類”だ」
全員が息を呑む。
明賢:
「世界はこの偉業を知らない。
今は秘密だ。
しかし――歴史が正しく語られる時が来たならば、
諸君の名は永遠に刻まれる」
明賢は深く頭を下げた。
明賢:
「誇りに思う。
よくぞ帰ってきてくれた」
宇宙飛行士の目に光るものがあった。
⸻
勲章授与
皇太子が前に進み、
6名に対して日本最高の科学功労章が授与される。
皇太子:
「君たちは本国の未来を切り拓いた。
日本国はその勇気と献身を称える」
徽章は歴史的価値のため
ひとつひとつ職人が手作りした特注品である。
⸻
記念撮影
式典の締めくくりとして、
記念写真の撮影が行われた。
宇宙飛行士6名が中央に立ち、
明賢、皇太子、空軍司令、宇宙軍司令が左右に並ぶ。
カメラマン:
「――はい、笑顔で。
日本初の宇宙飛行士、撮ります」
カシャッ……。
この写真は最高機密として鍵がかかる特別金庫に保管された。
外部に公開されるのは百年単位で後の話となる。
⸻
宇宙軍内部の祝宴
式典後、内部職員だけでの小さな祝宴が開かれた。
豪華ではない。
しかし心からの祝福に満ちていた。
宇宙飛行士たちは
関係者と一人ひとり握手をし、
互いの努力を称えあった。
宇宙軍技師:
「あなたたちの笑顔を見られただけで、
私たちも報われました」
天城:
「いや……本当に楽しかった。
この記憶を胸に必ず帰ってこようと思ったんだ」
四条:
「次は……“月”ですね」
明賢は微笑んで答える。
明賢:
「そのための準備はもう始まっている。
君たちは、その第一歩を刻んだのだ」
⸻
こうして――
1号・2号宇宙飛行士の式典は
ひっそりと、しかし歴史的重さをもって幕を閉じた。
外の世界はまだ何も知らない。
日本はこの偉業を胸に秘め、
さらにその先――
月、そして宇宙ステーション建設へと歩み出す。




