物語序章 第一版 139章
地球周回飛行:1周目
AMATERASU-Ⅰは高度約300kmで安定軌道に乗る。
速度は時速約54,000km。
90分で地球を2周する超高速飛行である。
隼人が状況を報告する。
「軌道速度、安定。
予定通りの周回軌道へ移行。これより1周目に入る」
窓の外では、
青い海が丸みを帯びて広がり、雲が立体的な渦を巻いている。
玲花が声を漏らす。
「太平洋が……こんなに広いなんて……地球って本当に丸かったのね」
徳川は宙に浮かびながら一眼レフで写真を撮り続ける。
「雲の影までくっきり見える……これは地上では絶対に見られない」
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北米上空
地球の自転と宇宙船の公転の組み合わせで、
1周目中盤には 北米上空 に差し掛かる。
玲花:
「新大陸全体が視界に入ってきました。
日本が開発している都市区画が光って見えます……」
徳川:
「雲の谷間から街の光が……夜の区画が見える」
明賢は管制室で腕を組む。
これまでの日本の大陸拡張が、
宇宙から確認された瞬間であった。
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日没と日の出
地球の影に入ると突然暗闇が訪れる。
数秒後、星々が一斉に光り出す。
隼人:
「宇宙の夜に入った……照明を弱める」
そして10分後――
地平線の端が橙色に明るくなり、
猛烈な輝きが船内に差し込む。
玲花:
「……宇宙からの日の出……」
地球の丸みに沿って光が広がり、
黒い宇宙に青い縁が浮き上がった。
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周回飛行:2周目
2周目には高度調整が入り、
軌道がやや赤道寄りに移動する。
インド洋 → アフリカ
徳川が報告する。
「インド洋を越えてアフリカ大陸が視界に入ります」
アフリカのサバンナの輪郭が黄金色に輝き、
海岸線がはっきりと見える。
隼人:
「これほど地形がくっきり見えるとは……。
これは地上の地図をまた修正する必要があるな」
宇宙軍の解析班はすでに写真の位置解析を開始していた。
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ヨーロッパ上空
スペイン・ポルトガル・フランス・ドイツ……
玲花:
「ヨーロッパの形が完全に見える……
スペイン大使館の屋根まで見えそう」
徳川:
「緯度経度測量の精度が一気に上がる。これは革命だ」
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日本列島へ帰還する軌道
2周目の終わり、宇宙船は再び日本列島上空へ戻る。
夜の日本列島は線のように明るく光り、
各大都市の灯りが宝石のように輝いていた。
隼人:
「管制室、こちらAMATERASU-Ⅰ。
日本上空を通過、2周目終了。
これより再突入準備に入る」
司令室:
「了解。全系統、着陸フェーズに移行」
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再突入準備シーケンス開始
船内の雰囲気が一気に引き締まる。
隼人:
「再突入チェックリスト開始。
姿勢制御スラスター点検」
玲花:
「スラスターA~D、応答確認。推力正常」
徳川:
「耐熱シールド温度センサー起動。ノイズなし」
隼人:
「生命維持系統、再突入モードへ移行」
玲花:
「酸素循環安定。冷却液流量も正常」
徳川:
「座席固定。ベルト確認。
荷物ロック完了。浮遊物なし」
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再突入角度の計算
玲花が通信する。
「角度計算完了。
大気圏突入角は 6.1° に設定。
わずかでもずれれば焼失か跳ね返りです」
隼人:
「了解。管制室、最終確認を頼む」
司令室:
「AMATERASU-Ⅰ、軌道降下は許可する。
日本初の有人再突入だ。成功を祈る」
明賢:
「全員、帰ってこい。日本が待っている」
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降下開始
隼人がボタンを押す。
「軌道降下、開始する」
船体は微かに震え、
ゆっくりと高度を失い始めた。
視界では日本列島が弧を描きながら遠ざかり、
宇宙船は大気圏突入ポイントへ向けて滑るように移動した。
大気圏突入
AMATERASU-Ⅰは降下角6.1°で予定通りの軌道に入り、
宇宙空間から青い大気の層へと滑り込んでいく。
隼人:
「突入まで10秒……全員、衝撃に備えろ!」
玲花:
「外壁温度センサー作動、異常なし!」
徳川:
「耐熱シールド加熱開始……まだ許容範囲!」
船体が震え始め、
暗黒の宇宙が徐々に 赤い光のカーテン に変わる。
船体前方で空気が圧縮され、
白いプラズマが発生し始めた。
隼人:
「大気圏突入――!」
轟音は船内ではほとんど聞こえないが、
振動は激しく、3人の体に強烈なGがかかる。
玲花:
「機体表面温度、急上昇! 1500℃、1800℃……2000℃!」
外は完全に炎の世界。
窓一面がオレンジから白に近い輝きで満たされ、
地球の姿は消えた。
徳川:
「通信、徐々にノイズ入り始めた……あと1分で完全ブラックアウトに入る!」
隼人:
「自動制御に任せる。全員、姿勢を確保!」
船体を包むプラズマが増し、
ついに通信は完全に途絶した。
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通信ブラックアウト
管制室ではノイズだけが鳴り響く。
オペレーター:
「……AMATERASU-Ⅰ、応答なし。ブラックアウトに突入」
明賢は静かに腕を組む。
緊張で室内が張りつめた。
「……信じるしかない。我が国の技術と訓練を」
宇宙船は炎に包まれながら降下を続ける。
姿勢制御スラスターが正確に作動し、
適切な角度で大気を切り裂いていった。
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ブラックアウト明け
約3分後。
玲花:
「少しずつ……機体温度低下! 1200℃……900℃!」
徳川:
「気圧増加! ここからは滑空モードに移行する!」
外の炎が薄れ、
青い空が再び広がった。
隼人:
「通信回復まで10秒……」
そして――
ピピピッ……!
通信復活。
司令室:
「こちら地上、AMATERASU-Ⅰ! 状況を報告願います!」
隼人:
「こちらAMATERASU-Ⅰ! 再突入成功!
予定通りのアプローチ角で下降中!」
歓声が管制室に広がった。
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ハワイ近海へ降下
高度はどんどん下がり、
太平洋の青がはっきりと見え始めた。
玲花:
「降下姿勢安定。減速用パラシュート展開高度まであと少し!」
徳川:
「水上滑走装置正常、衝撃吸収装置問題なし!」
隼人:
「よし……パラシュート展開高度到達!」
「パラシュート――展開!」
ドンッという衝撃とともに
巨大ドラッグシュートが開き、
宇宙船は安定した速度で落下を続けた。
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太平洋・ハワイ近海 着水
海面が近づき、
緩やかな下降の後――
ザバーン!
衝撃は軽く、
水上を滑走する、
停止すると宇宙船は浮力装置を自動展開し、
波間に安定して浮かんだ。
玲花:
「着水成功……! ハワイ近海座標、誤差無し!」
徳川:
「通信ビーコン作動。救難信号発信開始!」
宇宙船は自動で赤い信号灯を点滅させ、
宇宙軍と海軍に位置を知らせ始めた。
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海軍による回収作戦
信号を受けて、
待機していた日本海軍の軽巡洋艦が最初に反応した。
艦橋:
「ビーコン確認! 全速で現場へ向かう!」
約20分後、
海面に浮かぶAMATERASU-Ⅰを発見。
ドローンが上空に来て、
状況を確認しつつ海軍の高速艇が接近する。
水兵:
「宇宙飛行士の皆さん! 日本海軍です! 無事ですか!」
隼人:
「全員無事だ! 迎えを頼む!」
宇宙船は海軍のクレーンで吊り上げられ、
軽巡洋艦の広い後甲板に慎重に移される。
海軍兵士たちが拍手で迎える。
「ようこそ地球へ! 世界初の宇宙飛行士殿!」
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完全回収
宇宙船ごと安全に固定され、
宇宙飛行士3名は順に船外へ。
足を地面につけた瞬間――
3人は深く息を吸い、
ハワイの潮風を感じた。
隼人:
「帰ってきた……地球だ……!」
玲花は涙を拭き、
徳川は照れくさそうに笑う。
軽巡洋艦は汽笛を鳴らし、
世界初の有人宇宙飛行成功を祝った。




