物語序章 第一版 131章
日本という国家
日本 ― 世界最強の外交国家へ
スペイン・ポルトガル戦争の勝利と同時に、
日本は軍事的にも経済的にも圧倒的な存在となった。
しかし真に世界が恐れ、同時に敬意を抱くようになったのは、
軍事力ではなく“外交力” である。
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日本が世界最強の外交国家となった理由
① 世界中に「日本式大使館」を配置
スペイン・ポルトガル・イギリスなどを皮切りに、
各国に日本式大使館を建設した。
これにより
「どの国も日本と即時に連絡が取れる」
という状況が生まれる。
無線通信と日本海軍の中継により、
世界で最も正確で早い情報が日本に集まるようになった。
世界各国の情勢情報はまず日本に届き、
各国政府より日本のほうが“自国の事情に詳しい”
という逆転現象が起こる。
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② 各国の政府・王室が日本の助言を求める
日本大使館に常駐する外交官たちは、
単なる使節ではない。
•経済政策の助言
•都市計画の提案
•疫病対策の指導
•防衛の助言
•科学知識の指導
これらをフランクに行える存在であり、
欧州では「日本の助言をもらった領主の領地は繁栄する」と噂されるほど。
そのため各国王室・貴族・政府は
日本の外交官に直接相談
するようになり、信頼は絶大となった。
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③ 日本語と日本の単位系が“外交標準”になる
日本が制定した統一単位系(長さ・重量・時間・速度・力など)は
科学者や職人に非常に使いやすく、
世界の貴族・上層階級はこぞって日本語とともに学ぶようになる。
やがて多くの国で
外交文書が「自国語+日本語併記」
で作成されるようになり、
外交の標準語は日本語
科学の標準単位は日本式
という、ソフトパワーによる世界支配が完成する。
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④ 世界の諜報網が日本に従属する
日本大使館はただの外交機関ではなく
情報収集機関 でもある。
外交官たちは小型カメラや録音機材を持ち歩き
宗教施設・市街地・市場の様子までも記録し
日本本国へ送る。
これは後世「世界初の本格的諜報網」と呼ばれるようになる。
•欧州の王室間の秘密の会合
•軍の動向
•財務状況
•国民の不満
•宗教勢力の動き
これらの情報がすべて日本へと集約され、
世界で最も情報に通じているのは日本政府
という地位が不動のものになる。
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⑤ 脅す必要すらない「無血圧力」
日本は一切の武力威圧を使わず、
ただ“合理的な未来を示すだけ”で
世界の上流階級を魅了していった。
•日本に逆らうと国が停滞する
•日本と協調すると繁栄する
この自然な構図が各国に浸透し、
いつしか各国は自発的に日本へとすり寄りだす。
戦わずして勝つ、外交の理想形である。
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世界史家の後世の評価
後世の歴史学者たちは、1640年代の日本をこう評する。
「軍事力を背景にしつつも、
外交で世界を制した唯一の国家」
「世界中の王室を実質的に監督した “影の超大国”」
「17世紀最大の国際秩序構築国」
世界が静かに安定した1645年
スペイン・ポルトガル戦争は終結し、
アジア・欧州・アフリカ・中南米の各地でも
日本による復興援助と外交ネットワークが機能し始めていた。
一時的ではあるが、世界はかつてないほど静かで、
“嵐の前の静寂”とも言える平穏が広がっていた。
その平穏を見つめながら、
明賢は新たな巨大計画に着手した。
ソラを我が手中へ
明賢の新計画 ― 「衛星を空に」
鹿児島中央司令部。
大きな地図の横に貼られた青白い巨大スクリーンの前で、明賢は静かに宣言した。
「世界が安定した今こそ……
宇宙へ向かう時だ」
司令部がざわつく。
今でこそ、誰よりも重い軍を指揮し、
戦略の天才と呼ばれる明賢だが、
実は日本国成立の初期段階から
“宇宙計画” を着々と進めていた。
—だが当時は軍備の整備、外交、列強の制御、領土拡張など
優先すべきものが多すぎた。
ようやく、ようやくこの時が来たのだ。
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日本空軍・宇宙軍の招集
正式に成立して以来、
空軍と宇宙軍は“研究部門”として存在していた。
•航空力学
•燃焼化学
•材料工学
•軍用無線
•レーダー技術
•ロケット推進装置の試作
•高高度気球実験
•打ち上げ観測所の建設
そのすべてが「未来の空のために」と、
コツコツと積み上げられてきた。
明賢が彼らを前に歩み出る。
「これより日本は、
世界で初めて人工衛星を打ち上げる。
空軍、宇宙軍よ……準備は整っているか?」
宇宙軍総司令・大佐は
胸を張って答えた。
「はい、明賢様。
30年以上研究を重ね
初期観測衛星 1号機、
推進機関の最終試験も終了しております」
「そして、
羽合宇宙基地――建設完了しました」
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羽合島宇宙基地の秘密
羽合には、世界最先端の設備が密かに存在していた。
•垂直射点(VAB兼用)
•推進剤工場
•自動軌道計算室
•追跡レーダー
•各地の観測所と繋がる光通信ネットワーク
•そして射場の地下には、日本最強の司令室
海にはまだ帆船が行き交い、
馬車が石畳を走る時代である。
そんな時代に、
夜な夜な巨大なロケットが整備される光景を想像すらできる者はいない。
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人工衛星「1号」
衛星は極めて小型だが、
“この世界” にとっては絶望的なほど先進的だった。
•地表撮影カメラ
•地球の磁場・気圧・温度測定機
•暗号化通信装置
•ソーラーパネル(折りたたみ式)
目的はただひとつ。
「全世界の天気・地形・艦隊・軍事施設を、
日本が 空から把握できる”国際秩序の完全掌握”」
だった。
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明賢の確信
明賢は空を見上げながら言った。
「これからの時代、
戦争の勝敗は地上だけでなく、上空でも決まる。
我々が空を制すれば、
いかなる国家も日本に刃向かうことはできない」
空軍・宇宙軍の将校たちは静かに頷いた。




