物語序章 第一版 129章
世界に広がる「日本語ブーム」
スペインとの戦争が終結し、
日本が“世界最強”の座を明確に示した瞬間から――
世界の空気が一変した。
日本の技術、軍事力、規律、そして圧倒的な科学水準。
それらすべてが、欧州・中東・アジア諸国の
貴族・官僚・学者の心を完全に惹きつけた。
「日本語が話せれば、外交に参加できる」
「日本語の科学書が読めれば、最新技術を学べる」
「日本語で書かれた測量法を使えば、土地測量が正確になる」
こうした実利が、
“日本語を学ばない者は時代に取り残される”
という風潮を生み出した。
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王侯貴族の子弟は、日本語の家庭教師を雇う
英国の宮廷では――
貴族の令息・令嬢が揃ってこう言った。
「いま日本語ができぬ者は、
外交の場に立つ資格さえ無いのだ。」
そこで英国は、日本大使館の通訳を高額で雇い、
夜会の後に“日本語サロン”を開いた。
貴族たちはワイン片手に
「アリガトウ」「ソウデスネ」などと練習し、
必死に日本式漢字を覚えた。
フランスではアカデミーの学者が
“日本語講座”を開くと、会場が連日満席になった。
オランダ、神聖ローマ帝国、ポーランド、ロシア、
果てはオスマン帝国の宮廷にまで
日本語辞書の写本を求める使者が走った。
日本語はついに
“外交語”としての地位を確立し始めていた。
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科学者はこぞって「日本式単位」を採用
日本が配布したメートル原器・分銅原器・日本式学術書。
これらは、欧州科学界を揺るがした。
日本式単位が科学者に与えた衝撃
•三角測量が驚くほど簡単
•実験結果が他国と比較しやすい
•建築・測量・天文学の誤差が激減
•科学書が読みやすい
•どの国の研究者とも議論ができる
当時の科学者たちは混乱した。
「いままでの単位は、あまりにも不統一だった……」
「日本の方式は美しい。合理的だ。」
「これが“科学教の理”か……!」
こうして、オランダやフランス、神聖ローマ帝国を皮切りに
ヨーロッパでは次々とSI単位の採用宣言が出された。
大学では黒板に
1メートル=地球子午線の1/40,000
と書かれ、教授が熱弁を振るった。
そして科学書の標準言語は
「日本語または現地語+日本式単位」
へと書き換えられていった。
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日本語で書かれた科学書が、国家の宝物に
どの国でも最も価値のある書物は――
日本語で書かれた測量・化学・物理・建築の書物だった。
神聖ローマ帝国の宮廷では
日本語の化学書を翻訳した者が王に褒美を与えられ、
ポーランドでは
「日本語が分かる学者は宝だ」と称えられた。
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世界に広がる“日本語で書かれた看板”
各国の大使館周辺では、
日本語を使うことがステータスとなり――
•貴族の屋敷に日本語の表札
•大学の講義室に日本語の寸法図
•商人が漢字で“正確計算”と看板を掲げる
という奇妙な現象まで起き始めた。
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日本は笑いながら、世界を静かに掌握する
明賢は、大使館から届いた報告を読みながら
ただ一言、こう呟いた。
「武力ではなく、
言葉と理で世界を統べる。
これが本来の文明の姿だ。」
スペインを倒した日本は、
次に“世界の共通言語”と“世界の科学基盤”を
掌握し始めていた。




