物語序章 第一版 116章
1643年末〜1644年初頭
日本・開戦準備
日本政府の戦争方針は複雑だった。
**「国境で防衛。
本命は海兵隊による“敵本土への奇襲上陸”。」**
そのため全軍は二段構えの戦略で動き始めた。
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国境防衛:突破されぬための“重防御線”
スペインが戦力を大挙して国境に集めたという情報は先んじて潜入していた特戦軍の報告により日本にも届いていた。
日本陸軍は直ちに以下の工事を開始。
塹壕網(3段構造)
・第一線:監視と狙撃
・第二線:機関銃座と対騎兵歩兵障害
・第三線:後退線兼予備兵配置
コンクリート製の“簡易バンカー”
現地の資材で最低限の防御力を確保。
高さ3〜4mの鉄条網+木製防壁
敵歩兵の突破を極度に難しくした。
対砲兵レーダーの展開
スペインの砲撃位置を即座に算出できるようにした。
日本は国境戦を“勝つ戦い”ではなく、
敵を足止めする陽動戦と割り切っている。
そのため国境には全陸軍のわずか2割しか置かれなかった。
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2. 陽動としての国境軍
国境軍は防御に専念する一方で、あえて以下を行った。
偽装擁壁、囮住居、偽補給庫を設置
スペイン軍が砲撃しても実害が出ないように設計。
小規模な夜間哨戒で軍の密度を誤認させる
スペイン側の観測では
「日本軍は大量の兵力を国境に集めている」
ように見せかけた。
これは、スペインに対しての奇襲計画を隠すための囮であった。
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3. 海軍:大西洋に戦力集中
日本海軍は大西洋側にほぼ主力全てを移動させた。
大西洋方面艦隊
海軍の400隻近い艦船、海兵隊の揚陸艦や上陸用舟艇
が密かに集結し、スペイン艦隊を常時監視。
レーダーにより遠方から敵艦隊を追跡し、
スペイン側が気付く前に日本の戦力が“常に頭上にいる状態”が作られていた。
太平洋は日本本土艦隊(司令部直属)が担当し、
本土の安全を確保した。
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4. 諸島へのレーダー網の敷設
スペイン領に近い島々(カナリア・カーボベルデ方面)には
対水上レーダー基地を急造。
これにより、
•スペイン艦隊の航行ルート
•漁船に偽装した補給船
•大規模な船団形成
すべてを早期発見できる体制が整った。
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5. 大陸間通信は“軍優先”へ
通信省は国内の通信帯域を軍へ振り分けた。
軍専用通信ネット
・陸軍・海軍・海兵隊の三軍は暗号通信を優先利用
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6. 真の主役:海兵隊と陸軍の“合同上陸訓練”
日本作戦本部が最重要視したのは国境突破ではなく、
「敵本土を背後から切断する上陸作戦」
である。
そのため、
•海兵隊
•陸軍機械化部隊
•工兵隊
•補給部隊
これらがすべて“同じ海岸に上陸する訓練”を繰り返した。
上陸後の流れ
① 海兵隊が敵拠点を制圧
② 工兵が“簡易埠頭”を建設
③ 陸軍主力が大量に上陸
④ 補給部隊が前線へ物資搬入
⑤ 内陸の街道・鉄道を制圧
⑥ スペイン軍の補給線を切断
⑦ 国境付近で挟み撃ち
つまり戦略としては
**敵の主力を正面で釘付けにし、
背後から核心部を奪う「二段同時攻撃」**
であった。
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7. 国境に少数、海に多数—日本式の「重心逆転配置」
スペイン軍は国境に主力を集めているが、
日本は国境に“少数”。
海に“多数”。
つまり、
**スペインは正面に拳を構えるが、
日本は背後から剣を突き刺す。**
この構図が完全に成立した。
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開戦前夜
1644年春が近づくにつれ、
国境は不気味なほど静まり返り、
海は日本艦隊のレーダー波が常にスペイン艦隊を捉え、
海兵隊は緊張した面持ちで上陸訓練を繰り返していた。
明賢は司令部で静かに言った。
「スペインが動いた瞬間──
ただちに第二段階へ移行する。」
日本軍は準備を完全に整えた。
あとは、
スペインが宣戦布告するのを待つだけである。
開戦の日
1644年3月14日
スペイン=ポルトガル連合王国、日本へ正式に宣戦布告
1644年3月14日早朝。
マドリードとリスボンの王宮から、同時に文書が発せられた。
「日本国に対し、両国はここに宣戦を布告する」
わずか数行の短い文章だったが、
その衝撃は大西洋を越えて世界中を駆けめぐった。
欧州全土に緊張が走り、
英仏蘭は大慌てで情報の確認に入る。
バチカンの鐘が深く鳴り、
神聖ローマ・プロイセンは静かに会議を開いた。
そしてその数日間後──
日本総司令部に文書が届く。
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日本、即時に開戦を受諾
総司令部は即決した。
「受理する。これより日本国は戦時に入る」
その一言と同時に、
各軍へ暗号化された開戦コードが送信される。
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1. 日本総司令部 → 全軍通信
日本総司令部の通信室。
回線を握る通信士の声が震えるほどの緊張の中、
その言葉が各軍へ伝えられた。
作戦名 カマイタチ
全軍、予定通り行動を開始せよ。』**
海軍、陸軍、海兵隊──
すべてが同時に動き始めた。
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2. 海軍の開戦行動
日本海軍は既に大西洋でスペイン艦隊を追尾していた。
“偵察艦”による撹乱開始
日本の偵察艦が遠距離から150mm砲による
嫌がらせ砲撃を開始。
・10発程度撃ち、
・スペイン艦隊が接近してくると
・即座に加速して離脱
これは
スペイン艦隊を常に動揺させ、一箇所に集結させないための作戦
だった。
スペイン側は苛立った。
「追いつけない……! しかし放置するわけにもいかん!」
「主力を当てるべきだ!」
「いや、罠かもしれん!」
結果としてスペイン艦隊は、
本来探すべき“日本主力艦隊”を一切発見できず、
ただひたすら“幽霊のような偵察艦”を追い回す羽目になった。
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3. 日本主力艦隊の行動:
スペイン軍港への同時多発砲撃
偵察艦が敵主力を引きつけている間、
日本主力艦隊は夜間にレーダーと航法システムを駆使し、
スペイン本土の軍港へ静かに接近。
そして朝日が地平線を照らし始めた頃──
複数のスペインの軍港が同時に火を吹いた。
砲撃の標的
•カディス軍港やセウタ島
•スペインの造船区画
•ポルトガル・リスボン近郊の海軍補給基地
•カナリア諸島の補給拠点
200mm砲の重く鋭い砲声が
次々と海上に轟き、
港湾施設、ドック、補給倉庫
停泊中の大型ガレオン船
造船途中の艦艇
これらが瞬く間に破壊されていった。
スペイン側は混乱した。
「なぜだ!? 本隊はどこだ!?」
「どうして艦隊は察知出来ていない!?」
「やられた……補給路が……!」
港の炎上はスペインの心臓を直撃した。
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4. 補給線の“完全遮断”
日本艦隊は軍港への砲撃後、
すぐに移動し次の地点を攻撃。
スペインの海軍は
拠点の全てを絶たれた。
さらに、日本は港に繋がる輸送路を砲撃し、
港湾倉庫を破壊したため、
スペイン艦隊は補給や整備ができない状態に陥った。
これは事実上の
スペイン艦隊の壊滅(補給死)
を意味した。
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スペイン軍、全戦線でパニックに陥る
――陸・海・本土いずれも指揮不能へ
日本の開戦初週の“多重撹乱作戦”により、
スペイン軍の戦略中枢は完全に混乱した。
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南米陸軍司令部:
「なぜ攻めてこない……?」
メキシコ北部、スペイン陸軍前線司令部。
昼夜を問わず緊張していたはずの兵士たちは、
日本軍は散発的な砲撃をしてくるのに国境から一向に進軍してこないことに焦燥と恐怖を募らせていた。
司令官たちは地図を囲みながら叫び合う。
「おかしい……日本陸軍は国境に集結していたはずだ!」
「なぜ動かん!? 陽動か?」
「国境の砦は砲撃されているのに!」
「攻められてもいないのに……何の情報も来ない!」
偵察も満足に行えず、
遠くで聞こえる重低音だけが状況不明の恐怖を煽る。
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海軍司令部:
「敵艦隊がいない……あの幽霊艦しか……!」
スペイン海軍は最も混乱していた。
日本の偵察艦が定期的に遠距離砲撃を行い、
スペイン艦隊が追いかけると高速で逃げる。
スペイン側は「本隊が必ず近くにいる」と思い、
ずっとその幽霊のような艦を追い回す。
しかし本隊などどこにもいない。
海図の上で海軍参謀が叫ぶ。
「おかしい……日本の主力艦隊が見えない!」
「この速度と旋回……我々の艦では追いつけん!」
「各艦の砲門はどうした? 当たらないのか!」
「射程が違いすぎる! 我々の大砲では届かない!」
「どこに本隊がいるんだ!?」
この間、日本の主力艦隊はレーダーでスペイン艦隊を完全把握し、
射程外で静かに次の標的へ。
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本土司令部の混乱
「司令官! 連絡が……まったく来ません!」
スペイン本土・マドリード軍司令部。
最前線からの報告が、
朝から一件も届いていない。
書類机を叩いた参謀は叫ぶ。
「前線と連絡が取れん! メキシコがどうなっているのかわからん!」
「海軍からも連絡が無い! なぜだ!」
「……まさか壊滅したのか?」
「そんな馬鹿な! どうやって……?」
その時、伝令が血相を変えて駆け込む。
「た、大変です! カディス軍港が……砲撃を受けています!!」
「何だと!? どこの国の艦隊だ!?」
「……分かりません! こちらからは敵影が一切見えません!!」
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軍港壊滅の衝撃
「艦が、補給が、すべて……!?」
スペイン本土西岸――
カディス、セビリア、ポルトガルのリスボンなど
主要軍港が一斉に砲撃され、黒煙を上げた。
港湾労働者は叫ぶ。
「船が燃えてる! 造船中の船も! 全部だ!」
「防衛砲台は何をやっておる!」
「敵が見えんのだ! どこから撃っている!?」
海兵が叫ぶ。
「応戦できません! 射程外です!」
「補給庫が吹き飛びました!!」
あまりの突然さに、
誰も反撃すらできなかった。
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指揮不能・補給断絶で“戦いようがない”
日本主力艦隊は港への砲撃後、
すぐに別の港へ高速移動。
スペイン軍は追撃もできない。
陸軍:
国境は砲撃しか飛んでこない、攻めてこない。そして情報がない。
海軍:
補給できず動けば動くほど兵站が減る。
本土司令部:
報告ゼロ、司令ゼロ、港ゼロ。
スペイン軍全体が、
暗闇の中で暴れているような状態となった。
将校は呟く。
「……闇雲に戦うしかないのか」
「しかし補給が尽きれば……軍は動けん」
「どうすればいい……?」
誰も答えられなかった。
スペイン軍は、
日本軍が実際にはまだ“本命の攻撃”をしていない段階で
すでに 指揮能力と補給能力を喪失しつつあった。




