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物語序章 第一版 113章

イギリスからの手紙


イングランド内戦――明賢の計画は、ここに来て一気に加速した。

フランス派遣団が帰路についた直後、鹿児島の外交施設に一通の書簡が届けられた。

封蝋には、イングランド議会派の紋章。

明らかに“王党派より先んじるための急使”である。


議会派からの書簡


その内容は簡潔で、しかし切迫していた。


「我ら議会派は優勢にあり。

貴国の支援があれば、王党派を迅速に鎮定しうる。

新大陸植民地の全ては渡せぬが、南部の一部であれば譲渡は可能。

対価としての資源・金銭・糧食の供給を願いたい。

交渉は成立しうるだろうか。」


普通の国家なら、この申し出に飛びついたかもしれない。

だが、明賢は違った。

彼は書簡を読み終えるや否や、机にそっと置き、淡々と呟いた。


「――議会派は焦っているな。

 ならば、いずれ王党派は……もっと焦る。」


明賢の作戦:二段階支援策


明賢の脳裏には、わずか数秒で**「利益最大化の作戦」**が形になった。


① 議会派には“小規模援助”


あくまで、

「譲渡する気はあるが、大陸全てではない」

という弱い条件に見合うだけの小規模支援。


・食料

・鉄鋼・火薬などの軍需資源

・売却資金(黄金・銀)

・補給艦2隻と、最低限の護衛(駆逐艦3隻)


議会派が

「日本は味方してくれている」

と思い込む程度の支援。

だが、決定打にはならない。


② 王党派には“大規模支援”を誘発


明賢の狙いはここだった。


議会派が支援を受けたと知れば、

王党派は必ず焦り、そして必ず――


「新大陸の全植民地を譲渡するので助けてくれ」


と泣きついてくる。


それが明賢の最大の狙いであった。


日本が欲しいのは「南部の一部」ではない。

北米全土の正当な所有権である。


この世界の地図を塗り替えるための、国家的基盤。

議会派に与える支援はその「前座」に過ぎなかった。


日本からの返信:議会派向け


返信文は丁寧かつ冷静で、

しかしどこか距離を置いた内容だった。


「貴書確かに拝見しました。

日本国は御国の情勢を重く見ており、

友好関係の維持のため支援は可能です。

ただし新大陸の割譲については、

あくまで“確実に譲渡が可能な範囲”のみ、

という条件で判断させていただきます。」


そしてすぐに、海軍へ指示が飛ぶ。


「補給艦二隻を議会派支援物資専用に。

 護衛は駆逐艦三隻のみでよい。

 あくまでの支援と見せるのが肝心だ。」


出航


鹿児島港。

議会派宛ての支援物資を満載した補給艦は、

静かに、しかし迅速に湾を離れた。


積荷には、

穀物、乾燥肉、塩、鉄塊、硝石、

そして密封された金貨の木箱が並ぶ。


艦長は明賢の指示を確認しながら呟いた。


「……これは戦争支援というより、

 “誘い水”だな。」


駆逐艦が横につき、

五隻は夕暮れの影の中へと消えていった。


明賢の確信


議会派支援が動いた数日後、

明賢は側近にぽつりと言った。


「次は王党派が来る。

 しかも議会派よりも遥かに大きな“餌”を持ってな。」


側近が問う。


「新大陸、すべて……でしょうか?」


明賢は頷いた。


「北米全土が手に入る。

 この歴史、この世界線ではな。」


その目は、すでに次の大陸の地平を見据えていた。


日本の支援物資が議会派に到着する


イングランド内戦の渦中。

霧深いテムズ川へ、異様な静けさを纏った日本の補給艦が姿を現した。


甲板には木箱が隙間なく積まれ、

艦尾には駆逐艦が無言で控える。


日本からの支援――議会派はこれを待ち焦がれていた。


艦が桟橋に横付けされると、クレーンが箱を次々と下ろし始める。


「……なんと量だ」

「食料が、これほど……!」

「鉄の質が、まるで違う……これは戦争の天秤が動く……!」


議会派の士官たちが口々に驚嘆した。


積荷一覧には、


・小麦、干し肉、乾燥野菜

・大量の塩、保存食

・高品質の鋼鉄塊

・硝石・火薬の原料

・そして大量の金貨の木箱


――まさに戦争の勝敗を左右する内容。


議会派は歓喜した。

彼らにとってこれは、**「新大陸の南部の一部を渡すだけで得られる支援」**だったからだ。


「日本は我々に味方している!」

「これだけの支援があれば、王党派など恐れるに足らず!」


士気は異様なほど高まり、数週間後には戦況が急激に議会派に傾き始めた。


日本の計算通りに。


王党派、恐慌に陥る


議会派の急速な躍進は、

ロンドンの王党派指導部に大きな衝撃を与えた。


「ば、馬鹿な……議会派がさらに押してきている……」

「例の日本からの支援だ。良質な武器が増え、兵糧も潤沢らしい」

「このままでは我らは包囲殲滅だ!」


重苦しい空気の中、

王党派の上層部は緊急会議を開いた。


「議会派に先を越された……!」

「日本の支援が入るだけで、これほど変わるか……」


焦燥が広がる。


「だが、日本が求めているのは“イングランド本土”ではない。」

「欲しているのは、新大陸の領土だ。」

「であれば……売却してしまっても我らに実害はない。」


その言葉に室内がざわめいた。


「確かに……新大陸を失っても、我々は本国を保持できる」

「内戦に勝てるなら、それでいい……!」


結論は早かった。


「議会派より遥かに強力な支援を、日本に要請するのだ!」

「代償として――

 “新大陸の植民地すべて”を売却すると伝えよ!」


その瞬間、王党派は未来の運命を自ら書き換えた。


日本が狙っていた最大の成果が、

彼らの手によって差し出されようとしていたのである。



日本への書簡、即時発送


書簡は急ぎ筆写され、

赤い封蝋で封じられた。


その中には、



「北米における我ら全ての植民地を、

日本国に売却する用意がある。

引き換えに、議会派を凌ぐ即時かつ大規模な支援を求む。」



という、明らかに破格の要望が記されていた。


夜明け前、港へと急ぐ使者の足音が響く。

帆船が風を孕み、漆黒の海へ滑り出した。


「急げ……!

 議会派に潰される前に……!」


その船は嵐のような速度で、

日本へ向けて出航していった。


明賢が仕掛けた“誘い水”は、

見事に王党派を動かしたのである。


日本へ届いた王党派の書簡


静かな執務室に、外交局の使者が深く頭を下げて書簡を差し出した。


「明賢様……イングランド王党派より急使でございます。」


明賢は静かに封を切り、内容を一読した。


そして――薄く、意地悪な笑みを浮かべた。


「……来たか。やはりな。」


予想通り。いや、計画通り。


王党派が焦燥に駆られ、

新大陸の全てを差し出してでも支援を求めてくるのは読み切っていた。


書簡を卓上に置くと、明賢はすぐに命じた。


「――すぐに艦隊を出す。待機中の補給艦を動かせ。」


その瞬間、背後の伝令たちが一斉に走り出した。



日本艦隊、出発準備完了


すでに準備は整っていた。


東京湾の静寂の中、

巨大な影を落とす 補給艦10隻 が並び、

その艦腹には資源・鉄・食料・金がぎっしり詰め込まれている。


その後方には、随伴の 一個艦隊が展開し、

いつでも出航可能な状態で待機していた。


「出航準備、完了!」


「全艦、針路をイングランドへ!」


巨大な汽笛が東京湾に響き、

艦隊は白波を巻き上げながらゆっくりと外洋へと滑り出した。


明賢は高台からその姿を眺め、低く呟いた。


「……これで北米は完全に我が手に落ちる。」

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